ストーカー
ストーカー
作者 大星
https://kakuyomu.jp/works/16818093083029345748
仕事帰りにコンビニで見かけた女性から、ストーカーに追われていると相談されストーカーと対峙するが逃げられてしまう。女性の安全を見守り続ける男が、ストーカーと疑われる立場に立たされる話。
疑問符感嘆符のあとはひとマスあけるは気にしない。
SFとある。
現実的な設定で展開されていて、サスペンスやミステリーの要素が強い。
前半の主人公は、男性会社員。一人称、僕で書かれた文体。
後半の主人公は。男性会社員。一人称、私で書かれた文体。
それぞれ、自分語りの実況中継で綴られている。
それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。
自分のことを僕という男は、仕事帰りにコンビニで見かけた女性から、ストーキングされていると相談される。女性を助けるためにストーカー男に話しかけると、相手は「つけられてる? 僕そんなことしてませんよ。ただ歩いてただけですよ」といって、その場から逃げてしまう。男は女性を家まで送り届け、「もしまた危険な目にあったらすぐに言ってください」家の前で女性と別れた。
自分のことを私という男は早朝、昨日の女性の女性を思い出し、心配から彼女の家の前にいる。彼女を会社まで見届けてから、自分も出社。午後十時半、女性が会社から出てきた。あとをついていくも今日はコンビニには寄らなかった。
女性の様子を見つづけて三日。女性が家に着くまであとを追っているが、怪しい影は見つからない。ストーカーは消えたかのように思われたとき、不意に肩をたたかれ振り向くと見知らぬ男が立っていた。
「すみません、あの女性があなたにつけられているといってるんですけど」と言われる。
四つの構造で書かれている。
導入、コンビニでの出会いと女性からの相談。
展開、ストーカーとの対峙とその後の見送り。
クライマックス、ストーカーと疑われる場面。
結末、主人公の行動が誤解される。
ストーカーの謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どのような結末に至るのか気になる。
主人公の行動からの書き出し。
遠景で仕事帰りに行きつけのコンビニに立ち寄り、近景で、処品を持って女性の後ろにならぶ。心情で「あまり見かけない女性だと直感で思った」と語る。
主人公の彼にとっては、はじめて会うのだろう。
コンビニを出たのが午後十一時。自宅まで歩いて五分。およそ四百メートル圏に住んでいる。
女性から男の人につけられている気がすると言われ、隠れている男の方へ行き、声をかけ、一人で帰るのが不安に思っている女性に付き添ってアパートへ送るという、困っている人を助ける姿に共感を抱く。
勇気ある行動である。
相手は何者かもわからないのに、見ず知らずの人に頼まれて、話しかけに行くとは。女性と男性がグルという可能性もあるし、相手は刃物を持っている可能性も考えられる。
相手も、急に「すみません、あの女性があなたにつけられているといってるんですけど」といわれて、本当に歩いているだけなら、驚くだろう。違うと否定するだろうけれど、いきなり見ず知らずの人に嫌疑をかけられて冷静でいられる人はそうそういない。
変なことに関わり合いたくないと、逃げるのも無理からぬことだろう。
気になったのは、主人公の男は女性を送り届けたあと、「もしまた危険な目にあったらすぐに言ってください」といったのだろう。警察に相談してみては、という言い方もあったはず。
正義感があるのか、女性が魅力的だったのか。
わからないけれども、前者に思えるので共感していく。
長い文ではなく、こまめに改行。句読点を用いた一文は長くない。学内シンプルで読みやすい。会話が多く、テンポが良い。日常の中での緊張感を描写。主人公の内面の葛藤が描かれているのが特徴。
ストーカーの存在が感じられ、緊張感をもって読者を引き込んでいるところがいい。主人公の行動や感情に共感しやすい。日常の中での出来事として描かれており、現実感があるのもよかった。
五感の描写として、視覚はコンビニや街の風景、女性やストーカーの姿が描かれている。
聴覚は女性の声、足音。触覚は肩を叩かれる感覚。
嗅覚と味覚は特に描写なし。
嗅覚や味覚の描写を加えることで、より臨場感が出るかもしれない。
モヤッとするのは、「今、私は昨日の女性の家の前にいる」である。前半の主人公の人称は、「僕」で書かれていた。
でも後半は「私」である。
これをどう考えるか。
誤字の場合だと、女性を助けた主人公が過剰な心配から、逆にストーカーと疑われるような行為に発展し、誤解される展開を迎えた話となる。
「声をかけに行ったことで、自分がまだ心配されていると思わせたくなかったからだ」とあり、女性や他人とのコミュニケーションが不足したため、誤解を招く結果につながったのだ。
誤字でない場合、前半の主人公とは別人。
逃げていった男の可能性が考えられる。
便宜上、前半の男をA、後半の男をBとする。
以前、女性が困っていたとき、男Bは助け、家まで送り届けた。その後も、女性のことを心配して、陰ながら見守ってきた。
コンビニに立ち寄らなかった日は、不審なものはいなかった。
そんなことを三日続けていると、
すると、男Aに「すみません、あの女性があなたにつけられているといってるんですけど」と声をかけられた。
このあと歩いているだけと行って逃げていく、そういう話だと読める。
どちらなのかしらん。
「不意に肩をたたかれた」とあり、男Aは怪しい男に対して声はかけているが、肩をたたいた描写はない。僕とするところを私と誤った可能性も捨てきれない。
これをSFとするならば、女性を中心にして、主人公の男性はループしていることになる。
コンビニ帰りに怪しい男に声を掛けるも逃げられた主人公は、正義感から彼女を守ろうとする。タイムマシン、もしくはタイムリープで過去に飛び、陰ながら見守っていると、あの日の自分に「すみません、あの女性があなたにつけられているといってるんですけど」と声をかけられる。
そういう話かもしれない。
物語の詳細がわからないので、主人公や女性の背景や内面をもう少し描写したり、ストーカーの正体や動機などが明らかになったりすると、物語に深みが生まれる気がする。
どちらにせよ、女性になにかあるのだろう。
いくつか可能性を考えてみる。
一、誤解や勘違い
女性が本当に誰かに追われていると感じたが、実際にはそうではなかった。
二、意図的な嘘
女性が何らかの理由で嘘をついている。例えば、助けを求めるためや、特定の人物を避けるためなど。
三、心理的な問題
女性がストーカーの存在を信じ込んでいるが、実際には存在しない場合。
四、その他。
女性は特異な体質の持ち主で、彼女が嫌だと思うものは過去へ飛ばされる場合。
主人公は飛ばされたことに気づかず、心配して陰ながら見守っていたら自分に声をかけらた。
いずれにせよ、女性の真意や背景、その後どうなるのかは、読者に委ねられているのかもしれない。
読後。主人公の過剰な心配や行動に共感しつつも、ストーカーと疑われる展開にはハラハラさせられる。
ストーカーだと思ったら、勘違いだったということも世の中にはあるだろう。間違われたくないものである。
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