ヤンデルキミガ一番可愛い

ヤンデルキミガ一番可愛い

作者 竹

https://kakuyomu.jp/works/16818023212895164484


 林道茜は幼馴染みであり彼女の雨宮美玲を愛しているからこそ、もっと病ませようと、友人の加奈子から告白されてキスをする。目撃していた美玲に包丁で刺される話。


 誤字脱字等は気にしない。

 歪んだ愛。悲しい。


 主人公は、女子校に通う高校二年生の林道茜。一人称、私で書かれた文体。後半の途中、高校二年生の雨宮美玲。一人称、私で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。


 それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。

 主人公の林道茜は高校二年生で、幼馴染みであり彼女の雨宮美玲と付き合っている。美玲は少し病んでいるが、茜はそんな彼女を愛している。茜は美玲をもっと病ませたいという欲望から、わざと不安にさせる行動を取る。

 ある日、茜は友人の加奈子から告白され、キスをしてしまう。それを見た美玲は茜を家に呼び出し、包丁で刺してしまう。茜は死ぬ間際に、美玲の歪んだ顔を見て満足するのだった。


「私の名前は林道茜、高校二年生だ」からはじまる謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どのような関係があり、どんな結末に至るのか興味深く読んでいく。

 遠景で、自己紹介を兼ねたような書き出し。近景の会話で二人の関係をほのめかし、心情で愛して病まない幼馴染との関係を勝手いる。「少し病んでて危ないところもあるけど、そんなところも愛してやまない可愛い彼女だよ」というところに、本作の波乱を予感させている。

 実にいい書き出しである。

 

 幼馴染で彼女を愛している主人公。主人公はよく告白される存在で、女子だけどイケメンなのだ。そんな彼女に雨宮美玲は嫉妬する。そんなところも可愛いというところに人間味、愛らしさを感じる。

 中学からの友達の加奈子は、絶対主人公のことが好きだからかかわらないでと言ってくる。ただの友達だよと答える主人公。それでも好意を持たれ始めたこと気付いてもいる。

 三角関係で波乱の予感を感じるところに、読み手に興味を抱かせている。


 基本、一人称視点で進行し、会話が多く、シンプルで読みやすい文体ではある。

 主人公の語りで展開するため長い文になりやすいが、五行くらいで改行している。キャラクターの内面描写が豊富で、感情の動きがよく伝わるし、サスペンス要素があり、読者を引き込む展開がいい。

 五感の描写としては、視覚の刺激は美玲の歪んだ顔、涙、包丁が描かれ、聴覚は美玲の告白や扉の音、触覚では包丁が刺さる感覚が書かれている。


 主人公の弱みは、美玲をもっと病ませたいという欲望、他人の感情を弄ぶことへの罪悪感の欠如。

 病んでいる人が好きな癖をもっていたからこそ、美玲が病むようなことをしてしまったのだろう。

 主人公の過去にどのような行動を取ったか、直面している問題や葛藤を描写されているので、主人公が加奈子にどんな行動を取るのか、予測しやすかったと思われる。

 だけど、包丁で刺される展開はショックとともに、驚かされてしまった。たしかに、彼女の思いを考えれば予想できるかもしれないけれども、痛ましい。

 しかも主人公は、「ああ、私が求めていた物は、この顔だったのかも知れない。涙と愛憎で歪んでいる顔、そして後悔もしている顔、ああ君は可愛いなあ」と痛みに苦しみながら、恍惚な表情を浮かべていることだろう。


 読後、最後の台詞はタイトル回収となっているけれども、なくても良かったかもしれない。それとも、セリフとして書かれているわけではないのかしらん。

 それにしても、どうして茜は病んでたり、少し歪んでいる女の子が好きな癖をもっていたのだろう。彼女に昔、なにがあったのかな。


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