第2話
アルバートと名乗る自称次期魔王筆頭は高らかに言い放つ。
「喜べ!ボクのメイドになったからにはお前は世界一幸運だ!!」
そんなコイツにただ一言。
「帰っていいですか?」
「なぜだ!?」
よくわからん状況でいきなり女にされ、メイドになれと。受け入れられる方がおかしい。
しかし、明日の仕事どうしようか。こんな姿では出社出来ないし、休んだらクソ上司がうるさいし。そもそも、今の俺を相葉裕也として認識出来んのかあのハゲは。このまま出社して、仮に受け入れられたとして…。いやダメだな。パワハラ、セクハラ三昧のアイツのことだ。面倒なことになるに決まっている。
金が欲しければ働け。これが基本である。それが人を人とも思わない劣悪な環境でも。
「おいユウカ!!貴様ボクに逆らうのか!?」
「いやぁ、まぁ、別にいいかなって」
「別にいいかなだと!?」
「早く寝たいんで帰りたいんですが」
「ボクの屋敷で寝ればいいだろ!?」
「明日も4時起きなので」
「4時って後3時間もないんだが…。ユウカ大丈夫か?」
現在時刻は午前1時23分。
偉そうにしていたアルバートは心配そうな表情になる。まぁ普通の考えだとそうだよな。
「3時間睡眠は慣れていますので。なんなら1時間寝れたらいい方ですね」
「予想以上に酷い!?早くその職場辞めろ!!体を壊すぞ!!」
「でも、お金が…生活が…」
「金なら出すぞ。これぐらいでどうだ?」
そう言ってアルバートは何処からともなく金を出してきた。俺の日給より遥かに多い。
「こ、こんなに?こんなに日給をもらえるんですか?」
そういうとアルバートは首を傾げて不思議そうな表情になる。え、間違ってる?
「何言ってるんだ。1時間分の給料だぞ」
「1時間分!?時給なのこれ!?」
「だって、金が必要だから働くんだろう?ならこれぐらいあった方がモチベーションになるだろう?」
この時点で心は揺れていた。そんな俺にアルバートはトドメを刺す。
「ちなみに、仕事内容は屋敷の管理。とはいえ、ユウカ一人ではなく、使い魔や、ゴーレムが多数いて、屋敷の掃除と食事は任せているからユウカはボクの身の回りの世話ぐらいか。執務の手伝いがメインになると思う。1日三食付で、朝8時から17時まで。休憩は1時間の実働8時間。残業はほとんど無いようにしているけど、仮にあった場合、残業代は時給の1.5倍出す。休みは土曜日と日曜日の、完全週休二日制。朝は早いけど、今の職場よりは寝れると思うぞ?」
アルバートの言葉を吟味する。今の漆黒な会社とアルバートの屋敷の管理を天秤にかける。どちらがいいだろう。
「どうだ?」
俺はアルバート、いやアルバート様の目を見て告げる。
「よろしくお願いします!アルバート様!」
「いきなり元気になったな。現金な奴め…」
アルバート様が何やらボヤいていたが、気の所為だ。
「じゃあ行くぞ。ユウカ。明々後日から早速仕事だ」
「あ、良かった。今日からじゃないんですね。残業で二徹した後なんでキツイんですよ」
「当たり前だろ何言ってんだ!?マジでお前よく生きてたな!?」
「二徹は当たり前でしたから」
「ヤバ過ぎないか!?ドン引きなんだけど!?」
「それじゃアルバート様行きましょう。ちなみにどちらにお住まいで?」
「…ここで出会えて良かったよ。いつ死んでもおかしくないだろコイツ…。ここにはないよ。転移魔法で飛ぶから」
「転移魔法」
なんて素敵な響きだろう。名前からしてドラ○エのルーラみたいな感じなんだろうか?いいなぁ、それがあれば通勤が楽になっただろうなぁ。
「それじゃあ飛ぶぞ。ボクに掴まれ」
「はい。こうですか?」
アルバート様の腕を掴む。
「それでいい。行くぞ。『飛べ』」
そうしてアルバート様の屋敷に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます