これから

「あおくん元気ない?」

 首を傾けたみちるさんにそう言われて、僕は瞬いた。

「元気ないように見える?」

「元気ないように見えるね」

 みちるさんにそう、重ねて言われる。どうやら僕は元気ないらしい。

「うーん」

「うーん?どうしたの?もやもやする?」

「うーん。よく分からないな」

 僕は元気がないんだろうか。

「みちるさん」

「うん」

「僕さ、まだ先のことだけどさ、遠くの大学に行こうと思ってるんだ」

「そうなんだ」

「ここからは通えないから、一人暮らしになる。もちろん、長期休みには帰ってこようと思ってるけど」

「うんうん」

「みちるさんともあまり会えなくなるし。……寂しい、のかなぁ」

 まだ一年以上もあるし、合格できるかどうかも分からないというのに。

「あおくんはここじゃないところに行くんだね」

「まだ行けるか分からないけどね」

「あおくんだもん。大丈夫だよ」

 みちるさんが笑う。

「それじゃあわたしは、ここであおくんを待ってようかな。あおくんが帰ってきたら、おかえりーって言うね」

「みちるさん、迎えてくれる?」

「もちろん。ちゃんと迎えるよ」

 にこにこと、みちるさんが笑う。

 みちるさんはよく笑う。大丈夫だよと、いつでもそう言ってくれる。大学生になることができたら、きっとみちるさんを思い出して、少し寂しくなって、だけど心が温かくなるんだろう。

 頑張らないといけないな。と、そんなことを思いながら、僕はみちるさんに笑いかけた。

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