首
首
作者 文字を打つ軟体動物
https://kakuyomu.jp/works/16818093082140245794
知らない人の顔に有名人の顔が貼られているのを見つけ、カフェで友人に話すと「自分の顔を誰かの写真に貼り付けて本人に見られると、その人になり代われる」噂を聞く。帰りの電車内でSNSを見ていると、友人が投稿した写真に自分の顔が貼り付けられているのを見つけるネット怪談のコピー。
ホラー。
友人との関係に潜む不気味さや、日常に潜む異常性を描くことで、読者に恐怖を与えてくる。
主人公は、女性。一人称、私で書かれた文体。ですます調。自分語りの実況中継で綴られたネット怪談のコピー。現在、過去、未来の順で書かれている。
それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。
とあるネット怪談のコピー。
主人公は友人と遊びに行く途中、大量の張り紙を見つける。そこには知らない人の写真に有名人の顔が貼り付けられており、不気味に感じた主人公はその場を離れる。
友人とカフェで過ごす中で、その話をすると、「自分の顔を誰かの写真に貼り付けて本人に見られると、その人になり代われる」というおまじないの噂を教えてくれる。
帰りの電車でSNSを見ていると、友人が投稿した写真に自分の顔が貼り付けられているのを見つけた。
首をすげ替えられた後、亡くなった首と身体はどこへ、と投げかけられて終わる。
ネット怪談のコピーの謎と、登場する主人公に起こる様々な出来事の謎が、どのように関わり、どんな結末に至るのか、興味がそそられる。
書き出しは興味深い。
遠景で、とあるネット怪談のコピーと示し、近景では、怪談内容で友人と遊びに行く途中で大量の張り紙をみつけたと説明し、心情で「不細工なくせに人気な、あのアイドルとか。まぁ、私もその子推してるわけですけど」と感想を入れている。
ここで、読み手に想像させ、共感させている。
主人公には一緒に遊ぶ友人がいて、約束を守ろうとしているように感じる。そこでみた、大量の張り紙。妙に不気味で、気味が悪く、怖い思いをしてなんだか可哀想に感じ、急いで待ち合わせ場所へいくところに人間味を感じる。これらから、主人公に共感を抱いてしまう。
一人称視点で語られるた、書き込みのスタイル。長い文はなく、こまめな改行を行っている。口語的で、短い文でテンポよく進んで読みやすい。日常的な出来事から不気味な展開へと進み、日常と非日常の対比が明らかなのがいい。短いながらも、読者に不安感を与える描写が効果的で、インパクトのある結末が本作の魅力。
五感の描写に関しては、視覚は大量の張り紙や、知らない人の写真、有名人の顔など。聴覚は友人との会話、味覚はカフェでのスイーツの味が描かれている。
主人公の弱みは、不気味なものに対する恐怖心と、友人の話を信じやすいところ。
主人公の持つ弱さは、誰でも持っていると思われる。気持ち悪いも、自分が推している子に知らない人の写真が貼り付けられていたら、気分は悪い。こうしたところが、共通点としてあげられるので、読者も主人公の気持ちがわかって、なんとか気分転換しようと友達に話すことをするだろう。
主人公の行動は予想しやすかったが、友人が「似た噂なら知ってるよ」というのだ。これには、主人公同様、読者も予想外で驚かされるところだと思う。
しかし、そんな噂があるけど、実際に成功した話がないという。
おまけに、帰りの電車で友人のSNSをみたら、「『今日は(私)ちゃんと遊びました〜! 楽しかった!!!』と書かれて添付されていた画像は、主人公の写真に友人の顔が貼られているというショッキングな展開が描かれている。
このことから、友人がそのおまじないを試みたのではないか、という恐怖が生まれてくる。
でも次の一文で、「――この怪談の起源は、どこを辿っても見つからないそうです」と続く。
つまり、友人が話した噂は、彼女が作ったもの、嘘の可能性がる。
しかし、である。
最後に、重要な役職に就いている人を入れ替えるという意味の慣用句「首を挿げ替える」が書かれており、文字通りの意味で使われていると考えられる。つまり、実際に首を入れ替える恐怖を暗示しているのだ。
このことから、 友人は主人公になりたかったのかもしれない。
「首を挿げ替える」という表現から、友人が主人公の人生を奪おうとしているとも考えられる。
その辺りがわかるような背景や説明があると、深みが増すのではと想像する。 加えて、主人公の感情描写を増やすことで、より感情移入しやすくなるかもしれない。
この怪談の起源が不明であるため、結末も曖昧にされてスッキリしない。もやもやするからこそ、読後の解釈を読者に委ね、不気味さを増しているのだ。
かりに噂が本当だとしたら、主人公は友人に首をすげ替えられてしまったのかしらん。
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