クラスメイトの小動物系美少女に勉強を教えたら俺だけ懐かれたんだが

クラスメイトの小動物系美少女に勉強を教えたら俺だけ懐かれたんだが

作者 ナナシリア

https://kakuyomu.jp/works/16818093077900905398


 地学が趣味の地原は、地学を通じて星野さんと親しくなり、自信を取り戻した二人は、互いに支え合うようになる話。


 現代ドラマ。

 地学というマイナーな教科をテーマにしている点がユニークだし、キャラクターの内面描写も丁寧で、キャラクターの成長や二人の関係性の変化も描けていて、感動を与える作品。


 主人公は、男子高校生の地原。一人称、俺で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。


 男性神話の中心軌道に準じて書かれている。

 主人公の地原くんは、学校の授業で地学がないのに、地学が趣味の高校生。勉強を教えてもらうためだけに声をかけられることが多かった。

 ある日、クラスの女子の中でも特に小柄で童顔にロングヘアの少女、星野天に地学の、天体の解放を解説する。

 その後、今週末に図書館で彼女と一緒に勉強することになる。

 地原くんは地学を通じて星野さんと親しくなり、勉強を教えてもらうためだけにより行く人が減った。地学を勉強することで、彼女はわからないことがわかり、勉強してきたことも認められ、前向きになれたと話してきた。主人公も同じように思ってきたことを伝え、自信を取り戻した二人は、互いに支え合うようになる。


 基本構造で書かれている。

 導入は、地原くんが地学を趣味にしていることが紹介される。

 展開では、星野さんとの出会いと、地学を教えることになる経緯が描かれる。

 クライマックスは、星野さんが自信を取り戻し、地原くんとの関係が深まる。

 結末は、二人が特別な関係を築き、互いに支え合うようになる。


 地学の謎と、主人公に起こる様々な謎が、どんな関わりがあり、どのような結末に至っていくのか興味がある。

 

 書き出しが、目に留まる。

 遠景で「地学」を示し、近景でマイナーな教科とし、心情では好きでやっている人にあったことがないと語っている。

 主人公は、地学が好きで、孤立しているのかがわかる。寂しさからかわいそうに感じ、共感する。

 クラスの中心の女子から、勉強を教えてもらうためだけに声をかけられ、主人公はちゃんと教えている。底から人間味を感じる。でも、勉強を聞きに来る以外は、いつも一人でいた。


 そこに声をかけてくる星野天。しかも地学を教えてほしいという。主人公としては嬉しかっただろう。だから、「星野さん、もしよかったら、たまに一緒に地学やろうよ」と誘う。そして彼女は「えっと、嬉しい、です……!」と一緒に図書館で勉強する展開。さぞかし嬉しかったちがいない。

 I♡地学Tシャツを着ているのは、その現れなのではと考える。

 また、彼女も春にしてはミニスカートで来ているので、同じように楽しみにしていたのかもしれない。

 おそらく二人は、対のような存在。

 ラストでも、これまで自信がなかったけれど、教えてもらい、認めてもらって、自分らしく生きてもいいと前向きになったと語る彼女。

 主人公も、「実のところ、俺も同じようなことを思ってた」と語っている。

 実に微笑ましい。


 文は長くなく、三行ほどで改行。一文も長くない。シンプルで読みやすい文体。ところどころ口語的、キャラクターの性格を感じる会話文が多く、キャラクターの感情や関係性がよく描かれている。

 地学というテーマを通じて、キャラクターの成長や関係性の変化が描かれている点が魅力的だし、星野さんの可愛らしい描写や、地原くんの優しさがよく伝わる。

 五感の描写では、視覚的刺激に、星野さんの小柄で童顔な外見、地原くんのI♡地学Tシャツ、図書館の個室などが描写されている。聴覚は、クラスメイトとの会話や星野さんの声。

 ほかの五感描写を増やすと、より深めることができるのではと考える。


 主人公の地原くんの弱みは、地学が好きだが、周囲に理解されず孤独を感じていること。他人に勉強を教えることが多く、時折鬱陶しく感じることがある。

 他の教科もおしえているところから、彼は勉強ができるのだ。

 その強みがあるから、一緒に勉強することを星野さんに誘えるし、コミュニケーション能力も高く感じられる。 

 それなら、地学に関する具体的なエピソードや知識をもう少し盛り込むと、作品のテーマもより深まるのではと考える。

 

 読後、「地球が与えてくれるのは、すべての人の必要を満たすものである」の言葉が浮かぶ。地学が二人を出会わせたのだ。

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