我が国の王女様は変わってる!

我が国の王女様は変わってる!

作者 そうなんです!!

https://kakuyomu.jp/works/16817330667588125248


 足を痛めた下級貴族の娘アリア・マリナーゼがオリビア王女と出会い、心配され、結婚を申し込まれる、二人は国の未来に立ち向かう決意を交わす話。


 三点リーダー云々は気にしない。

 百合的なファンタジー。

 こういう書き出しの長編を読んでみたい。

 多くの人は思うに違いない。


 主人公は、平民出の成り上がりの貴族の娘アリア・マリナーゼ。一人称、私で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。


 それぞれの人物の想いを知りながら、結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。 

 王家が主催する建国百五十九年祝いのパーティーが行われる。アリア・マリナーゼは、自分が平民出の成り上がりの貴族の娘であることから、他の貴族たちとは違うと感じている。パーティーの最中、アリアは靴が合わず足が痛くなり、会場を離れて一人でいるところをオリビア様に見つけられる。オリビア様はアリアの足を心配し、自分が次期国王だから困っている人を放ってパーティーを楽しめないといい、勉学に励んでいるアリアに、一緒に国を変えようと手を差し伸べ、アリアに一目惚れだと結婚を申し込まれる。二人は踊り、この国の未来に立ち向かっていく決意を交わすのだった。 


「道を開けなさい。オリビア様のお通りよ」の謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎がどのように関わっていきながら、どういう結末を迎えるかが気になる。

 書き出しのテンポが良い。

 まず遠景で「道を開けなさい。オリビア様のお通りだよ」と声が聞こえる。なんだろ思わせたところで、近景で、声を発したのは扉の側にいた侍女で、パーティー参加者の貴族たちの様子が描かれる。

 そのあとで、オリビア様とは何者なのかの説明が心情として語られていくことで、ふむふむなるほどとと読み手にも共感を持って落とし込んでいく。


 読者層は十代の若者だとすると、とくに女性に読んでほしいのかもしれない。日本では、世界と比較しても女性の地位は低いと言わざる得ない。もっと自由で明るく、楽しく、華やかに活躍したいと思わせてくれるような作品だと思う。

 

 五行以上の長文にならないようにしつつ、改行し、会話を挟みながら、一文は長いところもいくつかみられるものの、長文と短文を使って、文章にリズムとテンポを作っている。ときに口語的で書かれ、会話文から登場人物の性格や地位が読み取れる。

 一人称の視点、現在形で語られ、アリアの内面的な感情や思考が詳細に描かれおり、直接的な感情や緊張感を伝えている。

 視覚的描写が豊かで、オリビア様の美しさや威厳、アリアの痛みや困惑などがよく描かれている。オリビア様の力強い足音や、パーティーの賑やかな雰囲気など、聴覚的な描写も効果的に書かれているところもいい。


 アリアの弱みは、自分が平民出の成り上がりの貴族の娘であること、女性としての地位の低さによる無力感。

 また、彼女は自分が女性であるために父の地位を継ぐことができず、そのことに深いフラストレーションを感じている。

 父親思いであり尊敬をしているが、女は子供を設けるためのものであり、家を継げないことで力になれない。

 そういうところがきちんと描かれているからこそ、面白いドラマが描けるのだろう。


 物語の魅力は、アリアとオリビア様という二つの異なる背景を持つキャラクター間の緊張感と、それがどのように解消されていくかを描いているところ。アリアの内面的な葛藤や、彼女が直面する社会的問題も興味深く描かれているところがよかった。

 そうしたところが、明確に描写されているため、読者は次にどんな展開が来るのか予測しやすくなる。身分の違う二人は仲良くなるだろうと思う。結婚を申し込まれる展開は、予想を裏切る展開だったと考えられる。

 長男ウィリアムは馬鹿だから自分が次期国王だという話がでてきたところで、予想されるかもしれないが、主人公のアリアともども、驚きと興奮を覚える。

 身分が違うが、同じ悩みを持つ同性の二人。国の未来を変えていこうとする構図を見せて終わることで、二人に頑張っていってほしいと思わせてくれて終わるため、読後感がすばらしい。

 

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