リコーダーとコデマリ
リコーダーとコデマリ
作者 高那りょう
https://kakuyomu.jp/works/16818093082699643773
小学生でリコーダーの魅力に取りつかれたデコとマリは仲良く過ごすも、高校では疎遠となる。河川敷でリコーダーの音を聞いてマリを思い出し、再び吹くことで二人の友情が深まり、コデマリの愛称をつけて吹き続ける話。
誤字脱字等は気にしない。
現代ドラマ。
いい話。
リコーダーを通じた友情の物語。
再会は感動的。
主人公はコデという名の少女。一人称、私で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。
絡め取り話法とメロドラマと同じ中心軌道に沿って書かれている。
主人公は小学生の時にリコーダーに出会い、その魅力に取り憑かれます。昼休みや放課後にリコーダーを吹き続ける中、同じくリコーダー好きのマリと出会い、二人はすぐに意気投合。中学卒業まで仲良く過ごすが、高校に進学すると学校もちがうこともあり、疎遠になってしまう。
高校生活を楽しむ中、主人公はマリとの思い出を思い出し、涙を流する。ある日、帰り道でリコーダーの音を聞き、その音がマリのものであることに気づく。再びマリとリコーダーを吹くことで、二人の友情は再び深まる。最後に、二人は「コデマリ」というニックネームをつけ、友情の象徴としてリコーダーを吹き続けることを誓う。
五つの構造で書かれている。
導入、小学生時代のリコーダーとの出会いとマリとの出会い。
展開、中学時代の二人の友情とリコーダー演奏。
転機、高校進学後の疎遠と再会のきっかけ。
クライマックス、河川敷での再会とリコーダー演奏。
結末、再び友情を取り戻し、リコーダーを吹く日々。
リコーダーの謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どのような結末に至るのか気になる。
自分語りから始まる書き出し。
遠景で「小学生の時、音楽の授業でリコーダーに出会った」と語り、近景で簡単で音が出ると説明し、心情で楽器は難しいという考えに衝撃を与えたと語る。
リコーダーが好き人って吹き続ける姿は美徳に感じるし、そんな主人公に一緒に吹こうと言ってくれる友達も現れ、意気投合するところに人間味を感じる。
また、本名がコデであり、「コデってダサくない? っていうか女子につけるような名前じゃないし……」と思っていて、ちょっと可愛そうかなと感じるところにも共感を抱く。
「中学校の卒業式で『これからも一緒に吹こうね』と私たちは泣いて言った」が、高校は別々となり、はじめは連絡しあって会っていたが、都合が合わなくなり、疎遠になってしまう。
「普通に高校生活を過ごしていった。高校で新しくできた友達とお昼を食べて、放課後は一緒に遊んで、最後には『また明日ね』と言って家に帰る」充実した日々を過ごすも、涙する主人公。
いままでマリと過ごしてきたことだったのに、その彼女がいない事実に悲しみに襲われてしまう。
この部分に共感する。
仲の良かった子と、一緒に過ごせないのは寂しい。
だから、リコーダーを持ち歩く。
理由は「なんとなく」。
なんとなくではなく、寂しいからだろう。
マリを感じられるものを持つことで、悲しみに襲われないようにしたのだと思う。
「そういえばマリと会わなくなったのも『なんとなく』だった。なんとなく距離を置いて、なんとなく生きていたら、マリは遠くに行ってしまった」
この辺りの表現に、主人公の性格や考え方、生き方が感じられていい。帰りに河川敷でリコーダーの音を聞く。
数分後には聞こえなくなる。
これは伏線なのだろう。おそらく、マリも主人公と同じように寂しさを感じていて、吹いていたのだと推測する。
長い文ではなく、数行で改行。句読点を用いた一文は長くない。ときに口語的。登場人物の性格を感じられる会話文。シンプルで読みやすい。主人公の感情の描写が豊かで、読者に共感を呼び起こす。
リコーダーを通じた友情の物語。音楽がテーマであり、音の描写が多いのが特徴。リコーダーの音色や演奏の楽しさが伝わってくる。
友情の大切さや再会の喜びが描かれているところが素敵。
五感の描写として、視覚は河川敷や学校の風景、リコーダーの見た目など。
聴覚はリコーダーの音色、会話の声など。
触覚リコーダーを持つ感触、手を握る感触など。
嗅覚、味覚は特に描写なし。嗅覚や味覚の描写を追加して、物語に深みを持たせてもと考えるけど、リコーダーの話なのでもし使うなら音を嗅覚や味覚に例えるような描写をするくらいかしらん。
主人公の弱みは、行動力の欠如。マリとの再会を望みながらも、自ら行動を起こせないところにある。
高校が違い、互いの都合が合わないから、なんとなくで疎遠になってしまう。でも本人は、泣くほどマリと一緒にリコーダーを吹いて同じ時間を楽しみたいと思っている。
また、感情の抑制。自分の感情を素直に表現できない。
そこで、国語の授業で読んだ作品に教えられる。
「何をするにもきっかけが必要なんだよ」
河川敷で、まずリコーダーを吹き、マリのパートのところでやめる。すると、どこからか聞こえてくるリコーダーの音。気付くと書き出していて、マリに会える展開は実に良かった。
読後。不思議なタイトルだと思った。
リコーダーとコデマリとはなんだろうと思い、読み出すと二人の名前なんだとわかる。しかも小手毬という花があり、花言葉は『友情』というオチは、作品全体をうまくまとめていて、読後感が良かった。
久しぶりに会って、リコーダーを通した対話が印象的。とくに再会のシーンは心温まる。この先、二人でリコーダー奏者として活躍していくかもしれない。そんなことを思わせてくれた。
二人が吹いていた『新世界より』第2楽章(家路)だと思われる。感情豊かな旋律が特徴で素敵な曲である。
小手毬は、バラ科シモツケ属の落葉低木で、春に小さな白い花をたくさん咲かせる美しい植物。花は一センチ以下の小さな五弁花が集まり、手毬のような丸い形を作る特徴的な形から「小手毬」という名がつけられた。
開花時期:は四月~五月なので、この話は春だと思われる。
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