天の川の輝きに黒薔薇を添えて

天の川の輝きに黒薔薇を添えて

作者 もかの@NIT所属

https://kakuyomu.jp/works/16818093080585429680


 輝かしいものを嫌い、七夕の夜にコンビニ強盗を目撃した男は、後に姿を消し、近辺で三十代の男女の殺人事件が多発する話。


 誤字脱字等は気にしない。

 現代ドラマ。

 読みづらさはあるものの、非常に印象的で深い作品。


 三人称、男視点と神視点で書かれた文体。主人公の内面描写がよく書かれており、強い感情を呼び起こす。長編の序章のような趣がある。


 それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。 七夕の夜、午前二時。八階建てのマンションのベランダから星空を眺める男がいた。男は星々の輝きを嫌い、過去の偽善者のクラスメイトを思い出す。下を見れば、彼の視線の先にコンビニがあり、計画性のない強盗が行われる。男はその様子を眺め、失敗に終わった強盗を見届けた後、部屋に戻る。

 最後に、男は星の輝きが消えることを願い、その後の行方は不明となりますが、近辺で殺人事件が多発するという結末です。


 尊重し合うように輝く星の謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どんな結末に至るのか気になる。

 ナレーションのような書き出しが印象的。

 遠景で尊重し合う星の輝きを、近景でまとまりをみせているようだと示し、距離感を出したところで、心情で主人公である男が天の川に入ったら、黒に染まるか存在を知られることもないかもしれないと描いてその差を深くさせていく。

 さらに男がどこでそんな事を考えているのか、どういう様子かを描きながら、冒頭の導入から本編へと入っていく。

「部屋に散乱しているカップ麺などのごみからかすかに腐臭を感じ」たり、「覇気という存在を知らないかのような顔」をしたりするところから、孤独やはずれ者、可哀想や寂しさを感じ、輝かしいものを睨みつける人間的なものから、ある種の共感を抱かせる。


 長い文にしないよう、数行で改行している。一文も長くせず、内面的な葛藤や感情が強調されている。暗く、陰鬱な雰囲気が全体を通して漂っていて、描写は詳細。

 五感を使った表現がよく書かれている。視覚では星々の輝き、流れ星、月明かり、コンビニの人工的な輝き、黒い影など。嗅覚は部屋に散乱するカップ麺の腐臭。触覚はネックレスの感触が描かれている。


 男がネックレスを穢れていると感じるのは、内面的な闇や嫌悪感を象徴しているからと考えられる。

 月明かりに照らされて光ることで、男の内面的な闇が浮き彫りになるため、彼自身が穢れていると感じるのだろう。

 現在の心情、輝かしいものを嫌う理由は、偽善的なものと感じているからに他ならない。

 彼は過去の経験から、表面的な輝きや尊重が偽善であると感じ、嫌悪している。

 すべては過去の経験に秘密があると考えられる。


 主人公の男の弱みとしては、過去のトラウマや偽善者への憎しみ、 孤独感や自己否定感、社会からの疎外感がある。

 このことが、ラストに描かれている展開へとつながっていくのだ。

 その根底にあるもの、昔の男がなにかわるいことをしているかどうかは書かれていないが、内面的な闇や嫌悪感は、過去の経験やトラウマに原因があるのは町がない。

 彼が輝かしいものや互いを尊重し合うものを嫌う理由として、十年前の偽善者のクラスメイトとの経験が影響していると示されている。

 互いを尊重し合うものを偽善と感じ、それを嫌悪している。

 彼はなにも悪いことはしていないのに、偽善者のクラスメイトによってひどい目にあわされたのかもしれない。

 以来、偽善者ぶっている、もしくは偽善者に見える人達を嫌うようになったのだろう。

 その辺がわかるよう、主人公の過去について具体的なエピソードがあると感情移入しやすくなる気がする。

 コンビニ強盗の影が失敗し、その後男が部屋に戻った後、「真っ黒に染まった影」が出てくる。男が何かしらの行動を起こす決意をしたことを示しているのだろう。

 ということは、男が行動するきっかけになる強盗シーンは、もう少しくわしく描かれていたら緊張感が増すのではと想像する。


  男が消えた後、近辺で三十代の男女の殺人事件が多発しだしたとある。男が、事件を起こしていったのだろう。

 

 読後、耽美的なタイトルな割には、おどろおどろし殺人事件の幕開けのような内容で、ギャップがあるのもまた、印象深い作品だった。

 結末が読者に考えさせる余地を残している。果たしてこの先、どうなるのかしらん。 




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