買い物好きな私の日常は、なぜだかトマト色に満ちている。

買い物好きな私の日常は、なぜだかトマト色に満ちている。

作者 ねくしあ@カク甲参戦中!

https://kakuyomu.jp/works/16818093078810536813


 蕃茄農家・ブラッディと呼ばれる女性刑事は裏路地で四人の悪人に遭遇して制圧、警察に引き渡し、再び買い出しへ向かう話。


 現代ファンタジーかな。

 主人公の魅力と戦闘シーンのスリルが際立った作品。


 主人公は、蕃茄農家・ブラッディと呼ばれる女性刑事。一人称、私で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。


 それぞれの人物の想いを知りながら、結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。

 主人公は同僚から蕃茄農家・ブラッディと呼ばれる女性刑事。買い物好きで、夕暮れ時に買い出しに出かける。

 裏路地で四人の悪人に遭遇し、戦闘が始まる。彼女は金棒を使って巧みに戦い、最終的に警察が到着して悪人たちを制圧する。彼女は警察と軽く会話し、再び買い出しに向かうのだった。


 飢えて死にそうな謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どんな結末に至るか気になる。

 書き出しもそうだけれど、タイトルやサブタイトルが気になる。

 なぜトマト色に満ちているのか。

『突撃! となりの晩ご犯』の「犯」はなにを意味しているのか。

 書き出しの「あー、そろそろ飢えて死んじゃいそ……」から、猟奇的なものが想像できる。

 遠景で叫び、近景で今がいつどこで、日が沈むのに合わせて飢えていくのを示し、心情で「……もう日も落ちるし、買い出しに行くかぁ」溜息ついて準備していく。

 まるで、夜間に活動して血を求める吸血鬼を連想するところから、主人公に共感を抱いていく。

 ただ、その様子は買い物へ行くのと変わらない。お目当てのものを見つけては「お、はっけーん」軽快な足取りで、口笛吹きながら歩いていく姿も、一見すると、買い物に行く姿のようで、人間味や親しみを感じる。

 でも、人相の悪い四人組の「悪人」に絡まれる展開。かわいそうに思えて共感する。


- 本作の良さは、主人公のキャラクターが魅力的なところと、戦闘シーンがスリリングで、テンポが良いこと。軽快で読みやすいことがあげられる。

 長い文はなく数行で改行し、句読点を用いた一文はそれほど長くなく、短文長文をつかってリズムよく、軽快でテンポの良い文体。 主人公の視点で描かれ、内面の独白が多く、彼女の感情や思考が詳細に描写されている。ユーモアを交えた表現が特徴。ときに口語的で詠みやすい。戦闘シーンがリアルで臨場感がある。

 五感の描写では視覚や聴覚、触覚が主に描かれている。

 視覚では、夕暮れのオレンジ色の光、影、裏路地のコントラスト、悪人たちの姿。聴覚は、街の喧騒や悪人たちの声、警察のサイレン、銃声。触覚では金棒の感触や戦闘中の衝撃、風の心地よさ。


 主人公の弱みは、戦闘中に口角が上がってしまう癖があるや、戦闘に夢中になると周囲の状況を一瞬見失うことがあること。

 つまり、悪いやつを叩きのめすことに飢えているのだ。

 買い物に行くといいながら求めていたのは、街にはびこる悪人であり、彼女の言う「買い出し」や「飢えている」は、悪人たちを制圧するのが目的。けっして、お腹がが空いたらか晩御飯の食材を買いにでかけたわけではない。

 そこに、本作の面白さがあるのだろう。

 

 ここまでやるのならば、主人公の弱さである、夢中になりすぎるところを描き切るために掘り下げたり、やや冗長に感じられるところを簡潔にテンポよくし、細部に拘り、五感描写を更に増やして臨場感を高めてよりスリリングにできるかもしれない。


 読後、タイトルをみながらトマト色と表現したのがわかる気がした。色だけではなく、柔らさと爆ぜた様子をも連想させていたのだ。

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