明るかった樹の下で
明るかった樹の下で
作者 ねくしあ@カク甲/こえけん準備中!
https://kakuyomu.jp/works/16817330648834110585
明日はじまる戦争で愛すべき場所もなくなるため、子供の時から大きな木の下で過ごすのが好きで、思い出を懐かしく振り返り、残された時間を大切に過ごす話。
実に物悲しい。
大きな力の前では、大切なものさえ守れない無力さを感じる。
主人公は女性。一人称、私で書かれた文体。自分語りの実況中継で、現在過去未来の順に綴られている。
女性神話の就寝軌道に沿って書かれている。
主人公が子供よりもずっと前から、草原には大きな木が生えており、その下で過ごすのが好きだった。
何十年も前から、張れた日には必ずこの場所へやってきては、過ごす時間を楽しみにしてきた。いろいろな人と一緒に来た。しかし、木は年老いて葉が増え、主人公も一人で過ごす時間が増えた。過去の思い出を振り返り、懐かしく思い、残された時間を大切に過ごす。明日には戦争が始まり、愛する場所もなくなることを知っているから。
好きな場所と主人公には、どんな関わりがあり、どんな結末を迎えるのかが気になる。
詩的で感情的な文体で書かれており、五感を意識した豊かな描写で主人公の感情と経験を、読者に伝えている。
また、現在形で書かれており、それにより読者は主人公の経験をリアルタイムで感じられる。
主人公にとって大切で好きな場所である、広い草原に生えた大きな木があることの特別さ、その木の下で過ごしてきた主人公の豊かの風景描写と回想から感じられる人間味、かつてはいろいろな人と過ごした場所だったけれどいまはその人達の姿もないといった孤独からかわいそうに思えるところに、読者は共感を感じる。
主人公に弱みがあるとするなら、何十年も共に過ごしてきたことが伺えるので、大きな木とともに年令を重ね、老いているのだろう。
明日はじまる戦争を止める力も、主人公にはないだろうし、抵抗するだけの若さと気概も、いまはもうないだろう。
物語のラストで明かされる戦争は、読者には予想外。驚きと緊張が読者を引き付け、悲しみが込み上がってくる。
主人公がなぜ戦争がはじまることをしっているのか、そのあたりがはっきりすると、スッキリするかもしれない。あるいは、三人称で書かれていれば、最後に神視点のモノローグを添える方法もできたのではと考える。
おそらく、主人公は、ニュースで戦争が明日はじまることを知って、自分の好きな場所を最後に訪れたのだろう。
戦争に限らず、自分がお気に入りだった場所に、家やマンションが建つとか、風景が変わってしまうとか、そういうことはある。
子供のときに好きだったところが、大きくなって見に来たら、みる影もなくなっていたということは珍しくない。
ちょっとした短い話だけれども、本作はそんな思い出を追体験させてくれる。
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