幽体離脱の感覚を分かりやすく、お教えします。
幽体離脱の感覚を分かりやすく、お教えします。
作者 国語力 レー点
https://kakuyomu.jp/works/16818093077438125682
幽体離脱を体験し、見知らぬ男に叩きつけられて元に戻れた主人公はその夜、友人の死を知らされる話。
文書の書出しはひとマス下げる等は気にしない。
ホラーよりの現代ドラマ。
幽体離脱の話は珍しいので、興味を持って読めた。
主人公は男性。一人称、私で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。現在、過去、未来の順に書かれている。
ホラーには二種類あり、ラストで主人公が助かるか死ぬかの二通り。本作は前者。
それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。
主人公に一人目の子供が産まれた頃の話。遅くなって奥さんの実家に泊まった夜、幽体離脱を体験する。夜中に目が覚め、下半身の感覚がなくなり、ティッシュが風に揺れるような感覚に襲われる。魂が体から抜け出し、逆立ちの状態になり、恐怖に駆られた。
助けを求めようと奥さんを見ると、見知らぬ男性の影が見える。突然、地面に叩きつけられ、全身の感覚が戻る。翌朝、その出来事をすぐ忘れる。
その日の晩、自宅のアパートに奥さんの姉と旦那さんが遊びに来た。昨晩のことを思い出し、みんなにその話をすると信じてもらえない、主人公も同じ気持ちだったので、一緒になって笑い合っていると、仲の良い友人の死を知らされる。生前、産まれた子を見に行く約束をしていたのを思い出す。子供を見に来たのか、なにかを伝えに来たかはわからないが、幽体離脱中に見た影がその友人でだったとに気づくのだった。
実体験の謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どんな結末に至るのか気になる。
導入は客観的状況ではじまっている。
遠景で、完全に実体験とし、近景で「伝わりにくい事は、少し変更して書きますが……全て事実だと思ってお読みください」とエクスキューズを出し、心情で「これは、少し前の話になりますが……」と語りだす。
ココだけの話なんですけれども、という話題に人は弱い。つい、聞いてしまう。共感しやすい書き出してある。
子供が産まれたことで主人公に美徳、愛や情感を感じることで人間味を覚え、急遽妻の実家に泊まることになる状況、そして襲われる下半身の感覚がなくなるという特別な状況に。これらから居館を抱いていく。
長い文ではなく、改行をこまめに、一文も短く、語り口調で、読者に直接語りかけるようなスタイル。口語的で読みやすい。 実体験を元にしている体で書かれているため、物語としてのリアリティがある。動きのある書き方や比喩を用いて状況を伝えるなど、感覚の描写が詳細で、臨場感を与えているところが良い
五感の描写では、視覚は真っ暗な中に見える人影、ティッシュが風に揺れる様子。触覚は下半身の感覚がなくなる、ティッシュが風に揺れる感覚、地面に叩きつけられる感覚。聴覚は、夜中に普通に喋る声、心の中での叫び声が描かれている。
幽体離脱しているから、嗅覚や味覚の描写を省いたと推測する。
部屋の中にいるので、叩きつけられるのは地面ではない。床や畳、もしくは布団だろう。
主人公の弱みは、恐怖に駆られやすいこと。
臆病だから、という意味ではなく、幽体離脱の経験が初めてで、どう対処すべきかわからないのだ。しかも助けを求めることができず、孤立感を感じる。
突然、理由のわからない状況に放り込まれ、どうしていいのかわからなくなることは誰の身にも起きるので、読者にとって共通点となることが描かれているのがいい。
なんとかしようとする努力の構図が描かれているため、主人公に共感し、物語に感情移入するのだ。
おばけが現れ助けてくれる展開は、予想外で驚く。
助かった後の感情の変化をもう少しくわしく描写すると、感情移入しやすくなったかもしれない。
そもそも、幽体離脱の原因や背景について、もう少し説明があると理解しやすい。わからないから恐ろしいのは当然なのだけれども、金縛りなが理解できても、どうして幽体離脱が起きたのかしらん。
主人公の友人が助けに来てくれたと思っているけれども、助けに行けない気がする。なぜならその日、主人公は奥さんの実家に宿泊しているから。
お話としては、妻の実家に泊まることになった緊張もあり、いつもと違う状況だったため幽体離脱が起きたのだと想像。
主人公の友人が助けに来たのなら、妻の実家を知っていなければならない。もし、友人が助けてくれたとするならば、主人公が自宅のアパートで幽体離脱体験をするか、友人と話したときに「良いよ。アパートにいつでも居るから遊びに来てよ!」のセリフにアパートがなければ、丸く収まる気がする。
別の人物だった可能性も考えられるけれど、主人公が「それでも、あの時――現れたのは、間違いなく彼でした」と断言されているので、モヤモヤする。
主人公が悪い夢を見ていて、たまたま友人の死と重なっただけかもしれない。「友人は、死後――数日経過していた」とあるので、すでになくなっているのだ。
なくなって、アパートにいったら留守で、あちこち探してやっとたどり着き、探したんだぞ、と鬱憤を込めて主人公を投げただけかもしれない。
そんなことを、あれこれ考えさせるためにも、スッキリまとまる書き方は、ホラーには似合わないのだろう。
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