元カノの妹になつかれた

元カノの妹になつかれた

作者 青甘(あおあま)

https://kakuyomu.jp/works/16817330661260609408


 最近振られた伊豆川優はショッピングモールで迷子になっている皇朱莉と出会い、


 文章の書き方云々は気にしない。

 現代ドラマ。

 今後、ラブコメ的に発展していくのかしらん。

 教訓もあって、良かった。


 主人公は、大学一年の伊豆川優。一人称、僕で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。


 それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。

 伊豆川は最近彼女ユレアに振られた。友人の南条ヒカルと一緒にショッピングセンターで気分転換を図っていると。迷子の中学一年生の朱莉を見つけたので助けようとする。しかし、朱莉は警戒心が強く、最初は伊豆川と話すことを拒むが、伊豆川の優しさと誠実さに触れ、徐々に心を開いていく。

 朱莉は伊豆川に、母が再婚して姉が出来たこと、その姉は優秀であり、姉の母校へ入学すると先生たちに比較されたこと、姉は積極的に話しかけてくれるし、悪い人ではないけど、関わり合いたくない。でもそう思われたくもないため、姉に頼まれて買い物に来たら迷子になってしまったと打ち明ける。

 伊豆川は、カッコいい弟の咲がいることを話し、容姿で負けているから、他のことを頑張って白い目で見られないようにしたことを話し、自分自身を他人と比較するのではなく、自分自身の価値を見つけることの大切さを朱莉に教える。

 仲良くなり、姉の名前である皇ユレアと電話番号を教えてもらう。電話をかけると、眼の前に携帯を耳に当てた元カノのユレアが立っていた。

 朱莉にお兄さんのおかげと聞いたユレアは、どちらのことか尋ね、伊豆川だと知ると、「詳しいことは後で聞きましょう」と、みんなで事情を話すためにカフェへ向かうのだった。


「そう、これはまだ寒さが残る早朝のことである」という謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どのような関わりを経て、どんな結末にたどり着くのか気になる。


 書き出しが印象的でよかった。

 まだ寒さが残る早朝ということは、これから暖かくなることを意味しているし、物語の展開もいい読後感が期待できる。

 遠景で、いつどのような状況なのかを描き、近景で初恋が終わったことを描き、心情で友人の南条ヒカルに慰められることで、共感する。読みても一緒に主人公へ、元気出してといいたくなる。

 初恋に振られて可愛そうな主人公、慰めてくれる友人がいて、落ち込む様子や、迷子をみつけて助けようとする様子に、共感してしまう。


 一人称視点で語られ、直接的で親しみやすい。会話は自然でリアル、キャラクターたちの人間性と感情が強調されてる。

 文章の一文が長く、句点がなく、読点な少ない。長い会話文で書かれたところがある。ときに口語的で、地の文の間に会話文をはさんだり、短文と長文のリズムのいい書き方のおかげで、概ね読みやすい。会話が自然で、キャラクターの個性がよく表現されている。キャラクターの感情が丁寧に描かれているため、共感しやすい。

 優が朱莉を励ます場面は、実に心温まる。

 ここは、いいところだった。


 主人公の弱みは、初恋の終わりに対する深い悲しみと落ち込み。他人を助けたいという強い思いが、時に無理をしてしまうこと。

 その弱みから、本作の面白い展開が起きているのだ。


 主人公の目標、性格や価値観、過去にどのような行動を取ったか、直面している問題や葛藤を描写されているので、読者は主人公が迷子の彼女を助け、彼女は警戒を解いて姉に連絡するという流れになるのは予想しやすい。

 朱莉の姉が元カノであることが判明する展開は、面白かった。ただ、彼女の姉が元カノだということは、タイトルから先に想像できた。


 南条ヒカルの「またか」というつぶやきは、伊豆川優が女性に対して優しく接することで、相手が彼に好意を抱くことがよくあると知っており、その状況が再び起こったことン対しての反応であろう。

 おそらく、姉のユレアと付き合っていたのも、最初の出会いで主人公の優しさに触れて付き合っていたと想像する。

 主人公は、ナンパ目的でしているわけではないし、特定の彼女に好かれたくて優しくしているわけでもない。

 カッコいい弟とは違うことをして、自分の価値を高めているだけ。

 ある意味、お人好しなのだ。

 その辺りが、元カノに振られた原因があると考える。

 喫茶店で話を聞きながら、「あなたって、いつもそれね」といいつつ、妹に「あんな男を好きになっては駄目だから」と厳しく注意するかも知れない。

 このあと、彼らはどうなるのか。

 やはり、読者の想像に委ねられているのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る