第5話

「まぁ話は後だ。とりあえず風呂に入ってこい」


「お風呂ですか。どちらにあるか教えてもらってよろしいですか?」


「階段を下りて右手の廊下を進んだ先にある。ついでだ。使い魔を一匹お前につける。詳しい場所はコイツに聞け」


使い魔ってあの人魂みたいなのだよね?話せるのか?そんな疑問を抱く俺のそばに一体の使い魔が近寄って来たかと思えば急に光を放ち始める。光が収まり、そこにいたのは


「はじめまして。つかいまのリルともうします。よろしくおねがいします。ユウカさま」


目の前に、小学校低学年ぐらいの女の子が立っていた。え?この子誰?ツーサイドアップにした紫色の髪。琥珀色のつぶらな瞳は、無垢な光をキラキラとこちらに向けている。メイド服を身に着けており、俺の着ているのとは違い、胸元は露出せず、スカートの丈は膝下まである。白いニーソックスを履いており、靴は子ども用のローファーである。


「この子って使い魔ですか?」


「そうだ。意思疎通がしやすいように人の形に変えた。リル、そいつを風呂場に連れて行ってやれ。ユウカ、リルに洗ってもらえ」


「え、いや、風呂ぐらいなら一人で」


入れると言おうとすると、リルちゃん?が俺の手をグイグイと引っ張る。いや、力強よ!?


「おまかせください。アルバートさま。ユウカさままいりましょう!」


「ま、待って一人で歩けるから。あ、ちょ、引っ張らないで〜」


そうして俺は幼女?に風呂場へと引っ張られて行った。


◆◇◆

「うん、予測はしてた…。広すぎん?」


脱衣場だけで100人は入れそうだ。風呂場に至っては


「…銭湯か、何か?」

チラッと覗いたが、広すぎる。俺の安アパートのユニットバスが何個入るんだ。少なくとも100個は確実に入る。


「ユウカさま。ふくをぬぎましょう」


「待って。自分で脱げ、ちょ、あ」


リルちゃんに服を脱がされそうになるハプニングがありながら、なんとか服を脱ぐ。今は、下着もなく、全裸だ。脱衣場にあった鏡を見てみる。やはり自分に瓜二つの女がそこにいた。セミロングの黒髪に垂れ目がちの瞳。出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいる中々のスタイル。服の有無は除き、さっき見た鏡と全く変わらない。


「(本当に女になったんだなぁ)」


今更実感が湧いてくる。いや、本当どうしてこうなった。性別も、種族さえ変わった。今、自分は相葉裕也と名乗ってもいいんだろうか?顔立ち以外にかつての自分を繋ぐものは無く、別の存在なのではないか?そんな不安がよぎる。いや、


「(俺がいなくなっても困る奴はいないか…)」


天涯孤独の身だ。俺がいなくても、世界は変わらない。すぐに忘れ去られ、いつもの日常が始まるだろう。


頭を振り、そんな考えを追い出した。しかし


「(でかいな。どれぐらいあるんだ?)」


鏡に映る自分の姿。視線は胸元に落ちる。Fぐらいか?それともGある?クソッ!童貞には分からない!じ、自分のだし、触ってもいいよな?


胸元をツンツンしてみる。弾力があり、指が押し返される。ツンツン。ツンツン。ハッ!俺は何を。ヤバイ、リルちゃんが不思議そうにこちらを見ている。


「おむねがどうしたんですか?」


「何でも無いデスヨ?」


もう一度鏡を見る。目が泳いでいる女がいた。そこでちょっとした違和感があった。


「(何か、若返ってる?)」


再び正面から見てみる。やはり、何歳か若返った気がする。過酷な労働環境でやつれ、くたびれた顔ではなく、生気に溢れ、肌の調子もいい。なんかツヤツヤしている。20歳頃に戻ったみたいだ。


「(これも、TSと転生の影響か?)」


もはや、俺だと分かる人いないのでは?悩んでも仕方ないとはいえ、何だかなぁ。


〜〜〜

リルの身長描写を変更しました。






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