青春なんてクソくらえ!!

青春なんてクソくらえ!!

作者 夜空 叶ト

https://kakuyomu.jp/works/16818093082050419870


 青春を夢見て高校生活に失望した海野翔は大学生になっても彼女ができなかったが、同じ悩みを持つ三月零と出会い意気投合。尾行してきた彼女から告白され、付き合うことになる話。


 誤字脱字等は気にしない。

 現代ドラマ。

 キャラの魅力とテンポの良さがよかった。


 主人公は、海野翔。一人称、俺で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。


 それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。

 可愛い彼女を作って楽しい青春生活を送ることを夢見ていた海野翔は高校生活に失望し、大学でのキャンパスライフに期待を寄せる。

 しかし、大学に入っても彼女ができず、カフェで偶然出会った美人の三月零と意気投合する。

 彼女は嫉妬深い性格で、翔に一目惚れし、彼を尾行して家を突き止める。突然の告白に戸惑う翔だが、彼女の美しさに惹かれ、付き合うことを決意するのだった。


 構造としては、導入では、高校生活の失望感。

 展開で、大学での新しい出会い。

 クライマックスには、三月零との出会いと告白。

 結末で、初めての彼女ができるが、今後の人生に影響を与えることを感じさせて終わる。


 青春なんてクソ食らえの謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どんな結末を迎えるのか気になる。

 書き出しが会話文からはじまる。

 遠景で、叫び、近景で中学生なら誰しも経験したことがあるだろうと訴え、心情で「中学生はみな高校生活に憧れる」と語る。

 誰しも経験したであろうことを持ち出し、興味を抱かせる書き出しは実にいい。

 高校生になったらバイトして、可愛い彼女を作って楽しい青春生活を送ることを夢見た主人公、中学よりは楽しい生活を送れるはずと信じていたが、工業高校には女子は数人しかおらず、バイドも禁止。学校行事もつまらなず、受験に励むことになっていくので、可愛そうだという感じを抱く。

 青春の失望と新たな出会いをテーマにして描かれているため、読者層の十代の若者をはじめ、共感しやすいだろう。


 大学生になったら彼女ができるかと言ったら、そうでもなく、「そう意気込んで大学に行ったはいいもののすぐに彼女なんてできるはずもなく気が付けば入学してから三か月が立っていた」となるのは、これまでと同じことをくり返しているから。

 ただ、環境を変えることで変化を呼び起こせるので、キャンパス内のカフェで巡り合う展開は、予測できるだろう。

 

 彼女の性格をきいて「そうですよ。いつかきっと受け入れてくれる人が見つかりますよ」と社交辞令的な会話から、主人公はコミュニケーション能力は悪くない。むしろ高い気がする。

 それでも彼女ができなかったのは、外見か成績か、工業高校という環境のせいだったのかもしれない。


 長い文ではなく数行で改行していて、一文は長すぎず口語的、カジュアルで読みやすい。登場人物の性格を感じる会話が多く、テンポも良い。主人公の一人称視点で進行するため、感情移入しやすい。

三月零のヤンデレな性格が魅力的に描かれている。

 五感の描写では、視覚にカフェや家の描写があり、くわしく書かれているわけではないが、情景が浮かびやすい。聴覚は、ノックの音や会話の音が描写されている。

 触覚や嗅覚、味覚に関する描写を増やすと、より深みが出ると思う。カフェで話をしているので、何かしらの匂いや味、触感の表現もできたかもしれない。

 加えて、カフェや家の背景描写をもう少し詳細にすると、情景が浮かびやすくなるだろう。


 主人公の翔の弱みは、高校生活に失望し、大学でも彼女ができないことに悩んでいること。

 根底にあるのは、自己肯定感の低さや他人との関係構築の難しさかもしれない。中学の頃はどうだったのかはわからないが、高校時代の不毛な時間が、彼の弱みにつながっている。

 大学生になっても彼自身は変わっていない。

 でも、環境の変化により、いままで立ってこなかったタイプの人間と出会う機会が増えたことで、彼女のようなヤンデレな人間と出会うことになる。

 この展開は、事前に自分の性格をはなしてるので予測できないこともないが、それでもやはり驚く展開だ。

 ただ、主人公の内面の葛藤や感情をもう少し深く掘り下げると、物語に厚みが出るかもしれない。彼に友人がいないからといって、嫉妬されないとは限らない。

 主人公が、他の女性と話すことを極端に嫌がり、友人関係が制限されるだろうし、行動を常に監視し、束縛することで自由が奪われるかもしれない。些細なことで誤解が生まれ、喧嘩することも起きるやもしれない。

 主人公が彼女の美しさに気づいたように、他の男子も気付くはず。

 彼女の性格を知らずに嫉妬され、トラブルに巻き込まれることだってあり会える。

  主人公の家族が三月零との関係に反対する可能性もあるだろう。

 そもそも、彼女自身、過去に何かしらトラウマを抱えている可能性もある。それが原因でヤンデレ化したのかもしれない。また、元恋人の出現もありえる。

 その結果、主人公は疲弊し、成績が落ちるかもしれないし、価値を失って彼女に捨てられるのもありうる。

 今後、どんなトラブルに見舞われていくのかわからないけれども、

 タイトルのように叫ぶ展開に陥らず、楽しい青春を過ごすことを願う。



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