僕の夢
僕の夢
作者 伊島
https://kakuyomu.jp/works/16818093080644310712
野球選手になる夢をもっていたた、いまは仕事に明け暮れくれ夢を忘れた大人になった話。
現代ドラマ。
本作の主人公を反面教師にして、たくさんの夢を見て、今日から叶えていってほしい。
主人公は、社会人。一人称、僕で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。
女性神話の中心軌道に沿って書かれている。
主人公は子どものとき、「やきゅうせんしゅになりたいです」と七夕の短冊に夢を書いた。
現在。毎日の仕事に疲れ果て、人生に疑問を感じながらも答えを見つけられずにいる。コンビニで買ったビールを飲みながら、昔は美味しかったビールも今では辛さや苦しさを紛らわす道具になってしまったことに気づく。
テレビをつけると、七夕の特集が流れている。商店街の笹竹に飾られた短冊に「やきゅうせんしゅになりたいです」と書かれているのを見て、かつて自分も同じ夢を持っていたことを思い出す。しかし、その夢はどこかに消えてしまい、今ではただの大人になってしまった自分に対して、「ごめんな」と謝りながらも、涙は流れず、大人になってしまった自分を感じる。
ため息からはじまる謎と、主人公に起こる出来事の謎が、どう関わって、どんな結末を迎えるのか気になる。
書き出しは、遠景でため息、近景で仕事に疲れた、心情で「なんで僕は、こうやって生きてるんだろう?」と自問を投げかけている。同時に、読み手にも届けられ、どうしてだろうと共感につながっていく。
とにかく主人公は毎日仕事で疲れ果てて、かわいそうな状況にある。仕事のあとのビールを飲んでいるところは、いいなと思うかもしれない。最近はビールを飲まない傾向にあるし、そもそも値段が高くなっている。そんな中で、主人公は買って飲んでいる。でも、今ではすっかり、『辛さ』『苦しさ』『むなしさ』を失せさせる道具になってしまった。とあり、ますますもって悲しく思えてくる。そんなところに読み手は共感していく。
ただ、お酒を飲まなかったり十代の若者に関しては、ビールには共感しづらいかもしれない。
読みやすい文章。改行され、一文も句読点を用いて短くし、短文と長文を使ってリズムよく、感情を揺さぶってくる。短い文や省略された表現が多く、主人公の疲れや無力感を強調されている。
内省的で感情的な描写も多く、過去と現在の対比が効果的に使われているところが物語に深みを与えていい。
とにかく、主人公の感情がリアルに伝わってくる。
五感の描写は豊かで、視覚的な描写では、テレビの画面に映る短冊や部屋の様子、聴覚は、缶ビールを開ける音やテレビの音、味覚ではビールの味など。
嗅覚によるビールの匂いの描写や、缶ビールを掴んだときの触感、冷たさなどを取り入れると、より豊かになったと思う。
主人公の弱みは、仕事に追われる日々に疲れ果て、人生に疑問を感じていること。昔の夢を思い出し、現在の自分とのギャップに苦しんでいる。感情を抑え込んでしまい、涙を流すことができないところにある。
仕事に疲れて、感覚が麻痺しているような感じから、子供のころみた夢を叶えることが出来ずにおとなになってしまったことに対する感情を表に出すことなく抑えてしまう展開は、もうすこし主人公の背景が具体的に描かれていると物語に感情移入しやすかったかもしれない。
そうしてないのは、読者それぞれの背景を頼りにしているのかもしれない。それでも、主人公の中での過去回想、たとえば子供のときは野球に打ち込んできたけれども、練習中の怪我をして野球の道を絶たれたとか、ある程度人数が必要だが、少子化で子供が足らずに野球ができなかったとか、家の都合、本人の実力や努力を怠ったことなど、途中で諦めてしまったことを感じさせるなにか書かれていると、感情移入がよりできた気もする。
野球に限らず、何かしら夢を見て、その夢を叶えた大人は、残念ながら多くはないのが現実だろう。
でもそれは、一つの夢を見ている場合だと思う。あれもこれもそれもどれもと、沢山の夢を思い描いておいて、その夢を一つずつ叶えていこうと生きている人は、全部は叶えることが出来なかったとしても、なにかしらは叶えることができるはずなので、絶望に沈むことはなくなる。
夢をみるときは、一つだけでなく、たくさん見たほうがいい。そして、大人になったらやろうと先延ばしせず、今日、たった今からやりたいことを一つずつやっていくという気持ちで生きることが大切だということに、本作品は考えさせてくれる。夢には消費期限があるから。
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