8 雷雨

 よし子さんの思い出話を聞いている間に、いつの間にか辺りが暗くなって風が強くなってくる。今から帰れないこともないだろうけど、敷地内に家族がいるとはいえよし子さんは一人で住んでいるし、何かあった時にすぐ手伝うこともできるだろうと、よし子さんの言葉に甘えて泊まらせてもらうことになった。

 よし子さんの家に泊まるのは、小学生の時以来だ、あのときは春の嵐で、強風が窓を叩く音がとても怖かったななんて、懐かしい気持ちになる。


 客間に布団を敷いて、枕元にみちるさんが休むための座布団と綿毛布で作った布団を用意する。そんなことをしている間にかなり風が強くなってきたようで、様子を伺うために開けた戸の向こう、窓から見える木々は随分大きく揺れていた。

 布団に横になると、みちるさんがぴょんぴょんと自分の布団の方にやって来る。

「みちるさん、もし寒くなったらこっちに来ていいからね」

「うん、ありがと、あおくん」

 灯りを落としてみちるさんと取り止めなく話をしていると、強い風の音と一緒に、雷まで鳴り始める。台風と雷って一緒に来る印象はあまりなかったけれども、同時に来ることもあるんだな。

 みちるさんは興奮したように布団の上でぴょんぴょん跳ねた。

「雷、ゴロゴロだね!あおくん」

「うん、そうだね」

 みちるさんは意外と雷が好きみたいだ。外にいたら結構怖い目にもあったことがあるだろうに。

「そうなんだけど、ゴロゴロピシャンって鳴るのは何だか楽しい」

 らしい。

 遠ざかっていく雷の音を聞きながら、僕達はしばらく話をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る