my best friend

my best friend

作者 @tenshinhaaan

https://kakuyomu.jp/works/16818093083408535544


 キツネのぬいぐるみのコン太はりんちゃんと十七年間共に過ごしてきた。ある日、友達のみどりの体に入り、りんちゃんに感謝を伝え幸せな時間を過ごすも、部屋の掃除の際、礼を言ってゴミ袋に入れてしまう話。


 文章の書き出しはひとマス下げる等は気にしない。でも、なにか意図的な下げ方をしているので気になる。

 現代ドラマ。

 切ない。


 主人公は、きつねのぬいぐるみのコン太。一人称、僕で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。


 それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。

 コン太というキツネのぬいぐるみが、りんちゃんという女の子と過ごした十七年間の思い出を語る。

 りんちゃんが成長し、忙しくなっていく中で、コン太は少し寂しさを感じるが、りんちゃんの幸せを一番に願っている。

 ある日、コン太は突然みどりちゃんというりんちゃんの友達の体に入ってしまい、りんちゃんと話す機会を得る。「凛。いやりんちゃん。ずっと言いたいことがあって、りんちゃんのこと大好きだよ。今までありがとう。そしてこれからもよろしくね」コン太はりんちゃんに感謝の気持ちを伝え、幸せな時間を過ごす。

 しかし、りんちゃんは部屋の片付けの際、コン太をゴミ袋に入れてしまうが、最後に感謝の言葉をかける。「今までありがとう、コン太」


 四つの構成で書かれている。

 序盤は、コン太とりんちゃんの出会いと、これまでの思い出が描かれる。

 中盤は、りんちゃんが成長し、コン太と過ごす時間が減っていく様子が描かれる。

 クライマックスは、コン太がみどりちゃんの体に入り、りんちゃんと話す機会を得る。

 結末は、りんちゃんがコン太に感謝の言葉をかけ、コン太が幸せな気持ちで眠りにつく。


 全身がカーテン越しの朝日に照らされて山吹色に光る謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どんな結末を迎えるのか気になる。

 意味深な書き出し。

 遠景で前進に照らされる様子が描かれ、近景で今日は熱くなりそうと感じ、心情で、もうそろそろ起きる時間かなと気にしている。

 一行目の「全身がカーテン越しの朝日に照らされて山吹色に光る」ことによって、主人公のキツネのぬいぐるみのコン太に奇跡がおき、意志が宿ったのだろう。

 その後、りんちゃんんが生まれたころにプレゼントされ、十七年間一緒にいたことが語られていく。「りんちゃんは1人だけでいると眠れないから。これからはこのおばあちゃんの作ったコン太と一緒に寝てね」作ってくれたのは、おばあちゃんであり、「あの子をずっと見守ってあげてね」といい、いまでは高校二年生になっている。

 いまでは遊ばれなくなり、「でも、たまに一日だけでもいいから昔みたいに遊びたいな」と思っているところに、寂しさを感じ共感していく。


 長くない文、数行で改行。長い一文もあるけれど、長めなのは主人公がぬいぐるみで動かない存在だから。落ち着き、重々しさ、弱々しさ、奇跡が終わろうとしているなどを表現するために用いられていると考える。優しく温かみのある語り口で、コン太の視点から描かれている。感情豊かで、読者に共感を呼び起こす描写が多いのが特徴。

 コン太の視点から描かれることで、ぬいぐるみの感情や思いが伝わりやすいのが良い。また、りんちゃんとの思い出が詳細に描かれており、感動を与える。最後にりんちゃんがコン太に感謝の言葉をかける場面は心温まる。でも、さびしい。

 五感の描写では、視覚に朝日の描写、りんちゃんの姿、部屋の様子などが詳細に描かれている。

 触覚は、コン太のふわふわの感触や、みどりちゃんの体に入った時の違和感が描かれている。

 聴覚は、りんちゃんの声や、ドアの開く音などが描かれている。

 ぬいぐるみなので、嗅覚や味覚は表現していないと思われる。


 主人公のコン太はぬいぐるみであるため、動いたり話したりすることができない。だから、どうしても受け身にならざるえない。りんちゃんが成長するにつれて、コン太と過ごす時間が減っていくことに寂しさを感じている。 

 一人でも眠れるようにと、おばあちゃんが作ってくれたとき、「あの子をずっと見守ってあげてね」といわれたからかもしれない。


 そんな主人公が、みどりちゃんを羨ましく思っていると、気づけば彼女の中にいて、喋れるようになっていると気付いたときは、さぞかし驚いただろう。

 コン太の性格や思い出から、りんちゃんに気持ちを伝えることは、予測はできた。

 でも、そのあとで、部屋の掃除のときに汚いからとゴミ袋に入れられてしまう展開には驚かされた。さすがに、それはないだろう、と。

 りんちゃんの成長過程や、コン太との関係の変化をもう少し詳細に描いていたら、良かったかなと思う。コン太からの視点でしか、りんちゃんの成長はわからない。コン太の汚れやくたびれ感、ほつれ具合を出して、もう捨てても仕方ないと思えるような状態からなら、ラストの展開は受け入れられるかもしれない。


 読後、ベストフレンドと思っていたのは、コン太であって、りんちゃんは違うかもしれないとと思えてしまう。ゴミ袋に入れた後で、「今までありがとう、コン太」と声をかけるのだ。せめて、入れる前に挨拶をすると、印象が変わるかもしれない。

 それだけりんちゃんは、コン太を必要としなくなるほど大きくなった証かもしれない。

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