お世話してっ!!〜私生活のお世話として偽装彼氏を命じられた件について〜
お世話してっ!!〜私生活のお世話として偽装彼氏を命じられた件について〜
作者 キロネックス
https://kakuyomu.jp/works/16818093080780366200
貧乏高校生音夜豹舞は、金持ちのクラスメイト猫壱凛桜の専属使用人として働くことになり、偽装彼氏を頼まれる。実は、中学のとき彼女を助けていたことが明らかになり、二人は晴れてカップルとなる話。
文章のはじめはひとマス下げる等は気にしない。
ラブコメ。
テンポが良く、ユーモアがあって面白かった。
主人公は、貧乏な高校生の音夜豹舞。一人称、俺で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。ラスト部分は、三人称神視点で書かれている。
女性神話の中心軌道に沿って書かれている。
主人公音夜豹舞が中学のとき、工事中のビルの下を歩いている少女に鉄パイプが落下していたのを助けるも記憶を失い死にかけたことがあった。その時期に両親が離婚。親権は父親に渡るも別居。アパートの家賃と学費払ってくれているが、食費とその他諸々は自分で稼がなければならない。放課後、時給の良い短期バイトを見つけては掛け持ちして稼いだ貯金はあるものの、いましている短期バイトの雇用期間があと数十日で終わりそうだった。
放課後、友人の啓太と一緒に高時給のバイトを探していると、啓太が見つけた時給五千円バイトに興味を持つが、詐欺だと疑う。だが結局そのバイトに応募し、怪しい電話の指示に従って指定された場所に向かう。そこで出会ったのは、クラスメイトで金持ちの猫壱凛桜だった。豹舞は凛桜の専属使用人として働くことになり、彼女の家に住むことになる。
豹舞は凛桜の家での仕事を始める。最初に案内されたのは豪華なお風呂場で、凛桜の背中を流すという衝撃的な仕事を任される。次に庭に案内され、凛桜と遊ぶことが仕事だと告げられる。豹舞は凛桜の運動神経の良さに驚く。
凛桜は豹舞に偽装彼氏を頼む。豹舞は渋々承諾し、二人は一緒に登校することになる。学校では凛桜が豹舞に抱きつき、周囲に二人の関係をアピールする。豹舞は男子たちの嫉妬の目にさらされる。
凛桜が作った弁当を食べる豹舞。見た目は悪いが味は美味しい。凛桜が豹舞を命の恩人だと周囲に話し、豹舞は困惑する。
凛桜と一緒にお風呂に入ることを命じられる豹舞。最初は拒否するが、結局凛桜の言いなりになる。お風呂で凛桜の色気に圧倒される豹舞。お風呂で豹舞の肩の傷を見た凛桜が、中学時代の事故の話をする。防犯映像をみせられて、豹舞はその事故で凛桜を助けたことを思い出す。凛桜は豹舞に感謝の気持ちを伝え、彼に告白する。豹舞も凛桜の気持ちを受け入れ、二人は本当のカップルになる。猫壱恭介様の専属使用人の立花は、かかった経費を彼女に説明しつつ、凛桜の計画が成功したことを喜ぶ。
時給が高くて楽なバイト探しをする謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どんな結末を迎えるのか気になる。
遠景で二人の会話、近景ではいつどこで誰がなにをしているのかを描き、心情でいいバイトが見つからないから現実逃避をしていたことが明かされる。
主人公は高校生。友達の啓太がいて人間味もある。でも貧乏で、バイトを探さなければまずい状況。クラスメイトの猫壱凛桜は社長の娘であり、比較すると可哀想の身の上が際立つので共感していく。
カジュアルで軽快な文体。長い文はなく三行くらいで改行し、口語的だし、長い文にならないよう句読点で短くしているので読みやすい。会話が多く、テンポも良い。長い会話は、会話文内で行変えを行って読みやすくしている。
主人公の内面の独白が多く、彼の感情や考えがよく伝わる。コメディ要素が強く、ユーモアを交えた描写が多い。キャラクターの個性が際立っており、感情の描写が豊かなところがいい。
読んでいて、友達の啓太の掛け合いが面白い。
後半は、凛桜とのやり取りが面白い。
五感の描写では、視覚は多く、教室の風景、夕焼けに染まる空、豪邸の外観や内装、豪華なお風呂場や庭の描写、凛桜の表情や仕草が詳細に描かれている。
聴覚的な刺激では、下校を促すチャイムの音、電話の音、会話のやり取り、凛桜の声のトーンなどが描写されている。
触覚では、毛布を捲るシーンや、タクシーに乗るシーン凛桜が豹舞に抱きつくシーンや、風呂での温かさが感じられる。味覚は凛桜が作った弁当の味が描かれている。
主人公の弱みは、貧乏であること。
だから生活費を稼ぐために高時給のバイトを探している。
また、両親が離婚し、父親と別居しているため、孤独感を感じていること。それらから、凛桜のような金持ちのクラスメイトに対して劣等感を抱いている。
弱みを克服するためにバイトをするも、バイト先が凛桜の家であり、彼女の命令に逆らえないので偽装彼氏をすることとなり、周囲の目を気にせざる得ない。
また、中学のときの事故のトラウマもある。本人は忘れていたが、防犯映像に映っていた、事故当時の映像を見て、彼女を助けたことを思い出すことができた。
主人公の目標を明らかにし、性格や価値観、過去にどのような行動を取ったか、直面している問題や葛藤を描写することで、読者は主人公が次にどんな行動を取るか、予測できた。
彼女の家で凛桜の専属使用人となった時点で、衣食住は得ているため、服従するしか選択肢がない。断れば即、「クビ」と言われるし、彼としては言う通りにするしかなかった。
でも、どうしてそんなにまで、彼を大切にするのかがわからなかったので、中学時代の出来事は予想外の展開で、驚きと興奮を感じた。
本作のいいところは、キャラクターに魅力があること。
主人公の豹舞や友人の啓太、凛桜などのキャラクターが個性的で魅力的に書かれているのがいい。凛桜の強引さと豹舞の困惑が面白いところだろう。
次に、テンポの良さ。
会話が多く、テンポが良いから読みやすい。しかもユーモアを交えた描写が多く、楽しく読める。キャラクターの感情が詳細に描かれており、共感しやすい。
視覚や聴覚の描写は豊富だが、嗅覚や味覚の描写が少ない。彼女の手作り弁当を食べているところや、彼女の屋敷や風呂など、五感をフルに活用した描写を増やすともっと良くなると考える。
急に出てくる設定や背景を丁寧に描いたり、主人公の感情の変化や葛藤を深堀りしたら、もっと深みが増して面白くなるのではと想像した。
ラストで立花が、カップル成立までにどれだけかかったか、彼女に説明するところが面白かった。
立花が影で、あれやこれや苦労していたのだ。社長の娘なので、今回のことをいい社会勉強にして、いずれ会社を継ぐときに役立ててもらおうとする考えが、立花にはあったはず。猫壱恭介様の専属使用人であるので、娘のことを頼まれていたに違いない。
読後、キャラクターの魅力やテンポの良さが際立って、楽しく読めたのは良かった。読み手を楽しませるのも、才能だと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます