キラキラ瞳のお姫様
キラキラ瞳のお姫様
作者 落田 さかな
https://kakuyomu.jp/works/16818093082535720177
キラキラした瞳で見つめてもらった絵本も、成長とともに読まれなくなり売られてしまうが、新たにキラキラした瞳でみてくれる少女と出会う話。
疑問符感嘆符のあとはひとマス開ける等は気にしない。
現代ファンタジー。
絵本の視点から語られることで、物語に新鮮さと独特の魅力がある。大人向けの童話や絵本にしてもいいような内容の話。
主人公は、絵本。一人称、私で書かれた、ですます調の文体。自分語りの実況中継で綴られている。
それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。
絵本は、かつて自分を大切にしてくれた少女との思い出を語る。もう一度、キラキラした瞳で見つめてくれないかと思っている。
そんな絵本には、「お日様さん」と呼ぶライバルの絵本がいて、んが年隣りにいる友人でもある。
少女が成長し、絵本を必要としなくなったことで、絵本は捨てられる運命に直面。大学に通うため上京するため、荷物の整理をするという。お日様さんは色褪せていてあっさり捨てられてしまう。主人公は古本屋に売られてしまった。
主人公は古本屋の棚で新しい少女に出会い、再びキラキラした瞳で見つめられることで、新たな希望を見出すのだった。
四つの構造で書かれている。
序章は絵本と少女の出会いと絆。
中盤は少女の成長と絵本の孤独。
クライマックスは絵本が捨てられる運命に直面。
結末は新しい少女との出会いと再生。
出会ってからずっと見守っている方の謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どんな結末に至るか気になる。
独白からの書き出し。
遠景で、出会ってからずっと見守っている方がいると示し、近景で自分から話しかけることが出来ないと説明し、出会いは十数年前だと語る。
主人公は誰で、相手はどういう人なのか、非常に気になる。
人間は成長し、自分は色褪せ、ホコリが積もって動けないという。
クイズ問題のような、謎をかけられていく書き出しと、孤独さをかんじるところから共感を抱いていく。
そんな主人公の隣には「とても無邪気でお日様のような性格」で「お日様さん」と呼ぶライバルが居て、お日様さんも彼女のことを恋焦がれていてライバルで、友人だという。
お日様さんも、彼女のことを恋い焦がれている。
お互いに寄り添いながら、寂しさを醸し出していて、共感してしまう。
長い文、五行以上つづく文章。句読点を用いていて、一文は長くなく、主人公の自分語りで優しく、感情豊かに書かれているところに共感を呼ぶ。絵本の視点から語られる独特の視点が新鮮で、希望と再生が感動的。
五感の描写は、キラキラした瞳、色あせた表紙、埃が積もった本棚など、視覚的な描写が豊富。聴覚は少女の声や、お日様さんとの会話など、音の描写もある。触覚は絵本が手に取られる感覚や、埃が積もる感覚が描かれている。
主人公の絵本の弱みは、自分が必要とされなくなることへの恐れと孤独感を抱えていること。
成長した少女に捨てられる運命に直面し、希望を失いかけている。
「あ! 懐かしいの見つけた。この本よく読んでたなー」
待ち焦がれていた彼女の言葉の後、
「でも、もう読まないしな……どうしよう。捨てるか」
期待を上げて下げる。
ショックだっただろう。
ここまで読んできて主人公に共感してきたところ、
「彼女の小さかった体はもう大人と変わらないくらい大きくなりました。彼女は、大学に通うために上京をする様です。荷物整理をしていて、私がいる本棚の周りにもダンボールが置かれています」
状況がわかってきて、物語に感情移入していく。
仲の良かった友人は捨てられ、自分は古本屋に売られてしまう。
お日様さんとの関係性をもう少し深掘りされていると、物語にさらに深みが出たかもしれない。それこそ、絵本だけど主人公は泣き腫らすくらいに。
そんなとき、自分をキラキラした瞳で見てくれる少女に出会い、希望が生まれる。
結末は客観的視点で絵本について書かれてる。
「読み手が成長してしまったら飽きられてしまいます。捨てられてしまいます。ですが私は、この子たちお姫様のキラキラした瞳を求めて、これからも物語を語るのです」
絵本に限らず、どの作品も読んでくれることを心待ちにして本棚で待っていることに気づかせてくれた。そんな素敵なお話。
タイトルの「キラキラ瞳のお姫様」は、絵本を読んでくれている子供のことだけでなく、絵本のタイトルもそうかもしれない。または、キラキラした瞳のお姫様が出てくる物語という可能性もある。
子供がワクワクするのは、自分と世界が一つに感じるから。
読者と絵本が一つに繋がって、みんなの瞳がキラキラ輝いている様子が浮かんで、読後感はとても良かった。
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