君がいたアオハル
君がいたアオハル
作者 ナナシリア
https://kakuyomu.jp/works/16818093077428536988
四季を通じて経験した恋愛と喪失を描いた話。
現代ドラマ。
別れを経験した人は、感情的で共感を生む作品。
主人公は男子。一人称、僕で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。モノローグであり、回想。恋愛ものなので、出会い→深め合い→不安→トラブル→ライバル→別れ→結末の流れを含んでいる。
それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。
主人公は、春に出会い、夏に告白され、秋に共に歩き、冬に彼女の本当の姿を知る。しかし、彼女の時間は限られており、主人公は後悔と共に彼女を失う。
彼女が『アオハルって知ってる?』と聞いたことを思い出す。『せいしゅんって読むより、ちょっと初々しくない?』『君にせいしゅんは似合わない。どっちかっていうと、アオハルって感じ』
彼女は謝りはしたが、反省している様子はなかった。でもどうしても憎めなかった。振り返れば、青春はなかった。ただ、彼女はたしかに自分の日々にいたことだけは確かだった。
ため息を吐き、彼女のことを考えるのを辞めるのだった。
すべての季節に君がいた謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関係し、どんな結末に至るか気になる。
四季を、春夏秋冬と表す書き出しが目に付く。
遠景で春夏秋冬と示し、近景で、すべての季節に君がいたと続き、心情で「今となってはいい思い出だ。どの季節にも、君がいない」喪失したことを物語っている。
冒頭だけで、主人公の寂しさ悲しさから人間味を感じつつ、可哀想に思え、共感する。
その後は、彼女の出会い、深め合い、不安や戸惑い、顛末が語られていく。
長い文ではなく、こまめに改行されている。句読点を用いて一文を長くしないようにし、主人公の内面の葛藤がリアルに伝わる書き方で、シンプルで読みやすい。季節ごとのエピソードが短く、感情を込めて絵が変えていく会話が自然で、キャラクターの個性がよく表現されているところもいい。
五感の描写では、視覚では季節ごとの風景や彼女の表情が鮮明に描かれ、聴覚は会話のやり取りや沈黙の音。触覚は彼女との距離感や歩く速さなど、身体的な感覚が描かれている。
主人公の弱みは、感情をうまく表現できないこと。彼女の本当の姿を知るのが遅れたことへの後悔。
彼の弱さ、感情表現が苦手なところがあるから、彼女から青春と呼ぶには初々しい「アオハル」な感じがするといわれたことを思い出すのだろう。
一年間、彼女と一緒に過ごした日々は青春ではなく、ただ自分の日々に彼女がいたというだけ。
彼は彼女のことが好きではなかったのだろうか。自分の青春を感じられない、無感動な人だったのか。なにかしらストレスを抱えていて、鈍感になっていたのかしらん。
彼女はどうしていなくなったのだろう。病気なのか、引っ越したのか。主人公の感情の変化がもう少し描かれているとさらに共感しやすくなるし、彼女の背景や内面をもう少し掘り下げると、深みが増すのではと考える。
彼女と一緒にいた日々を思い出し、あれは青春と呼ぶほどでもなかったとため息を付き、考えるのはやめる。そんなちょっとした出来事に目をつけて、物語にしたのかもしれない。
読後、タイトルを読んで、そういう日々を思い出すのも悪くないかもしれないと思った。
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