魔法の薬

魔法の薬

作者 蒼天庭球

https://kakuyomu.jp/works/16818093078869101032


 女子高生の瑠璃香は「なんでも治る傷薬」という魔法の道具を持っており、麻弓の怪我を治すためにそれを使うが、瑠璃香自身も心の傷を抱えており、その傷は魔法の道具では治せない。「人の限界を教えてくれるネックレス」を持っている麻弓は瑠璃香の心の傷に気づき、彼女を支えようとする。

 男子高校生の青木くんはクラスメイトからの悪口に耐えながら、イヤホンを手放せない日々を送っている。一方、碧彩さんは青木くんの心の声を聞くことができる特別なヘッドフォンを使い、彼を支えようとし、彼の味方が増えていく。

 路地裏にある魔法の研究所では、困っている人を助ける魔法のアイテムを作っているが道具だけでは悩みを解決するのは難しいといい、未来を選ぶのはあなただと訪問客を迎える話。


 疑問符感嘆符のあとはひとマス開ける等は気にしない。

 現代ファンタジー。

 ファンタジーと現実の高校生活をうまく掛け合わせているところは独自性がある。いじめを扱いながら、希望や友情が描非常に興味深い。


 オムニバス作品。

 一話の主人公は女子高生の瑠璃香。一人称、自分。

 二話は女子高生麻弓、一人称、私。

 三話は男子高校生の青木。一人称、僕。

 四話は女子高生の碧彩。一人称、私。書かれた文体。

 五話は魔法の研究所の魔法使い。一人称、僕で書かれた文体。それぞれ自分語りの実況中継で綴られている。


 それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプと、メロドラマと同じ中心軌道に沿って書かれている。

第一話 怪我を治すゴムバンド

 麻弓は学校に来て早々、腰を痛めたことを瑠璃香に話す。瑠璃香は「なんでも治る傷薬」という魔法の道具を持っており、それを使って麻弓の怪我を治すことを提案。瑠璃香は魔法の道具を使って麻弓の怪我を治す。道具で自身の傷は治っても、心の傷は治らず抱えていることを隠している。

 第二話 人の限界がわかるネックレス

 麻弓は腰の痛みを抱えながらも、部活でのレギュラーの座を守るために頑張っている。彼女は「人の限界を教えてくれるネックレス」を持っており、それを使って瑠璃香の感情を探る。瑠璃香は過去の部活での出来事が原因で心の傷を抱えており、その傷は魔法の道具では治せない。人の限界度を教えてくれるネックレスは、深い深い碧色に染まっている。麻弓は瑠璃香の心の傷に気づき、いい加減話してくれればいいのにと思うのだった。

 第三話 悪口が聞こえなくなるイヤホン

 青木くんは、電車で十五分揺られた後、少し小高い場所にある高校の最寄り駅に到着。駅から歩いて七分の距離の緩やかな坂道を歩く。後ろから聞こえる笑い声に慌ててイヤホンをつけるが、後ろからぶつかられてよろけ、小さな声で謝るとツバを飛ばしながら怒られ笑われる。イヤホンをしているため、何を言われているのかはわからないが、彼らはひとしきり笑った後、学校へ向かう。

 いつからクラスの男子から悪口を言われるようになり、隣の席の碧彩さんだけが話しかけてくれるようになり、イヤホンを手放せなくなったのかを考える。彼は勉強が得意だった過去を持ちながらも、進学校では全てが平均で、コミュニケーション能力が低いためにいじめられるようになった。

 学校生活は地獄で、何をしても悪口が聞こえるようになり、何もできなくなった。親に心配をかけたくないため相談できず、今日も悪口を言われるだけの地獄が始まる。世界にはもっと辛い人がいると自分に言い聞かせるが、それでも地獄だと感じる自分が嫌になる。

 正門が見え、イヤホンを制服のポケットに入れてギュッと握りしめます。教室に入るとクラスメイトの視線が突き刺さり、ひそひそ話し出します。イヤホンをポケット越しに握りしめ、自分に大丈夫と言い聞かせる。突然、碧彩さんが「おはよ、青木くん」と声をかけ、彼は顔をあげるが、思わず視線をそらしてしまう。碧彩さんは友達に呼ばれ、笑顔で向かっていき、遠くから「アイツに話しかけるのやめなよ」という声が聞こえ、青木くんはイヤホンを強く握りしめる。

 第四話 心の声が聞こえるヘッドフォン

 碧彩さんは、隣の席の青木くんが人と話すのが苦手で、周りのクラスメイトから悪口を言われていることに気づいている。去年も同じクラスだった彼は、おとなしいながらも楽しそうに学校へ通っていたが、今は辛そうでいつも下を向いている。彼が過去の自分と重なって見えた碧彩さんは、積極的に話しかけるようにし、どんな時でも挨拶を欠かさないようにしている。

 ある日、青木くんが「なんで話しかけるの? 僕なんかに。迷惑だから……」とぽつりと漏らす。彼がいじめられるようになってから初めて放たれた言葉に、碧彩さんは泣かないように笑うので精一杯だった。部活をしても家に帰っても気分は上がらず、頭の中には青木くんの言葉がぐるぐると浮かぶ。

 碧彩さんは、去年使っていた特別なヘッドフォンを手に取る。昨年、自分が信じられなくて傷つけたテニス部のみんなは諦めずに話を聞いて受け入れてくれたことを思い出し、明日はこのヘッドフォンと一緒ならと決意する。学校へ行くまでヘッドフォンをつけて歩き、彼の心の声を聴こうとするが、雑音が多すぎて聞こえない。教室の前に着くと音が聞きやすくなり、彼の心の泣き声と助けてという言葉が聞こえてくる。

 碧彩さんは「おはよ、青木くん」と声をかけ、彼の味方で居続けることを決意します。友達に呼ばれた碧彩さんは、青木くんに話しかけるのをやめるよう言われるが、彼をいじめないよう説得する。友達も理解し、青木くんに話しかけることを約束する。

 青木くんはうつむいたままだが、碧彩さんは心の中で「少なくとも三人は君の味方だよ」と話しかける。

 最終話 魔法の薬

 少し路地に入ったところにある寂れた一軒家は魔法の研究所で、主人公は困っている人を助ける魔法のアイテムを製作している。彼は昔、魔法使いに助けてもらい、魔法の薬の作り方を教えてもらった。大切なのは気持ちであり、道具だけでは悩みを解決するのは難しいと語る。未来を選ぶのは君であり、彼はその手助けをしたに過ぎないと言う。お客様が訪れ、「いらっしゃいませ。何かお望みのものはありますか?」と迎えるのだった。


 三幕八場の構成になっている。

 一幕一場の状況の説明、はじまり

 麻弓が学校に来て、腰を痛めたことを瑠璃香に話す。

 二場の目的の説明

 瑠璃香が魔法の道具を使って麻弓の怪我を治すことを提案。

 二幕三場の最初の課題

 瑠璃香が自分の心の傷を抱えながらも、麻弓を助ける行動をする。

 四場の重い課題

 麻弓が魔法のネックレスを使い瑠璃香の心の傷に気づき、話してくれればいいのにと思う。

 五場の状況の再整備、転換点

 青木くんがいじめに苦しむ日常が描かれ、彼の孤独感が強調。

 六場の最大の課題

 隣の席の碧彩さんが青木くんに話しかけ、彼の心の声を聞くために特別なヘッドフォンを使いはじめる。

 三幕七場の最後の課題、ドンデン返し

 碧彩さんが友達に青木くんをいじめないよう説得し、彼の味方が増えていく。

 八場の結末、エピローグ 

 魔法の研究所の彼は、道具だけでは悩みを解決するのは難しく、その手助けをしたに過ぎないと語り、客を迎える。


 本作はそれぞれの登場人物の視点で語られながら、一話と二話、三話と四話で一つの話になっている。

 

 一話の書き出しは会話文からはじまっている。

 遠景で「腰やったんだよねー」と示し、近景で、いつどこで、誰の言葉なのかを説明。心情で「え、ガチ? やばいやん。バレー部の大会今週末じゃないっけ?」大きめのリアクションで、でも迷惑にならない程度のボリュームで話す。

 可愛そうだと思えて、共感を抱く。

 会話が多く、間の地の文で瑠璃香の心情が語られていく。

 話している内容やテンションは明るく元気にみせながらも、友達の麻弓に対して、すごく気遣って言葉を使っているのがわかる。

 相手の顔色をうかがっているような感じに、過去になにかしらあったのだろうと思わせられて、可哀想に思えてくる。それでいて困っている友達を助けようとするところに人間味を感じ、しかも。「一週間以内の傷ならすぐ治るってさ。それ以外のに関しては、期間によって変わるって。一か月前までは一週間、一年前なら一か月」で治るなんて、医者いらず。欲しいだろうと思えて共感する。


 友達にあげてから動悸が激しくなる。怪我は治っているけれど心の傷は治っていないとあり、興味を惹かれて読み進めていく。


 今度は麻弓視点で語られていて、首から下げていた磁気ネックレスは『人の限界を教えてくれるネックレス』だとわかる。

 登録されている対象者の色の濃淡によって、人の限界が可視化されるというもの。

 瑠璃香は四月から六月の時期に元気をなくしているという。

「昔部活で何かあったことくらい予想がついてる」

「古傷古傷。中三の時のやつが響いてんの。マジだるい」

「え、テニス?なら長ズボンだな。元テニス部の実力見せてやる! ん、もう日焼け止め塗り終わったん? 早ない? あ、日焼け止め塗ってトイレ行ってから行くから先行っといて」

 おそらく、中学のときテニス部に所属していて膝を怪我をしたのだろう。試合の怪我なのか、部活内のトラブルが原因なのかまではわからない。

 ただ、二人は中学からの付き合いなのだろう。だから「いい加減話してくれればいいのに」と麻弓は思うのだ。


 三話は青木くんという別の話がはじまる。

 遠景で「電車に揺られること十五分」と示し、近景で「少し小高い場所にある僕の通う高校の最寄り駅に着く。駅から歩いて七分」と説明。心情で「急なのか急じゃないのかわからない程度の坂道をとぼとぼ登る」と語る。

 毎日の登校の様子。

 そのあと、後ろからギャハハーという笑い声が聞こえてきて、慌ててイヤホンをつけ、ぶつかられ、とっさに謝るとつばを飛ばしながら笑われる。

 ぶつかったほうが悪いのに。なんだか可哀想に思えて共感を抱く。


 導入で登校風景を語ってから、本編では主人公について語られていく。

 人前で話すのが苦手で、クラスでいじられるようになり、無視され、悪口を言われる。親に心配してほしくなくて、誰にも相談できない。悪口から逃げるためにイヤホンをつける。

 学校では、「からかわれて、もしかしたら盗られるんじゃないかという思いが溢れてイヤホンがつけられない。だから、制服のポケットにイヤホンを入れ、それをギュッと握った」とあり、彼にとってはお守りであり、すがるものがこれしかないのだ。

 隣の席の碧彩さんに声をかけられるも、「思わずふいとそらしてしまう。昨日の自分の言葉が頭の中でぐるぐる踊り出す」とある。

 昨日の言葉とはなにかしらん。

 碧彩さん視点で書かれた四話に「なんで? なんで……話しかけるの? 僕なんかに。迷惑だから……」とある。

 この言葉だと推測。

 彼女は、「そっかと返して泣かないように笑うので精一杯だった」とあり、ここで会話が打ち切られたと思われる。

 そんな日の翌日、彼女はまた声をかけてきたのだ。

 だからおもわず視線をそらし、頭の中で昨日の自分の言葉を思い出したのだ。


「遠くから、アイツに話しかけるのやめなよなんて声が聞こえてくる」そういうのは、聞こえないように言えばいいのに。これもまた、彼にとっては悪口であり、辛さをます要因になっていくのだろう。


 今度は碧彩さんの視点で語られ、青木くんが悪口を言われているのを知っている。 

「去年も同じクラスだった彼は、おとなしいなりに楽しそうに学校へ通っていたのに、今はとても辛そうでいつも下ばかり見ている。そんな彼が過去の自分と重なって見えた。あの時の自分に」

 声をかけるのは、かつての自分を思い出すかららしい。

 周囲から悪口をいわれていたことがあったのだ。

 

「なんで? なんで……話しかけるの? 僕なんかに。迷惑だから……」

 彼の言葉は、彼女の中に残り、部屋の机の上にかけてあったヘッドフォンをみる。

「去年つけていたヘッドフォン。少し特別なヘッドフォン。去年のことをいろいろ思い出す。自分が信じられなくて傷つけたテニス部のみんなのこと。それでも諦めずに話を聞いてくれて受け入れてくれたみんなのこと」

 テニス部に所属している彼女は昨年、テニス部でトラブルを起こしたのだろう。

 考えられるのは、瑠璃香が怪我したことと関係があると想像する。 碧彩が怪我をさせて、周りから責められたり揉めたりしたのかもしれない。あるいは、怪我させたことで自分を責めすぎてしまったとも考えられる。

 相手の気持がわかるヘッドフォンを使って、テニス部のみんなとは仲直りできたのだろう。

 

 青木くんの声を聞こうとするも、「でも、雑音が多すぎて彼の声が聞こえなかった」とある。特定の人物の心の声だけでなく、周囲の人の心の声まで拾ってしまうのだろう。


「私がみんなに彼をいじめないでと言ったっていじめはなくならない。なくすことができない。私一人の言葉で何人、己の行いを恥じてくれるだろう。どれだけの人が私の私たちの味方になってくれるだろう。私一人の力じゃ何もできない。それでも、彼の味方で居続けたい」

 彼女が戦っているのは、同調圧力。

「アイツらがそう言ったからって何さ。そうやって言いなりになってていいの? 自分の意思はないの? アイツらは、人をおとしめることでしか優越感を感じられない可哀想なやつなの。自分たちが弱いことを認めたくないだけ。私はあいつらからいじめられたとしても、青木くんに話しかけ続けるよ。どんな時にでも味方がいるってこと知ってほしいし、私が後悔したくないから」

 この台詞は、多くの人に響くと思う。

 人は一人では弱いから、報復という恐怖に怯えて相手のいうことに従わされてしまっているだけなのだ。 

 ふと灰谷健次郎の『兎の眼』にある一節を思い出す。

「人間は抵抗、つまりレジスタンスが大切ですよ、みなさん。人間な美しくあるために抵抗の精神をわすれてはなりません」

 きっと碧彩は毅然とした態度で、凛とした声で、堂々といったのだろう。その美しさを前にした友達は、きちんと聞くことができた。

 だから、「そうだね、ごめん。私の方が間違ってた。いじめられるんじゃないかって思ったら怖かったの。でも、二人が一緒にいてくれるもんね。これから、私も青木くんに話しかけてみる」「私も、ごめん。アイツらの言いなりになってた。何も考えないであいつらに従ってた。もう、しない。私もこれからは青木くんに話しかける」

 と、答えたのかもしれない。

 この辺りの、友達の描写がないのでわからない。

 ひょっとしたら口だけで、あとで碧彩はハブられてイジメられるかもしれない。でもこのとき、ヘッドフォンをつけたままだとしたら、友達の心がわかるはず。

 裏切るようなことは書かれていないので、友達の言葉は嘘ではないだろう。



 長い文はこまめに改行。句読点を用いた一文は長くない。一文は短め。短文と長文を組み合わてテンポよくし、感情を揺さぶっているところもある。

 一話と二話は軽快で親しみやすい口語体。会話が中心で、キャラクターの感情が生き生きと描いている。瑠璃香と麻弓のキャラクターが立っていて親しみやすく、友情と内面の葛藤という普遍的なテーマを描かれているところがいい。

 三話以降はシンプルで読みやすい文体。登場人物の内面描写が豊富で、感情移入しやすい。 青木くんの孤独感や碧彩さんの優しさが丁寧に描かれて共感を呼び、いじめや友情、支え合いの重要性がテーマとしてしっかりと描かれているところがいい。

 一つの話を二人の視点から読むことができ、読者は両方のキャラクターの感情や考えを理解できる。魔法の道具というファンタジー要素と、現実の高校生活がうまく融合。キャラクターの内面描写が丁寧で、読者に共感を呼びやすいのが特徴。

 主人公たちの成長や変化がリアルに描かれていて、読者に希望を与えてくれている。

 五感描写について。

 視覚は、瑠璃香の笑顔や麻弓のネックレスの色、魔法の道具の外観など、視覚的な描写が豊富。学校や通学路の風景、クラスメイトの表情など。

 触覚は、瑠璃香が手首を握りしめる、麻弓が腰の痛みを感じる、イヤホンを握る感触や、ぶつかられた時の衝撃など効果的に使われている。

 聴覚は、会話のテンポや声のトーン、笑い声や悪口、碧彩さんの優しい声などキャラクターの感情が伝わる。

 嗅覚と味覚は、とくにない。

 日焼け止めの匂いや喉の乾きなど、嗅覚や味覚の描写を増やすことで、さらに深みを持たせられるかもしれない。


 主人公の弱みでは、瑠璃香は心の傷を抱えており、それを他人に見せないようにしている。自分の感情を抑え込むことで、他人を助けることに専念している。

 麻弓は臆病なところがあり、友達の力になってあげたいと思いながらも、気遣いながらも自分からは言い出せず、瑠璃香からいってくることを待っている。

 青木くんはコミュニケーションが苦手で、いじめに対して無力感を感じている。

 碧彩さんは自分一人の力ではいじめを止められないことに対する無力感を感じている。

 それぞれの弱みを抱えながら、魔法の道具の力を借りつつ、相手の助けになりたいと行動していく。

 瑠璃香の心の傷について、もう少し具体的なエピソードや背景を描かれると、さらに共感できると考える。テニス部の碧彩と関係があるのかどうかもわからない。

 青木についても、学校や家庭の背景をもう少し詳しく描かれていると、キャラクターの置かれた状況がより明確になると思う。碧彩視点で描かれているときに、青木を取り巻くクラスの状況が具体的に書かれていると、全体像が想像しやすくなる気がする。その上で二人の内面描写をさらに深められれば、より感情移入できるのではと邪推する。


 魔法の研究所という名のただの小さな工房。「僕は昔魔法使いに助けてもらったんだ。その時に魔法の薬の作り方を教えてもらった。大切なのは気持ち。自分が何を想ってどうしたいか、自分の気持ちに正直になること、相手のことをおもう気持ち」とある。

 魔法使いに、作り方だけでなく大切なのは気持ちだということも教えてもらったのだろう。

「道具によって必要な気持ちは変わってくる。でもね、道具だけじゃ悩みの全てを解決するのは難しいんだよ」

 まったく持ってそのとおり。

 ナイフは物を切る道具だけれども、使い方を間違えれば命を奪うこともある。

 便利は不便利とよくいわれるのはまさに、未来を選ぶのは使う人次第なのだ。


 ラストで「おや、お客様がいらっしゃったようだね。『いらっしゃいませ。何かお望みのものはありますか?』」とあることから、いままで語っていたのはある意味独り言。相手はおそらく、あくびして入ってきた猫だろう。

  

 読み前は、タイトルからファンタジーかなと思っていたら現代で、「腰やったんだよねー」という台詞をいったのが大人ではなく女子生徒だった展開にまず驚かされた。

 瑠璃香と麻弓の友情が温かく描かれ、魔法の道具という設定が面白く、物語に引き込まれます。瑠璃香の心の傷についてもっと知りたいと続きが気になるも、三話は青木くんの話がはじまり、おやっと思わされ、青木くんの苦しみや碧彩さんの優しさに心を打たれた。

 それぞれ二人の成長や変化を見守ることで、希望や勇気を感じることができたのはよく、スムーズに話が済んで飽きずに読めた。

 ただ、瑠璃香の心の傷についてはどうなったのかしらん。

 いじめに対するメッセージが強く、読後感はよかった。

 そんな素敵な魔法の道具が売っている店があったらいいのに、と思わせてくれる。

 全体として、感動的で心温まる物語だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る