第5話 投票オーディションを行う意義と滝先生

アニメ3期での滝先生は信頼性に欠ける。ストーリーに適応させる為に動かされてしまってる感が強い。私が3期12話の負けを成長の糧と受け入れづらい、作為的に用意されたように思えて白けてしまう最大の理由は滝先生の挙動とその主導による投票オーディションが行われる根拠の乏しさなのかな、と思う。


・投票オーディションが行われる意義は何だったのか

全国大会前の通常オーディション終了後、滝先生は久美子に対して「本当に甲乙付け難い」と伝えている。その後が問題である。「貴方が部長である以上部員を納得させる必要がある」と発言しているのである。本作が視聴者に明示した投票オーディション開催の根拠はこれである。ちょっと待てと。演奏能力で甲乙付け難いならあとは久美子を選ぶ以外無いではないか。部員の精神面において全体の納得感を高めるなら3年になって登場した真由より1年次から一緒に頑張ってきた、後輩の面倒も見てきた、部長も任されている、何より直近の関西大会直前までバラバラだった部員達の気持ちをまとめた(それだけ人として信頼されている)久美子が選ばれた方が良いのは明らかではないか。

わざわざ投票オーディションをやる意義というのは(麗奈・香織の場合の様に)滝先生が判断に迷わない程両者に能力差がある、にも拘わらずそのソリ(麗奈)に不満を持つ部員を納得させたい状況でこそ生じるのであり、技術が並んでしまっている、つまり聞き比べた場合に技術面に対して票が割れてしまう状況では、部員が過去にしようとしてた分断を再認識させてしまうだけである。ましてや滝先生の『技術面で甲乙付け難い』という判定を前提とすれば、上述の理由で久美子に贔屓票が入る以上に真由に贔屓票が入るという事態は起き得ない。久美子が勝つのが合理的だと判じて問題無い場面なのである。つまり滝先生が久美子を選んで何も問題無い状況であり、その程度で生じるような不満があったとしてもそれを受けるべきは久美子ではなく決定権者でありそれを行使してきた滝先生以外いない。部員とのコミュニケーション不足でここまで部の混乱を拡げて久美子の練習時間を削ってきた点も踏まえればせめてそれぐらいの責任取れよという話である。


どういう事?と感じざるを得ない。何より1期2期の滝先生ってこんな無責任無能力設定だったろうか……。


もう一点。物語の中で最上位の聴く力を持つ滝先生が甲乙付け難いと評していたのに、結果は贔屓票を得たにも拘わらず久美子が負けるというものだった。滝先生の判断と異なり、何故決定的な差を付けさせたのか。滝先生の判断能力がブレてしまっている。挙手をした久美子と親しい者達の表情を描写し、かつ麗奈に決定権を与える為の数合わせの結果としてああいう事になってしまったという印象である。


物語が外の人間によって動かされてしまっている、と感じてしまうのである。


こういう点に加えて前話で書いてきた久美子が不必要に苦しめられ、その培ってきたものが軽んじられてきた印象も踏まえると、どうにも制作者の価値観、意図がうるさく出しゃばってきて私はこのアニメ3期が嫌いなのである。


これもSNSで見かけた意見だが、久美子は成長したのではなく(私から言い換えさせてもらうなら画面の外の)状況に追い詰められて受け入れざるを得なかっただけなのではないかと、首を捻ってしまう。他方でやはりSNS上の『人生経験積んできた人なら刺さらない筈ない』等という意見を見るとどうしても苦笑いを浮かべてしまうのである。


追記:

滝先生が内心で真由の技術を久美子より上と見ていたのに久美子には甲乙付け難いと伝えたパターンについて8話で記述した。

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