一粒の願いを添えて
一粒の願いを添えて
作者 学生初心者@NIT所属
https://kakuyomu.jp/works/16818093080588263143
帰り道、短冊を見つけた少女は、最近の自分を振り返り、「自分のしたいことを見つけたい」と書く話。
現在ドラマ。
主人公の内面の成長が感じられる。
三人称、少女視点で書かれた文体。 シンプルで読みやすい。日常の描写が中心。
女性神話の中心軌道に沿っている。
幼い頃、短冊にアイドルになりたい、イケメン有名人と会いたいと書いたこともあった。書きたいことがたくさんありすぎて、たくさんの短冊に書こうとして怒られた時もあった。
七月七日の七夕の日、普段通り学校に向かった少女は、帰り道に短冊を見つける。幼い頃の七夕の思い出が蘇り、短冊に願いを書くことを思い立つが、具体的な願いが浮かばない。最近、自分の意思で何かをしようとしたことがないことに気づき、「自分のしたいことを見つけたい」と短冊に書き、笹につけて去っていった。
七月七日の七夕の謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どのように関わり、どんな結末に至るか気になる。
遠景で今日がいつなのか示し、近景でどういう日なのか説明し、心情で「願いごとをする日」とつづく。
主人公は女子高生なのだろう。普段通り登校し、七夕だからと行ってなにもあるわけではないそんな日。いつも通り、友達と下校し、別れ、一人となり、家に向かって歩みを進めている。
一人となり、寂しさを感じるような状況。なんとなく興味を抱く。
長い文ではなく、こまめに改行している。句読点を使って一文は短く、短文と長文の組み合わせてテンポよく、ときに口語的で読みやすい。主人公の内面の変化や気づきを丁寧に描写されていて、成長や内面の変化が感じられる。
「自分のしたいことを見つける』という、読者層である十代の若者が共感しやすいテーマを扱っているのもいい。
五感の描写としては、主に視覚。短冊が視界に入る場面。あとは、夏休みの予定を楽しみにしている感覚が描かれている。
視覚描写は意識しないでもかけるので、他の感覚描写を増やすことで、より臨場感を出せるのではと考える。
拾った短冊に、願いを書いて笹につけるのだけれども、それはどこで拾い、どこで書いて、どこの笹につるしたのかしらん。
主人公の弱みは、自分の意思で行動することが少なく、友達に依存していること。そんな弱みがあることに気付いたのは、短冊に願いを書くという行為。
願いというのは、自身の中から生まれるものであり、同時に客観的にみなければ気付けないものでもある。鏡で自分の姿を確認するようなもの。
自分を見つめたら、具体的な願いが浮かばないといった、自分の欲求や目標が不明確なことに気づく展開は、驚きでもあり発見でもある。
この、気付きはいいなと思った。
もう少し具体的な主人公の過去エピソードが描かれていたら、物語に深みが増すのではと思った。
でもいいところがあって、ラスト「それを笹につけて、少女。いや、女性は去っていった」とある。
いままでは周りに流される子供、少女だった。でも自身を省みて『自分のしたいことを見つけたい』と願うことで、また一つおとなになったことを「女性」という言い方で表現している。
この表現はいいなと思った。
読後、「一粒の願いを添えて」というタイトルを考える。願いを粒と数えている。しかも短冊に書いているのに。この粒は、少女の涙なのかもしれない。これまでは友達に誘われ、誰かの言いなりになって生きてきた。本人としては、不本意だったのだろう。自分の気持ちや感情を、うまく表に出せない性格なのかもしれない。
いままでは心で泣いて、我慢しながらつきあっていた。そんなことを想像させる。これまではそうだったけど、これからは違う、嬉し涙や明るい希望も込められているようにも感じられた。
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