ショートショート 人間階級(ランク)

ショートショート 人間階級(ランク)

作者 @kokoroyomi

https://kakuyomu.jp/works/16818093078596783471


 ランク制度のある国で金ランクの男は、ルールに従わないものはものにされると会議で知る。翌日、銅ランクの人々に囲まれて笑われている、かつて金ランクだった物を目にする話。


 誤字脱字等は気にしない。

 ファンタジー。

 ランク制度を通じて、人間の傲慢さや無常さを描いている。

 短いながらも深いテーマがあり、考えさせられる。

 権力の不安定さ、不公平さを風刺している。

 

 三人称、男視点と神視点で書かれた、寓話のような簡潔な文体。


 それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。

 ランク制度が存在する国での出来事。ランクは金、銀、銅の三種類で、生まれた瞬間に機械が決定。主人公の男は金ランクで、何もせず、働く銅ランクの人々を見て笑っていた。以前銀の者たちを見たが、 綺麗な環境、笑顔の絶えない場所、何一つとして優越を感じなかった。

 年に一度の金ランクだけの会議に参加するために出かける。参加しないものは銅ランクに落とされる噂があった。

 会議では金ランクの者たちの間で争いが起こり、国のルールに従って彼ら二名が「物」にされることが発表された。

 翌日、男は笑うために銅ランクの人々を見たが、いつもと違う。彼らが囲んで笑っていたのは、かつて金ランクだった者、いや「物」だった。


 男は幸せだった謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関係し、どんな結末を迎えるのか気になる。

 書き出しの導入は、客観的状況からはじまっている。

 遠景で男が幸せなこと、近景で国にランクがあり、男は金ランクなこと、心情で男は優越に浸るために、何もせず、ただ働く銅ランクの人たちを見て笑っていることが語られる。

 いわゆる勝ち組で羨ましがられる存在であり、弱いものを見て笑う子供のような性格で、笑われているのは、働いている人達。かわいそうに感じ、男を通じて物語に興味を抱いていく。

 

 長い文ではなく、数行で改行している。一文は長いものもあるが、句読点を用いた短い文で物語が進行し、読みやすい。

 会話を通じて物語が展開され、キャラクターの性格や状況が明らかにされている。

 ランク制度という独自の設定が興味深く、金ランクと銅ランクの対比が効果的に描かれているのが特徴。

 五感の描写では、視覚は会議室の様子や銅ランクの人々の姿が描かれ、聴覚は会議室のざわめきや偉い人の声。具体的な触覚の描写はないが、男が立ち上がる動作などが描かれている。


 主人公の弱みは、銅ランクの人々を見下して笑う傲慢さ。銀ランクの環境や笑顔に対して優越感を感じない無関心さ。

 絶対的な強者だと思いこんでいる自信からくる優越から、自分よりもランク下の人達に興味も関心も持てない。

 人間が足元を歩いている小さな虫に対するような無関心な感覚を、金ランクはもっている。

 そんな性格や過去の行動から、自分たちよりも上位で偉い御方から「この中には知ってる人がいるかもしれないけど、実は金の者たちで争いが起こった。みんなも知っての通り この国にはルールがある。それは金も例外ではない。と言うことで、こいつらは物になる」といわれたときは、さぞかし驚いたことだろう。

 翌日、銅ランクのものたちに笑われている、かつて金ランクだった物をみて、自分もあんなふうになるかもしれないと思うと、昨日までのように笑えなくなったのだ。

 この話は寓話みたいなものと考える。

 だから、これ以上五感描写を増やさなくていいし、主人公の感情や考えをくわしく描かなくてもいいだろう。

 

「御方⬅️者⬅️者⬅️もの⬅️物」から、扱いが示されている。

 金と銀は者だが、銅はもの。それ以下は文字どおり物扱いされるのだろう。

 本作は、階級は不安定なものであること、権力が相対的で、常に飢えには上がいるという現実、個人の努力や能力とは無関係に社会的地位が決まる不公平さ、人間の価値は社会的地位やランクで決まるものではなく、本質的な部分にあることを訴えているのかもしれない。

 政治や国、企業や学校内の権力の移り変わりなど、幅広い読者が、自分事として捉えることができる時代性を感じる作品だ。

 

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