恋の行方は

恋の行方は

作者 ナナシリア

https://kakuyomu.jp/works/16817330665693192889


 主人公が自分の恋愛観と向き合い、それを物語にすることを決意する話。


 現代ドラマ。

 十代の若者が、自分たちの世代の恋愛を描こうと決意する様子がまっすぐに描かれている姿に魅せつけられる。


 主人公は、カクヨムユーザー。一人称、俺で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。


 女性神話の中心軌道に沿って書かれている。

 主人公は、せっかちで好きになってもすぐ告白する恋愛ベタだった。 

 自分がこれまで書いてきた恋愛ものの作品について考え、自分が恋をしたことがあるのか、恋と呼べるものだったのかを自問する。

 彼は自分が恋愛が下手であると認め、書いてきた作品が現実の恋愛とは異なっているのではと気づく。恋とはなにか。なにを恋と呼べばいいのか。それを書けばいいのではないのかとたどり着き、中高生のリアルな心情をつづるテーマと一致しており、自分の感情を表現することは自分にしかできないと理解し、「新規小説作成」のボタンを押すのだった。


 パソコンからカクヨムを開き手を止める謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どんな解決をするのか気になる。


 書き出しは、主人公の自問から始まっている。

 遠景で、カクヨム画面で手を止める様子を描き、近景でこれまでのテーマは中高生のリアルな心情をつづるだったと振り返り、心情で「俺は恋をしたことがあったのだろうか」と投げかける。

 好きになったことはあっても、恋だったのか、恋愛をしてきたのかと。主人公の自問は、同時に読者への自問となり、共感させていく。


 長くならないよう改行し、一文も短くしている。会話はないが、口語的で読みやすく、短文と長文を使ってテンポよくし、感情を揺さぶっている。

 物語は主に主人公の内面的な葛藤を描いているため、五感の描写は少ない。主人公がパソコンを開く、手を止める、頭を殴られたような衝撃を受けるなどの行動は、感情の変化を視覚的に示している。


 主人公の最大の弱点は、自分が恋愛が下手であるという自己認識に尽きる。

 これは彼が自分の作品に対する疑問を持つきっかけとなり、物語を進行させる重要な要素となっている。

 一人称の視点で書かれており、主人公の心情や思考を直接的に描き、自己反省や自問自答が多く、内面的な葛藤を丁寧に深く掘り下げているところが良い。

 おかげで、読み手に深い共感をもたらしているだろう。

 カクヨム甲子園の読者は、作者と同じ十代の若者であり、同じくお話づくりが好きな人達ばかり。主人公と重なる部分は多い。

 主人公が自分の感情を直接表現することを決意するラストは、希望と前向きなメッセージを与えていて、読後がいい。


 主に主人公の思考を描いているため、場面描写や他のキャラクターの存在は少なく、会話もない。友達からの指摘を受けたり、カクヨムユーザーからのコメントやレビュー、PVなどの反応からどう受け取ったのかといった視点、同年代の人が書いている作品との比較など書き加えると、作品に深みが増すかもしれないと妄想する。


 読後タイトルを見て、主人公自身の恋愛観については、どう考えどのように変化したのだろう。なにを恋と呼べばいいのかを迷いながら、リアルで恋をしていくかもしれない。その体験が、作品づくりにも生かされていくことだってあり得るな、と思った。

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