夜の公園で出会った女の子を幸せにする『お仕事』
夜の公園で出会った女の子を幸せにする『お仕事』
作者 如月ちょこ
https://kakuyomu.jp/works/16817330668137853008
いじめられていた道野早紀と友達がいない桜庭柊斗、孤独だった二人が夜の公園で出会い、支え合いながら成長し、愛を育む話。
恋愛もの。
児童文学や児童文庫的な作品。
読みやすく、非常に心温まる素敵な恋愛ストーリー。
主人公は、桜庭柊斗。一人称、僕で書かれた文体。自分語りの実況中継で、現在→過去→未来の順に綴られている。
恋愛ものなので、出会い→深め合い→不安→トラブル→ライバル→別れ→結末の順に書かれている。
女性神話の中心軌道に沿って書かれている。
友達がいない桜庭柊斗は小学校六年生の春休み、夜の公園で泣いている女の子、道野早紀と出会う。彼女は隣の市にある藍崎小学六年生。彼女を家まで送り届けた翌日、会いに来た彼女と公園で再会。二人は友達になる。中学校に進学すると、同じ中学になり、早紀は柊斗のクラスメイトとなり、彼女に支えられる。
友達のいない柊斗はクラスで孤立していたが、ペアワークのとき、早紀の存在が彼を救う。
中学一年生の終わりに、クラスの中で自分語りをする行事「クラスミーティング」で柊斗は、もともと友達が少なく、明るいクラスは合わずあまり好きではなかったけれど嬉しいことが一つあったと語り、早紀への思いを告白。
みんなの拍手のあと、早紀の番。
嬉しかったと答え、小学校時代にいじめを受けていた過去があり、柊斗との出会いが立ち直らせてくれたと自分の過去を語り、中学ではいじめられないために自分から友達を作り、一番大好きな男の子を孤立させないために変わったと話し、柊斗への愛を告白する。
「早紀――僕と、付き合ってくれ」
「うん、喜んで」
二人は互いの気持ちを確認し合い、付き合うことになるのだった。
道野早紀の『大好きだよ』にどれだけ救われてきたのかといった謎と、主人王に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どんな展開や結末を迎えるのかに興味が惹かれる。
主人公は、夜の公園に一人で出かけて遊ぶほど友達がおらず孤独で可哀想なこと、困ったいる道野早紀を助ける人間味があり、コミュ障だけど彼女のために声をかけたり隣の市まで送り届けたり、スリルを味わうために夜の路地裏を歩く怖い怖い体験をするほど勇気があるといったところに、読者は興味し、共感していく。
心情を表すときに、伝えるのではなく動きによって示す書き方や表現がされ、ときに口語的に内面の葛藤や感情がリアルに伝わってくる。
主人公が小学六年生から中学一年生であり、子供である。
子供であっても、小学一年生と六年生が異なるように、年齢にふさわしい書き方が求められるもの。本作では年相応の表現がされていると感じた。
会話が多く、セリフからも登場人物の性格が伝わってくるし、自然な会話で、物語の進行が自然な形で展開されている。おかげで、感情や関係性が深くわかるし、登場人物の感情が細かく描写されている。涙や笑顔などの表現が多く書かれているので、登場人物の心情に共感しやすいと考える。
主人公には、弱みがあるのもいい。
友達がほとんどいないこと、夜の公園にでかけ、スリルを楽しむといって裏路地を歩いて怖い怖い体験するのも、主人公には勇気がないという欠点があると考えられる。
勇気がないから、怖さを克服しようと、夜の公園に一人でやってきたのだと推測する。
迷子だった彼女と二人きりのときは、彼女を励ますためにも、コミュ障だけれども名前を聞いたり手を繋いだり、行動を示してがんばっている。
難解な表現や複雑な構造ではなく、シンプルで読みやすいのもよかった。中学一年とはいえ、コミュ障でおとなしいところがあるため、登場人物の身の丈にあった構造だと思えた。
恋愛ものなので、好きになってもらえるまでの努力の過程が描かれており、孤立する主人公に対して、独りにならないよう声を掛ける彼女。
読者は、二人が結ばれてほしいと願うもの。
クラスミーティングで気持ちを伝えるために勇気を出す展開に、感情移入していける。
きっとハッピーエンドだろうと予測しやすいものの、予測を裏切るような展開があることで、読者は興奮と驚きを感じられる。予想外の展開が、彼女の告白内容だっただろう。
前半部分で、いじめられていたことは予想がつくかもしれないが、隣の市から移れると知った日もいじめられて泣かされて、お金も取られてというところはショッキングであった。また、中学で出会った主人公から、自分と同じ匂いがしたというところも。
だからこそ、互いに思いを語って結ばれる展開はとてもよかった。
まわりのクラスメイトが書き割り、背景みたいな感じではあったけれども、文章量から考えても、おかげでシンプルでわかりやすく、読みやすかったと思う。
読後、タイトルの「夜の公園で出会った女の子を幸せにする『お仕事』」のお仕事がひっかかる。読む前も、お仕事ってなんだろう、と目について、読み出した。
『お仕事』という表現は大げさな気もしたけれど、作品に注目してもらう表現としては成功している気がする。
主人公の桜庭柊斗と道野早紀の出会いから始まる心温まる物語は、非常に読後感が良く、読み終えてからまた冒頭を読んで、ふむふむなるほどと納得できた。
いい作品は、冒頭に帰るという。
二人の関係が徐々に深まっていく様子が丁寧に描かれていて、早紀がいじめを乗り越えて新しい環境で自分を見つけがんばる過程や、柊斗が彼女を支える姿はとてもよく、進行とともに絆が強まっていく様子が自然に描かれていた。
だから、二人の幸せを願いながら読み進めていけたのだろう。
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