君は選ばれし者である

君は選ばれし者である

作者 オーミヤビ

https://kakuyomu.jp/works/16818093082656574159


 AIの反乱で全面戦争が起きる未来に置いて、重要な役割を果たすからと未来人によって命を守られることになるも、主人公が助けた少年こそ人類を救う存在だと、トラックに跳ねられたとき教えられる話。


 SF。

 ターミネーターを思い浮かべたら、T・Pぼんだった。

 どんでん返しがよく効いている。

 平凡な高校生が突然、大きな使命を背負うドラマチックな展開が魅力的。


 主人公は平凡な男子高校生。一人称、僕で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。現代、過去、未来の順に書かれている。


 それぞれの人物の想いを知りながら、結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中間軌道に沿った書き方をしている。

 主人公は平凡な高校生。特に目立つこともなく日常を過ごしていた。しかし、ある日突然、未来からの声が聞こえ、自分が人類を救うために選ばれた存在であることを知らされる。

 未来ではAIが人類に対して反乱を起こし、全面戦争が勃発するという。主人公はその戦争において重要な役割を果たすため、未来人によって命を守られることになる。

 連続的な家屋の火災に巻き込まれそうになったり、雨上がりの土砂に飲み込まれそうになったり、刃物を持った不審者に遭遇することもあった。危険な目に次々と遭遇するも、その度に未来人の不思議な力で助けられる。

 ある日の学校帰り、小学生の男がトラックに轢かれそうになるところに遭遇。選ばれた使命感を持って行動するようになっていたためか、正義感から主人公は少年を突き飛ばす。

迫るトラック。これまでのように、不思議な地k等で助けてくれるだろうという計算があった。が、強い衝撃を受け、跳ね飛ばされる。

 人類を救わなくてはならないのに、ここで死ぬはずがない。

『我々は君以外に干渉することができない。ゆえにその子を救うことはできないんだ。過去に干渉するのはそう簡単なことではなくてね、あまりに芯のない運命を持つ人物にしか、その効果は発揮できないんだ』 

 未来人の声に対して、自分を守ってくれるのではなかったのかと問いかけると、自分が助けた男の子が実際に人類を救う存在であることが明かされるのだった。


 基本的な構造で書かれている。

 序盤は、平凡な日常と主人公の紹介。

 中盤は、未来人の声と選ばれし者としての使命の告知。

 終盤は、命の危険と未来人の干渉、最終的な真実の明かし。


 どこにでもいるつまらない人間の謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どんな結末に至るか気になる。

 自分語りな書き出し。

 遠景で「どこにでもいる、つまらない人間だと思っていた」と思考が描かれ、近景で、具体的にどのような存在なのか行動で示し、心情で、平凡な一生を過ごしていくのだろうと感情を語っている。

 あの時までは、そう確信していたという。

 主人公は、特別でもない、平々凡々の、どこにでもいそうなただの男子高校生。弱みを語りながら、誰かに憧れうらやまれる存在でもなく、悲しみに満ちているところは、読者とも何処か共通する部分をもっており、憎めず共感を抱きやすいと考える。

 それが突然、駅の階段で転倒しそうになったろことを、未来人の不思議な力で助けられる。

 AIと人間の世界を巻き込む全面戦争が勃発。そんな現状を打破することができる存在が主人公であり、そのときまで命は守ると言われる。


 長い文ではなく、こまめに改行している。一文は長くなく、句読点を用い、ときに口語的登場人物の性格がわかる会話文で読みやすい。主人公の内面の葛藤や感情が詳細に描写され、日常の平凡さと非日常の出来事の対比が効果的に使われている。

 平凡な主人公が突然選ばれし者となるという設定が興味を引き、面白そうに思えるところがいい。主人公の成長や使命感が描かれており、感情移入しやすい。

 五感の描写も豊かで、情景をイメージしやすい。

 視覚では、駅のホームや通行人の様子、トラックの迫る光景などが詳細に描写されている。

 聴覚はワイヤレスイヤホンから流れる音楽や、突然聞こえてくる未来人の声、悲鳴などが描かれている。とくに未来人の声はその都度表現が書き添えられており、どのような気持ちなのか、命の危険に直面するシーンでの緊張感も伝わってくる。

 触覚は、階段から転落しそうになる感覚や、トラックに跳ね飛ばされる衝撃がリアルに描かれている。


 主人公の弱みは、平凡で特に目立たない存在であること。突然の使命に対する戸惑いや不安。命の危険に直面する度に感じる恐怖があげられる。

 平凡で目立たない存在だったからこそ、突然、未来で起きる戦争に際して、欠かすことの出来ない重要な人物であり、その時まで命を守ると言われたのだ。

 戸惑いながらも、迫りくる危機に、不思議な力で守らえrながらも正義感が芽生えていくのは無理からぬことだろう。

 だから、眼の前で危険にさらされる少年を見かけ、自分しか動けない状況だからと動けたのだろう。

 まさか、自分ではなく、助けた少年が重要な人物だったという展開は驚かされた。主人公の行動や決意が、もう少し具体的に描かれていたら、さらに物語に深みが増すのでは。正義感あふれるくらいに変貌していても良かったのでは、と邪推してみる。

 

『過去に干渉するのはそう簡単なことではなくてね、あまりに芯のない運命を持つ人物にしか、その効果は発揮できないんだ』

 つまり、主人公が自分は平凡で、歴史に関わり世界を揺るがすような人物ではなかったから、干渉できたということだろうか。

 しかも「君以外に干渉することができない」とある。

 他の人間は、歴史に関わるような重要な人物ばかりということかしらん。

 平たくいえば、主人公はモブキャラのような存在だったのかもしれない。

 

 全体的に、平凡な高校生が突然大きな使命を背負うというドラマチックな展開が魅力的だった。

 読後タイトルを見る。たしかに、嘘はいっていない。

 未来人に出会わなければ、主人公は少年を助ける行動をしなかったかもしれない。

 少年を助ける行為は、世界を救うことにつながることでもあるけれど、彼は人として立派なことをしたと思う。

 

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