幸せは蝶々になって
幸せは蝶々になって
作者 くらげれん
https://kakuyomu.jp/works/16818093084546418376
大学の中庭で蝶に魅了された東雲凪と高瀬みずきは、魂蝶が見えることに戸惑いながらも、砥上一真と共に「魂蝶特別支援協会」に関わることに。協会での調査や実験を通じて魂蝶の存在やその影響を知るが、高瀬が事故で魂を失い、魂蝶となって飛び去る話。
疑問符感嘆符のあとひとマス開けるは気にしない。
現代ファンタジー。
ファンタジー要素と心理描写がうまく融合した作品。
サスペンス要素もある。
幻想的な雰囲気がよく表現されており、蝶々の象徴的な描写は印象的。主人公たちの成長や葛藤が物語に厚みを持たせている。
幸せオーラを求める魂蝶という設定が、独特で実に良かった。
こういう話を考えつくとは、感服する。
三人称、高瀬みずき視点、神視点で書かれた文体。幻想的で感情豊かな文体が特徴。物語が進むにつれて緊張感が増し、読者を引き込む力がある。
それぞれの人物の思いを知りながらも結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道で書かれている。
大学の中庭で、高瀬みずきは蝶が舞う光景に心を奪われていた。東雲凪の周りには多くの蝶が集まり、その美しさに魅了される。しかし、彼の存在に気付いた高瀬みずきは、彼に興味を持つものの、蝶たちを避けるようにしていた。
再び出会った二人。高瀬は蝶に魅了されつつも、その存在に戸惑う。図書室での出来事を経て、高瀬がよろけた瞬間、東雲の周りの蝶が去っていく。この現象に驚く高瀬は、蝶が見える東雲のことを不思議に思う。高瀬は東雲を中庭につれていき、「蝶々さん! 戻ってきて!」と声を上げる。
そこに砥上一真という男が現れ、蝶についての知識を持っていることを明かす。彼は「魂蝶特別支援協会」への登録を勧めるが、二人はその名称に疑念を抱く。砥上は、見える人々が集まる場所であると説明し、三人は新たな関係を築く予感が漂う。
高瀬と東雲は、砥上に誘われてカフェで魂蝶についての話を聞く。砥上は、魂蝶が見える者が増えており、それらが見えるのは魂の変化によるものだと説明する。しかし、彼が去った後、高瀬はその話を信じられず、魂の実験について疑問を抱く。数日後、三人は協会へ行くことになり、立派な建物を訪れる。そこで、事務員の田中に紹介され、高瀬と東雲は協会に登録する。田中は、登録すると魂蝶に関する情報やコミュニティにアクセスできることを説明し、魂蝶が見える瞬間の体験を話すよう求める。東雲は、高瀬を支えた際に魂蝶を見たと述べ、田中は彼の体を調べることを提案する。高瀬は、自身の変化に戸惑いながら、田中の言葉を受け入れる決意を固めていく。
東雲の体調を調べるため、研究室に連れて行かれた後、高瀬と砥上一真は「魂蝶」の起源について調査を進めていた。高瀬が見つけた資料によると、奈良時代のある人間が絶望から救いを求めた結果、魂蝶が生まれたという不吉な話を聞く。
その頃、東雲が調査を終え、再び部屋に戻ると、田中が彼の調査結果を発表した。田中は、鱗粉によって麻痺し、現実を拒絶する人々の特徴について説明し、特に最近の若者に見られる現象であると指摘。東雲は、自分の小説好きが影響しているかもしれないと微笑む。
田中の調査によると、東雲が魂蝶を見るようになったのは、高瀬と一緒にいた時にオーラが混ざったためだと判明。高瀬は自分のせいだと落ち込み、東雲はその考えを否定する。一方、砥上は、友達になれたことを感謝し、高瀬を励ます。田中は高瀬が図書室で体験した魂蝶の声について言及し、これが魂蝶の共鳴によるものだと説明。田中は実験を提案する。
三人は田中に連れられ、実験室に向かう。そこは精神科病棟のような白い部屋で、田中は高瀬にコードをつけた椅子に座るよう指示。実験が始まると、高瀬の脳内に「幸セ、ドコ」「不味イ」という声が響き、砥上もその声を聞くことができる。高瀬は魂蝶の影響を受け、欲望をつぶやくが、田中がその影響を心配し実験を中断。
実験の後、高瀬は魂蝶の気持ちを感じていることを友人たちに告げる。彼らは授業後に協会に行くことにする。
大学で高瀬と東雲が待っていると、砥上が遅れて到着。三人が歩き出すと、バイクが突っ込んできて高瀬が衝突し倒れる。東雲が駆け寄ると、高瀬の胸から魂のような光が浮かび上がり、それが魂蝶へと変わる。高瀬の魂蝶は舞い上がり、どこかへ飛んでいく。救急車が到着するが、高瀬はすでに魂を失っており、砥上は田中に電話をかけ、状況を伝える。魂蝶が幸せのオーラを求めて蜜を吸い始める描写で物語が締めくくられる。
三幕八場の構成
一幕一場 状況の説明、はじまり
大学の中庭で、高瀬みずきは蝶が舞う光景に心を奪われていた。東雲凪の周りには多くの蝶が集まり、その美しさに魅了される。しかし、彼の存在に気付いた高瀬みずきは、彼に興味を持つものの、蝶たちを避けるようにしていた。
二場 目的の説明
再び出会った二人。高瀬は蝶に魅了されつつも、その存在に戸惑う。図書室での出来事を経て、高瀬がよろけた瞬間、東雲の周りの蝶が去っていく。この現象に驚く高瀬は、蝶が見えることを不思議に思う。その後、砥上一真という男が現れ、蝶についての知識を持っていることを明かす。彼は「魂蝶特別支援協会」への登録を勧めるが、二人はその名称に疑念を抱く。砥上は、見える人々が集まる場所であると説明し、三人は新たな関係を築く予感が漂う。
二幕三場 最初の課題
高瀬と東雲は、砥上に誘われてカフェで魂蝶についての話を聞く。砥上は、魂蝶が見える者が増えており、それらが見えるのは魂の変化によるものだと説明する。しかし、彼が去った後、高瀬はその話を信じられず、魂の実験について疑問を抱く。
四場 重い課題
数日後、三人は協会へ行くことになり、立派な建物を訪れる。そこで、事務員の田中に紹介され、高瀬と東雲は協会に登録する。田中は、登録すると魂蝶に関する情報やコミュニティにアクセスできることを説明し、魂蝶が見える瞬間の体験を話すよう求める。東雲は、高瀬を支えた際に魂蝶を見たと述べ、田中は彼の体を調べることを提案する。高瀬は、自身の変化に戸惑いながら、田中の言葉を受け入れる決意を固めていく。
五場 状況の再整備、転換点
東雲の体調を調べるため、研究室に連れて行かれた後、高瀬と砥上一真は「魂蝶」の起源について調査を進めていた。高瀬が見つけた資料によると、奈良時代のある人間が絶望から救いを求めた結果、魂蝶が生まれたという不吉な話を聞く。その頃、東雲が調査を終え、再び部屋に戻ると、田中が彼の調査結果を発表した。田中は、鱗粉によって麻痺し、現実を拒絶する人々の特徴について説明し、特に最近の若者に見られる現象であると指摘。東雲は、自分の小説好きが影響しているかもしれないと微笑む。
六場 最大の課題
田中の調査によると、東雲が魂蝶を見るようになったのは、高瀬と一緒にいた時にオーラが混ざったためだと判明。高瀬は自分のせいだと落ち込み、東雲はその考えを否定する。一方、砥上は、友達になれたことを感謝し、高瀬を励ます。最後に、田中は高瀬が図書室で体験した魂蝶の声について言及し、これが魂蝶の共鳴によるものだと説明。田中は実験を提案する。
三幕七場 最後の課題、ドンデン返し
三人は田中に連れられ、実験室に向かう。そこは精神科病棟のような白い部屋で、田中は高瀬にコードをつけた椅子に座るよう指示。実験が始まると、高瀬の脳内に「幸セ、ドコ」「不味イ」という声が響き、砥上もその声を聞くことができる。高瀬は魂蝶の影響を受け、欲望をつぶやくが、田中がその影響を心配し実験を中断。実験の後、高瀬は魂蝶の気持ちを感じていることを友人たちに告げる。彼らは授業後に協会に行くことにする。
八場 結末、エピローグ
大学で高瀬と東雲が待っていると、砥上が遅れて到着。三人が歩き出すと、バイクが突っ込んできて高瀬が衝突し倒れる。東雲が駆け寄ると、高瀬の胸から魂のような光が浮かび上がり、それが魂蝶へと変わる。高瀬の魂蝶は舞い上がり、どこかへ飛んでいく。救急車が到着するが、高瀬はすでに魂を失っており、砥上は田中に電話をかけ、状況を伝える。魂蝶が幸せのオーラを求めて蜜を吸い始める描写で物語が締めくくられる。
魂蝶の謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どのような結末に至るのか気になる。
導入、本編、結論の順に書かれている。書き出しは、これからはじまる魂蝶についての説明がなされている。
遠景で、蝶がなにかに惹きつけられていくのを示し、近景でどの様な蝶であるのかが描かれ、心情を込めた会話文「あの人、蝶々たくさん……」と、主人公の呟きが書かれている。
淡黄色の羽で白くほのかな光を放つ魂蝶の鱗粉は幸せの粉であり、蝶が吸うのは幸せのオーラ。夢のような幸せを吸い、長く止まられた人間は、幸せに魅入られて現実との区別を失ってしまうという。
まさに夢に生きるようになってしまうらしい。
主人公の高瀬は、そんな蝶がみえている。
そして、蝶に群がられているのは東雲。
東雲に魂蝶が群がっていたのは、本を読むことによって現実から逃避し、夢のような幸せな状態に浸っていた。この現実逃避によって感じる幸せな気持ちが、魂蝶にとって魅力的なオーラとなり、彼の周りに集まる要因となっていたことが明らかになる。
東雲は寂しい人だと感じると、共感する。
また、現代に生きる若者の象徴としても書かれている。「最近の若者は現実逃避する人が増えたって聞くし、凪くんも恐らくそうなんだよね」読者層である十代若者に親近感を持ってもらえるキャラクターであろう。
高瀬と東雲の出会いは興味深かったけれど、誰が誰に声をかけているのかがわかりにくく、よくわからなかった。また、東雲か高瀬、どちらが主人公なのかも、何度も読むこまなければわからなかった。
読者に物語に感情移入してもらえるようにするためにも、どの登場人物に共感していけばいいのか、冒頭はわかりやすくすると、もっと作品にのめり込めると考える。
高瀬が魂蝶を避けていた理由は、魂蝶が見えることが普通ではないと感じていたため、他の人と違う自分に対する不安があったもあっただろう。また、魂蝶に囲まれると現実と夢のような幸せの区別がつかなくなることがある。その影響を避けるために、魂蝶が多く漂う人を避けるようにしていたかもしれない。
当初は、自分だけが魂蝶を見えることができると感じており、その孤独感から魂蝶を避けるようになっていた可能性がある。
これらの要因が組み合わさって、高瀬は魂蝶を避けるようになっていたと推測する。
特殊な能力を持っていることを打ち明けられない孤独は可哀想であり、共感できる。
そんな高瀬みずきと東雲凪の関係は、物語にとって重要な要素だ。
初対面では、高瀬は大学の中庭で読書をしている東雲を見かけ、彼の周りに舞う蝶々に興味を持ち、東雲の美しい外見と蝶々の存在に惹かれ、高瀬は彼に話しかけていく。
高瀬が東雲に声をかけたのは、いくつか理由が考えれる。
東雲の周りに舞う蝶々に引き寄せられるような感覚を覚え、自然と声をかけることになった可能性。魂蝶が持つ不思議な力や魅力によるものかもしれない。
あるいは、東雲の美しい外見や優しい雰囲気が、高瀬にとって話しかけやすい存在だった可能性。東雲は美形。高瀬は同性に好意を抱くひとだったのかもしれにし、彼の雰囲気が安心感を与え、声をかけるきっかけとなったとも考えられる。
のちに高瀬と東雲はどちらも魂蝶を見ることができる特別な存在。この共通点が二人の間に強い絆を生み出す。
東雲が高瀬を支えた際に、高瀬のオーラが東雲に影響を与え、東雲も魂蝶を見ることができるようになる。この出来事が二人の関係をさらに深めていく。
二人は魂蝶についての理解を深めるために協力し合う。魂蝶研究特別支援協会に登録し、魂蝶の謎を解明しようとする。
高瀬は自分が魂蝶を見えることに対する孤独感を抱えていたが、東雲との出会いによって和らぎ、東雲もまた、高瀬との交流を通じて自分の感情や考えを共有し理解を深めていく。
共鳴率の高さから、魂蝶の影響を受けて「魂蝶が気になるというか沢山いる人を思わず見ちゃうんです」と、幸せを求めるようになっていく高瀬。
「『幸せが欲しい……寂しい……』魂蝶から流れ込んできた感情は、高瀬も感じた事のあるものだった」とあり、ひょっとすると、初対面の東雲に声をかけたときも、同じ理由だったかもしれない。
つまり、魂蝶をみれる高瀬は共鳴率の高さから影響を受け、蝶に群がる東雲の幸せオーラを求めて声をかけたのだろう。
端的に言えば、高瀬は寂しかったのだ。
高瀬のオーラが混ざって、東雲のオーラが不味くなった。
つまり高瀬の不幸、寂しさがまざって幸せが薄まり、不味くなったのかもしれない。
人に好かれる幸せオーラ全開の人の特徴として、「背筋がピンと伸びていて、堂々としている」「新しい趣味に挑戦したり。自分のための時間を大切にしている」「清潔感があり美意識が高い」「実績あるのに偉そうにしない」「相手の長所を見つけるのが得意」「周りの人がいつも笑顔になっている」「表情が柔らかく話しかけやすい」特徴がある。
東雲はそういう人に見えたのかもしれない。
実際、彼は美形である。美形は姿勢もいいだろうし、表情も柔らかく笑顔でいる。
長い文は、九行くらいで改行しているところもある。句読点を用いた一文はやや長め。短文と長文を組みわせてテンポよくして、感情を揺さぶるところもある。
情緒豊かで、五感を刺激する描写が多い。特に蝶々の美しさや空気感が細かく描かれており、幻想的な雰囲気を醸し出している。
描写が豊かで、心理描写が深い。キャラクターの内面に寄り添った表現がされている。
キャラクター間の対話が軽妙で、砥上の関西弁がアクセントとなり、物語にユーモアを加えている。また、機械や科学的要素を取り入れたファンタジーで、魂蝶の概念を通じて、現実逃避や孤独感といったテーマが扱われるのも特徴。
東雲の優しさと高瀬の内面の葛藤がバランスよく描かれており、共感を呼ぶキャラクターに仕上がっているところに魅力を感じる。
幸せの概念や、見えることの意味についての考察がされており、単なるファンタジーに留まらない深みを持っている。また、幸福や孤独、自己肯定感についての考察も深い。
魂蝶という独自の設定が魅力的で、登場人物の感情や葛藤が繊細に描かれているところも共感しやすい。-
五感の描写としては、蝶々の舞いやその美しさ、周囲の環境が詳細に描かれており、物語の世界に没入しやすい。
視覚は、登場人物たちが見る風景や蝶々の美しさ。例えば、色とりどりの蝶々が舞う様子や、光が差し込む森の中の風景など、視覚的に鮮やかな描写がある。
聴覚は、魂蝶の声や周囲の音がリアルに感じられ、緊迫感を高めている。
触覚は、高瀬が魂蝶の影響を受ける際の感覚が丁寧に表現され、体験を共有できる。
蝶は幸せを運ぶ象徴として、さまざまな言い伝えや縁起がある。
オーストラリアのケアンズなど熱帯地区に生息する青い蝶ユリシスは、幸運や金運を呼ぶシンボルとして知られている。クイーンズランド州北部の熱帯雨林に生息しており、一度その姿を見れば幸せになれるという。
中国語で、蝶を表す「ディエ」という発音が、老年を意味する「耋」と同じ音であることから、長寿につながるともいわれている。
風水で蝶は、美や喜びの象徴とされており、姿を見ると幸せになれる、願い事を唱えると神様に伝えられるといったロマンチックな言い伝えもある。
アサギマダラは、渡り蝶のアサギマダラも幸せを運ぶ蝶として知られている。
ギリシャ語で蝶は「psyche(プシュケ)」という。
ギリシャ神話に登場するアモルに愛される美少女の名前が由来。名前のもとは「霊魂(プシュケー)」を人格化したもので、魂や不死を意味している。
ギリシャ神話の中で、プシュケは様々な苦難を乗り越えて、ヴィーナスの息子アモルと結婚を認められ、永遠の命を得て女神となる。彫刻や絵画でもよく取り上げられ、プシュケはよく、背中に蝶の翅をつけた姿で表されるという。
仏教では、極楽浄土に魂を運んでくれる神聖な生き物が蝶である。
サナギから脱皮して美しい翅(はね)をもつ蝶が飛び立つことから死後、からだから抜け出した魂を極楽浄土に運んでくれるとして神聖視されていました。輪廻転生の象徴でもあるため、仏具にはよく蝶の装飾が使われている。
これらを考慮にいれると、生前の魂が蝶となる話は、実に考えられていると感心する。
主人公の弱みとして、高瀬みずきは他の人が見えない蝶々がみえる自分が「おかしい」と感じており、その孤独感が強い。自分の能力を受け入れられずにいるため、他者との関係に不安を抱えている。
東雲凪は優しい性格だが、高瀬の内面的葛藤に気づかず、無邪気に振る舞うことで、時には彼を追い詰める可能性もある。
魂蝶研究特別支援協会に行くことになり、魂蝶や組織についてが徐々に明らかになり、物語が進むにつれて緊迫感も増していくが、協会の説明や会話など冗長になっている印象がある。
独特な世界観を説明するためには、どうしても長くなってしまう。会話文が長いので、間に地の文を挟み、話しているキャラクターの動きや表情の描写を描いてテンポよくしてみるのはどうかしらん。
また、東雲や高瀬、他のキャラクターの背景や動機がもう少し詳しく描かれると、物語の深みが増すかもしれない。
「魂蝶の気持ちが混ざってるんです」
そういったあとで、高瀬はバイクにはねられてしまう。
バイクが突っ込んできたのは、予想外な展開で驚いてしまう。
魂蝶の気持ちがまざっているのなら、幸せオーラを求めてしまっているはず。ひょっとするとバイクを運転していた人は、幸せオーラを出していたのではと邪推する。
つまり、高瀬はバイクを運転していた人に惹かれるようにフラフラと体が動いて、バイクの前に行き、はねられたのかもしれない。
ラスト、「『東雲くん…幸セ…ドコ…ぼくは死んだ…サミシイ…幸セ…吸ウ…美味…』そしてこの魂蝶は、幸せのオーラを纏った人間を見つけその蜜を吸いはじめた。『幸セ…美味ダ』」と書かれていて、魂蝶は寂しさから幸せを求めていることが明らかになる。
この辺りは良くできている。
精神の衣をまとった魂が身体に入っている私達人間の魂とは、快・不快を判断する。複雑な思考は身体が持っており、魂は単純なのだ。
その辺りが本編でも生かされていて、魂から成る魂蝶は幸せか不幸かで群がる。説得力があって、上手いなと思った。
読後。タイトルをみながら、続く言葉は「求めていく」かなと思った。蝶が持つ「幸せの粉」や「幸せのオーラ」から、蝶は幸せの象徴として描かれているが、蝶は寂しいから幸せを求めている。蝶自体が、幸せではないのだ。
東雲と高瀬の出会いも、微妙な心理描写がなされていて、高瀬が東雲に対して感じる羨望や惹かれ方がよかった。
魂蝶という存在や背後にあるストーリー、魂蝶が見えることで、現実逃避や心の葛藤をテーマにしているのも非常に興味深かった。
物語の導入部はとても興味深く、蝶々の描写に引き込まれた。
協会の存在や魂蝶に関する情報は興味深く、高瀬の心の葛藤や、魂蝶の存在が象徴するものに共感できた。もう少し驚きな展開があるとさらに楽しめたかもしれない。
全体的に心に残る印象的な作品だった。
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