縦の独白

縦の独白

作者 如月ちょこ

https://kakuyomu.jp/works/16818093081424949359


 真意を縦て読みに込めてつづった、友人への感謝の手紙。


 ホラー。

 縦読みにすると、真意がわかるトリック。

 表面的な文章と縦読みのメッセージの対比が鮮やかで、読者に対して強いインパクトを与えているところがいい。        


 主人公は、友人との思い出を振り返っている男子学生。一人称、僕で抱えた文体。自分語りの実況中継で綴られたポエム的な手紙文。


 女性神話の中心起動に沿って書かれている。

 主人公は、友人から心身ともにひどい目にあってきた。

 そんな主人公が過去の友人との思い出を振り返り、彼との関係がいかに特別であったかを綴る。二人の関係は共依存的であり、友人との時間が唯一の幸福であった。しかし、最終的にはその関係が歪んでいることに気づき、友人に感謝しつつも別れを告げる。


 ポエムの謎と、主人公に込めた謎が、どのように関係し、どんな結末に至るのか気になる。


 遠景で、主人公にとって「いちばん面白い人だから」と示し、近景で、「何度も何度も笑いあったね」と描き、心情で「僕は、その時間がなによりも大好きだったよ」と語っている。

 友人がいたこと、大好きだったという思いから人間味を感じる。


 一文が短く、句読点を用い、口語的で読みやすい。詩的で感傷的な文体。過去の思い出を振り返る形で進行し、感情が豊かに描かれているところが良く、共感を呼び起こす力がある。縦読みの仕掛けが。

 五感の描写としては、視覚的刺激は、笑い合う場面や、友人がにこっと笑う姿が描かれている。聴覚では、笑い声や「殺すぞ」という冗談のやり取り。触覚は具体的な触覚の描写は少ないが、心地よさや幸福感が伝わるような書き方をしている。


 主人公の弱みは、共依存的な関係に依存していること。学校の成績が悪いこと。友人関係がうまくいかないこと。

 その弱さが、本作のレトリックな文章を書くに至ったのだろう。

 レトリック手法とは、表面的な文章と隠されたメッセージの対比を強調するためのもの。

 表面的な文章は、友情や愛情を語っているが、縦読みすると全く逆のメッセージが現れる。

 縦読みのメッセージは、表面的な文章の裏に隠された感情や意図を表現しており、縦読みにすると、「君は僕の生命と心の殺人鬼だ 絶対に君のことも呪います」となる。

 縦読みのメッセージに気づくことで、読者は驚きとともに作品の深層に気づく。

 これまで書かれてきたことは、事実を元にした嘘だと知り、予想外の展開に驚いて印象を強めのだ。


 五感の描写を増やし、主人公の内面描写をさらに深めることで、読者の理解を高めたら、より魅力的な作品になるかもしれない。

 を出せたかもしれない。

 縦読みの仕掛けがもう少し自然に感じられるよう、文面に工夫があってもいいかもしれないえれど、作ってみると難しいものである。

「君のことも呪います」とある。

 つまり、主人公にひどい目に合わせてきたのは、一人ではない可能性がある。

 恨まれるほど、よほどひどいことを友人はしたのだろう。

 冗談でも、相手の嫌がることをしてはならない。

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