25 カラカラ

「ちょっと実験してみましょうか」

 少しだけしんとなった空気を切り裂くように、花子さんが声を上げた。

「ふわっ」

 立ち上がった花子さんが虎郎君の首を持ち上げる。驚いて目を白黒させる虎郎君の首をテーブルに乗せ、代わりに僕の腕からみちるさんを取り上げると、虎郎君の体に乗せた。

「自分の体だと思ったら、くっつくかもしれないわよ」

「えー、わたし男の子じゃないよ」

「途中で止めてあげるから」

 みちるさんは、うーんと声を上げて、それじゃあまぁいっかーと虎郎君の体の上でぴょんぴょん跳ねたあとぴたりとくっつく。

「首から体に神経が繋がってるって考えてみて、くっついているところから感覚を伸ばしていくのよ」

「むー、うむむ」

「わー!ダメ!変な感じする!」

 虎郎君が慌てたように浮き上がり、みちるさんのすぐ近くに寄って、ぶるぶる震えながらあわあわと口を動かす。

「変な感じ?」

 みちるさんがそう言って虎郎君の体からぴょんと飛び降り、虎郎君は首を自分の体にくっつけてホッとしたように息を吐いた。

「変だったよー!何か、喉が渇いてカラカラになる感じ。干上がっちゃうかと思った」

 虎郎君が自分の首を指さしながらそう言う。

「まぁいずれにせよ、体があったらちゃんとくっつくと思うわよ」

 花子さんがにこりと笑って、みちるさんがころころと転がる。

「体とくっつくの?わたし」

「体とくっつこうと思ったらね。ただ多分、一度くっついたら簡単には離れないと思うから、慎重にしなきゃならないと思うけど」

「そっかー、難しいね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る