蒼はピアスを付けたい

蒼はピアスを付けたい

作者 粟野蒼天

https://kakuyomu.jp/works/16817330660455120999


 主人公は彼の恋人である蒼のマンションを訪ねて誕生日プレゼントにピアスを贈る、普通の日常を過ごす話。


 文章の書き方云々は気にしない。

 現代ドラマ。

 BLもので、彼らにとって普通の日常が描かれている。

 もう少し盛り上がりが欲しくなる。


 主人公は、男。一人称、俺で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。


 女性神話の中心軌道に沿って書かれている。

 主人公は、恋人の蒼が、雫の形をした青琥珀のピアスをほしそうに見ていたのを知っている。

 蒼のマンションを訪れ、ハグし、風呂に入っている間に用意してもらった食事を一緒に食べ、ともに片付け、お気に入りの映画を二人で見て過ごす。主人公が蒼に誕生日プレゼントとして、ピアスを贈る。つける彼に似合ったるよと声をかけ、キスし、お礼をのべてもう一度重ねる。この幸せが永遠に続くことを願いながら。


 紙袋を抱え、ある部屋の前で足を止める謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どんな結末を迎えるのか興味が湧いた。

 遠景で、マンションのある部屋の前という場所を描き、近景で扉をノックすると、中から出てきた蒼からリンスの匂いがする様子を描き、心情で「風呂上がりらしい」と述べられていて、思わずなるほどと共感する。

 

 本作は、描写がしっかり書かれているのが特徴。日常の何気ない瞬間を大切に描いている。会話は自然で、キャラクターの感情や関係性がよく表現されている。

 長い文にならず改行がされている。一文が長いところが目立つものの、長文と短文を使いながらリズムよくして感情を揺さぶってくる。ときに口語的で、会話を挟み、セリフからは登場人物の性格が感じられる。

 五感の描写にこだわりがあり、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感を駆使して描かれている。例えば、ドアをノックする音、リンスの匂い、ふわふわ卵にデミグラスソースがかかったオムライスの美味しさ、ピアスの美しさ、唇の感触などが具体的に描かれている。


 主人公の弱みは、蒼に対する深い愛情と依存感。

 彼は蒼との時間を大切にし、彼女の幸せを第一に考えている。


 主人公の性格や価値観、直面している問題や考え方から、主人公が蒼を大切する行動をとっているので、恋人と一緒にいる時間を過ごしにきたのかなとはわかる。ただ、どんな話なのかしらんと首を傾げていたときに、蒼が欲しがっていたものだとピアスを渡し、誕生日プレゼントだという展開は、そういえば紙袋を持っていたねと思い出し、以外な展開に驚くことが出来た。

 でも盛り上がりとしては弱いような、オチはないし……と、悩んでしまう。

 お話は非常によく書かれているのに、キャラクターの背景や過去のことなどがあると、深みが出たかなと、あれこれ考える。

 ただ、タイトルと同じように作品全体がとても綺麗に書かれているのが良かったなと思う。

 

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