7 ラブレター

 よし子さんの家に帰ると、よし子さんはテーブルに銀色の缶を置いてにこにこと笑っていた。

「どうしたんですか?よし子さん」

「あぁ、あおくん。みちるさんを見つけてくれてありがとうね」

 よし子さんは缶の中に封筒を戻しながら、やっぱりにこにこと笑っている。

「なにか見てたんですか?」

「お父さん……夫のくれた手紙なのよ、これ」

 そう言いながらよし子さんが見せてくれたのは銀の缶いっぱいに詰まった白い封筒。よし子さんの旦那さんは、僕がよし子さんに出会う少し前に亡くなったので、僕は写真でしかその人を知らないのだけど。

「しーくん!まだちょっと覚えてるよー。全然おしゃべりしない子だったよねー」

 みちるさんがぴょんぴょん飛び跳ねながらそう言う。それなりの年齢まで生きた人だけど、みちるさんにとっては「子」であるらしい。僕のことも「子」だと思っているのかなと考えると、少しだけくすぐったい気持ちになる。

「そうなのよねぇ。なかなか何も言わない人だったけど、時々こうやって手紙をくれてね、手紙というか……ただの伝言メモみたいなものばっかりなのだけど」

 よし子さんは微笑んで封筒を撫でる。

「時々素敵な言葉を書いてあったりして、捨てるのがもったいなくてこうやって封筒に入れて取っていたのよ」

 よし子さんと、時々みちるさんも加わって、旦那さんの思い出話を聞かせてもらう。

 何でもない銀色の缶は、特別大きいわけではないけれど、決して小さくはない。その缶いっぱいに詰まった思い出を、何だかいいなぁと思った。

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