第3話
「着いたぞ。ここがボクの屋敷だ」
アルバート様の転移魔法を使い屋敷の前まで飛んだ。体感にして1秒にも満たない時間。光に包まれたかと思えば景色が切り替わった。目の前にある屋敷はRPGでしか見たことのないような外観である。
白い壁に、赤茶色の屋根。城壁に囲われており、目の前の扉は漆黒で人の背丈よりも大きい。余計な装飾はなく、質実剛健といった感じだ。何より
「(でっか!)」
デカかった。俺の住んでたアパートが何個入るだろうか?つい、そんなことを考えてしまう。
「何してる?行くぞ」
「あ、ハイ」
そんな俺を怪訝そうに見ながらアルバート様が門の前で俺を呼ぶ。
ゴゴゴゴゴゴ!!
俺が門の前に着いた途端扉が自動的に開いていく。自動ドアになるんだろうか?そんなアホなことを考えながら扉を抜ける。
そこには庭園が広がっていた。夜のため分かりにくいが、真っ直ぐに伸びた道の端には、見たこともない花々が咲き乱れている。手入れが行き届いているようで雑草は見当たらない。アルバート様はこちらを見ずに進んでいく。
アルバート様の後ろを挙動不審気味にキョロキョロしながら付いていく。だってこの庭園に傷でもつけたらかなりの額を請求されそうなんだ。それぐらい高級感あふれる庭園だった。そんな俺を見ながら首を傾げていたアルバート様は、ふと得心がいったように
「……?あぁ。なるほど。安心しろ。人を喰う植物はいない。邪魔だから別の場所にある」
「ヒェッ!?そんなのがいるんですか!?」
「当たり前だろ。ここを何処だと思っている」
「えっと…。どこですかね?」
そんな俺にアルバート様は事も無げに告げた。
「何処って、魔界に決まっているだろ」
「魔界」
「厳密には、人間界と魔界の狭間にある世界だがな」
「狭間にある世界」
オウム返しになってしまったが、そんなドラ○エみたいなことを言われても。と思ったが、そもそもアルバート様が次期魔王だったわ。そっか〜。俺異世界で生活するんだ。…あれ、ちょっと待てよ。俺が住んでたアパートってどうなるの?
「あの、アルバート様」
「何だ?」
「私の住んでいたアパートはどうすれば?後、何処に住めばよろしいのでしょうか?」
「解約しろよ。この屋敷で寝泊まりするんだからな」
「そ、そんな!?」
「何だ?不満か?」
「違約金がかがるじゃないですか!?」
通常アパートを解約するには、一ヶ月前に管理会社に連絡しなければならない。しないと違約金が発生してしまう。
「…明日の朝に引っ越しすると連絡しろよ。一ヶ月後に引き払う感じでいいだろ。ここは人間界じゃないんだからそっちのルールとか関係ないし」
あっ、そっか。一ヶ月後に引っ越しする形にすればいいのか。でも、荷物どうしようか?
「荷物持ってきていいですか?」
「構わない。とは言っても、必要な設備なら屋敷の中にあるから、冷蔵庫やら洗濯機、電子レンジなどは必要ないぞ?それ以外に必要な物なら使い魔に運ばせるから相談しろ」
「あ、冷蔵庫あるんですね」
意外に現代的だな。氷室かなと思ってた。
「人間界の生活を真似たものだがな。電力ではなく魔力で動いている。あれは便利なものだからな。」
確かに冷蔵庫や洗濯機って便利だよな。普段から使っていて感覚が麻痺していた。
そうこうしていると、扉の前にたどり着く。重厚な雰囲気が漂っており、緊張感が高まる。
「入るぞ。準備はいいな?」
「は、ハイ!」
アルバート様と共に屋敷内へと入った。
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