この世の悪夢、執行役員会 〜的確に最適に、 そして最速に殺めよ〜
この世の悪夢、執行役員会 〜的確に最適に、 そして最速に殺めよ〜
作者 ミコトノリ812
https://kakuyomu.jp/works/16818093081988928638
執行役員会「ヴィルサーレ」のNo.Ⅱである孤闇(コードネーム:空白no name)は、役員長執行役員No.Ⅰヴィルサーレの影流である兄からターゲット暗殺する任務を受けて遂行する話。
文章の書き方は気にしない。
ファンタジー。
戦闘シーンやキャラクターの内面描写がよく描かれているところや、兄弟の関係性や、主人公の独特な嗜好が深みを与えている。
主人公は、執行役員No.Ⅱ空白no name。一人称、僕で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。一人称ながら、ところどころ三人称視点で書かれているところがある。
主人公は執行役員会「ヴィルサーレ」のNo.Ⅱである孤闇(コードネーム:空白no name)。兄であり役員長執行役員No.Ⅰヴィルサーレの影流からの指示を受け、ターゲットを暗殺する任務に挑む。
ターゲットは四十三歳の男性、コードネーム「gun maestro」。彼は表向きは普通の会社員だが、裏の顔はスパイ。主人公はターゲットを見つけ、戦闘を繰り広げる。左腕を切られたターエットは自殺を図った。他殺になるくらいなら自殺しなければならないのが、裏の界隈での暗黙のルール。兄に報告し、『よくやった、これから死体を回収に向かう。が、くれぐれも晩ご飯用にとかで肉片を持ってくるなよ?』『俺にカニバリズムの趣味はないんだ。あぁ、言い忘れてた。食べるにしても帰って来たらお風呂入れよ? そのあとご飯があるから腹を空かせておくように』
飲み物の代わりに血を飲んで、左腕をグシャグシャと食べる主人公は、次の任務に備えるのだった。
夜九時、アパートの屋根の上から電話する影の謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どんな結末に至るのか読んでいく。
遠景で時刻と場所を示し、近景で電話で伝えてきた内容と相手が執行役員会ヴィルサーレのドンであり実の兄であると描き、心情では影流も実名ではないが兄は役員長モードになると少し饒舌になるんだよなと、語る。
へえそうなんだ、と読みながら共感していく。
主人公は殺し屋をしていて、ナンバーが二番目の主人公は、一番目の兄の次に強いという。兄弟仲もよく、内容は残忍だがやり取りは微笑ましく、共感し、人間味を感じる。一人で人殺しをしているところや、人肉を生で持ち帰る習慣があるようでカニバリズムを疑われ、裏社会では名が売れ、国際警察からも手配書が出ているほどのところに、興味をもつ。これらから、主人公に共感を抱かせている。
長い文にならないように改行しながらも、一文が長すぎるところが多々見受けられる。それでも一文に句読点を用い、ときに口語的、登場人物の性格が伺えるような会話文を挟んで、読みやすくしている。情景描写はどちらかといえば少ない。
一人称視点で語られ、孤闇の内面や感情が詳細に描かれている。ダークでシリアスな雰囲気が特徴で、主人公の冷酷さや狂気が強調されている。
五感の描写はよく描けていて、視覚では夜の闇に溶け込む孤闇の姿や血に染まったマント、ナイフの閃きなどが詳細に描かれている。
聴覚では、サプレッサーの音やナイフが空を切る音、孤闇の笑い声など、触覚は切られた腕の痛みや、血の感触など。
血の匂いについての描写はないが、主人公が血に興奮する様子や、生の腕を食べるシーンで、血の味や肉の味について描かれている。
『この世は穢れている。人々はいじめ、喧嘩、戦争へと規模を大きくしていった。それなのに顔色を変えずに強者は弱者を使い古し、駒へと変えてしまう。だが執行役員による制裁を下し、穢れを浄化させるのだ。今こそ立ち向かえ、醜い姿を晒してでも相手を的確に最適に最速で殺せ』と、組織のドンである兄は語っている。
世の穢れを浄化するための人殺しが、組織の命題なのだろう。
つまり、弱者を使い物にする強者を排除するのが目的かと思ったら、依頼は同業と呼べる裏社会に暗躍するスパイの抹殺だった。
敵は、同業者なのだ。
このスパイが、強者につながっているのかもしれないのだけれども、その辺りの詳しいことがわからない。
組織の、内部抗争の話なのかなとも考えてしまう。もう少し深く描かれていると、物語に感情移入できるのではと想像する。
主人公について「ほぼ全てが隠蔽されている」としながら、『こんばんは、これから槍でも降ってきそうな冗談ジョークだな。そしてお前は確か空白no nameか。まぁジョークが下手なのはよく知っているぞ』とターゲットが言っている。
まるで顔なじみ。
この戦いは、組織内の揉め事のように思えてくる。
本作には、ジャンプ漫画的な魅力があって、個性的なキャラなので、面白そうな雰囲気を感じる。
だけど主人公である孤闇の弱みは明確に描かれていない。しいてあげるなら、兄に対する従順さや、カニバリズムへの嗜好が彼の人間性の一部として描かれている。
兄のいうことには従順であるから、兄に危害が加わったとき、豹変するかもしれない。
とはいえ、弱みがないため(あえて弱みがあるとするなら、jy-グが下手なことだろう)、主人公の葛藤をもう少し描いてキャラクターに深みを持たせられないものかしらん。受けた依頼を楽しみながらこなすだけで、盛り上がりに欠けている。
五感の描写のバランスを良くしたほうが、臨場感が増すかもしれない。主人公の手元の視覚や聴覚の描写が多い一方、嗅覚や触覚の描写を少ない気がする。ここぞというところで書き加えると、読み応えのある作品になるのではと想像した。
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