その雨がいつか光になりますように

@koa03

第1話 あたたかい思い出

ーーーあれは、いつのことだっただろう。

きっと、もうずっと昔。今ではもう思い出すことのできないあたたかい記憶、あたたかい思い出。

家族にたくさんの愛情をもらっていると思えていた時期

なんの疑いもなく幸せと言えていた時期

友達と話すのが大好きで、自分自身のことも大好きだった時期

死にたくないって突拍子もなく泣いていた時期


私はいつだってそうだった。

明るくて、天真爛漫という言葉がお似合いなどこにでもいる平凡な女の子で、

周りから可愛がられて生きていた。

でも今となっては、、、


「光葵〜!おはよっ」

「…!あ、おはよう彩葉!」

「ねえテスト本気でやばいって!!!どうしよおお」

「あはは!それ毎回言ってるじゃーん」

「ねえ放課後勉強会しよ?!」

「私が彩葉に勉強教える会の間違いでしょ?」

「え、なにばれたっ?」


高校1年生。人生の中で最も輝いているときとも言えるような今

私は本当に、胸を張って幸せだと言えるのだろうか




キーンコーンカーンコーン


「…ではこれでHRはおわりね〜忘れ物すんなよ〜」


急に騒がしさに包まれていく教室は放課後の予定やもう目の前に迫っている定期考査の話題で持ちきりだ。

私は前回のテストで320人中30位、クラス順位6位というまあ初めてにしては上出来とも思える成績を叩き出し今回下がりたくはないという緊張感の中そそくさと帰る準備を始める。

9教科に科目が増え今回は彩葉だけでなく私含め多くの生徒が考査の準備に焦りを感じているようだ。先週文化祭もあり準備期間、そして本番までもがテスト期間ともる被りしていたのも要因にあるだろう。


「みーーつきちゃん!」

「うわっびびった、なにみーちゃん。」

「えなにそのだる絡みされた後の猫みたいな反応」

「校門まで一緒に行かないかなって思ってきたんだよ笑光希ちゃんが騒がしいからびっくりしちゃってるんでしょ」

「あっ夢ちゃん!おけおけちょいまちね」


そして私のクラスにはみつきという名前が3人いて、

いつも明るくリーダーシップがあるが煽り癖のある楠光希

大人しくて優しいいつもほんわかしている夢野光葵

そして私、小鳥遊光葵

それぞれ苗字や名前をもじってニックネームをつけて呼ばれているというなんともシュールな状況なのである。


私はいつも優しさが溢れるこの場所でたくさんの光を浴びながら順風満帆に日常を送っている。


ように、見えてくれているだろうか。


「…」

家のドアを開けて何も言わずにリビングに足を踏み入れる

「ああおかえりみつ〜」

「、うんただいま…パパは?」

「あ、もう帰ってくるって」

「そ、っか」


部屋で一人で勉強すると高確率で寝落ちしてしまう私はリビングなど誰かがいるところじゃないと作業がすすまない。しかし、、父がいるなら話は別だ。


「ただいま」

「ねえなんでこんな帰ってくんの早いの〜!?笑」

父も母も

「なんでそんなこと言うんだよおお!……」

本当に何もわかっていない

「おい光葵!!!!」

「…何」

「リビングで勉強すんなって言っただろう。自分の部屋があるんだから2階でやれよ」

本当に、ここは

「今行こうとしてたから」




地獄なんだ。

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