隣の席の石黒さんは美少女だ。しかし、変わっている
隣の席の石黒さんは美少女だ。しかし、変わっている
作者 タカ 536号機
https://kakuyomu.jp/works/16818093081207772390
自分の気持ちを隠している翠は、友近が石黒さんに告白された話を聞く。しかし石黒さんは自分の感情を率直に表現しただけと答え付き合う気はないと知り、友近は橋本に告白して付き合うことになる。触発された翠も、自分の感情を石黒さんに伝える話。
文章の書き方云々は気にしない。
いわゆるラブコメかしらん。
とてもユニークで面白い。
主人公は男子学生の翠。一人称、僕で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。カジュアルであり、現代的で日常的な会話や思考で展開されている。
女性神話の中心軌道に沿って書かれている。
主人公の翠は、隣の席に座る美少女、石黒雲雀が好きである。
石黒さんは非常に個性的で、彼女の行動や思考は一般的なものとは異なりユニーク。突然、将来自分の力で月に到達し、そこに住むと宣言し、それを達成するために水泳を辞めてバスケ部に入り、ジャンプ力を高めることに専念する。また、友近に対して告白しますが、彼と付き合うことが目的ではなく、自分の気持ちを伝えることだった。
彼女のおかげで、友近は橋本に告白する決意を固め、思いをつげて付き合うこととなった。
「気持ちは伝えておくに限るでしょ? いつもボサーと生きてる翠くんも見習ってみてよ」彼女に言われ、放っておくと平気で海外とかなんなら宇宙とか行きそうだからと、「うん、石黒さんのそういう所が僕は好きだよ」と気持ちを告げる。
どういうことかと、彼女に何度も問い詰められるが、「気持ちを伝えただけ」と答えて乗り切るのだった。
正真正銘の美少女である石黒雲雀の謎と、主人公におこる出来事の謎が、どう関わっていき、どんな結末を迎えるのかに期待する。
冒頭の書き出しは、石黒雲雀がどういう子なのかの説明から始まっている。
キャラクターの描写がくわしく、石黒さんの個性的な性格が鮮明で、全体を通して彼女の行動や思考が描かれている。
彼女の行動は変わっている、とあるけれども、他人から見てわからなくとも、本人にとっては「月に住むと決めたのはいいが、娯楽が少ないと感じたから、かねてより楽しみにしていた重力の小さな月での運動をより楽しむ為に、今からジャンプ力を高める事が必要だと思ったからだ」と、一本筋の通った考えがあっての行動なので、なんらおかしくない。
おかしくないのだけれども、ジャンプ力を高めるための練習が、ダンクの練習なのか、というところに疑問符がつくだろうし、月に住むためには宇宙飛行士になることが、いまのところ最短距離の考えだと思えるので、将来のことを考えて水泳をやめなくてもよかったのでは、と考えてしまう。
他にも彼女の奇行は絶えず、いろいろありそうなので、他にはどんなユニークな行動をするのか、非常に興味が湧く。
といった具合に、彼女には誰もがうらやむ資質があり、人間味があふれ、ちょっと残念でかわいそうな感じもあるキャラクターとして描かれているので、共感が持てる。
一日中納豆を混ぜたらどうなるのか気になって、実行するところは、すごいと思う。気になったことがあれば、自分で考え行動し、調べる姿は大切なことだと思う。
ネットで簡単に調べられる時代だけれども、ネットにあることが必ずしも正しいわけではない。他人の意見に惑わされず、自分の意見や考えを持って行動する。それができるのが、石黒雲雀という子の魅力だろう。
研究者タイプだと思われる。
そうでない人からすれば、奇異にみられるのは仕方ないかもしれない。
好きなら好きと言えない心に人は常に苦しんできたのが、恋だと思う。
それを彼女は、「気持ちは伝えられる時に伝えておくべきだと思うんだよ。いつ死んでも後悔しない為にね。ってなことに、つい先日思い立って告白することにしたの」と、思い立って行動したのだ。
子供の時を思い出してほしい。
だれもが素直に、あれが好き、これがほしい、それ食べたいと、素直に求めていた。
成長とともに、周囲の目を気にするようになり、恥ずかしさや遠慮を覚え、良識と常識を身に着けては、素直さを表に出せなくなっていく。
彼女は、そんな当たり前を疑うことができる人なのだ。
彼女に影響されて、友近は好きな人、橋本さんに告白し、付き合うこととなる。
恋のキューピッドになれて照れる彼女は、付き合うつもりははじめから無かったと言っている。
気持ちは伝えておくに限るという考え。
「付き合う付き合わないはさて置き、気持ちさえも伝えられないまま人生終わっちゃうかもだよ。嫌でしょ? これ、変人すぎて恋人が出来ない私からのアドバイスね」
どうしたいとかどうなりたいとかよりも、「自分はこう思う」「こういう気持ち」ということを伝えることに、臆病になる必要はない事に気づかせてくれたのだ。
人はエスパーではない。
察しろとか、わかるだろと腹を立てたところで、相手の官衙や心などわかるわけがない。無理なものは無理なのだ。
だけど、主人公は彼女とはちがう思考、一般的な考えを持っているので、「失恋をして辛いはずなのに友近を祝福するどころか、僕のことすら気にかけるだなんて」と、強がっているように見えている。
彼女のことは、理解はできていないと思う。
だから「やはり石黒さんは変わっている」と思うのだけれども、感情の部分ではちがう気持ちがあるから、
「でも、まぁ、『うん、石黒さんのそういう所が僕は好きだよ』」と、彼女に影響されて、気持ちを伝えるのだ。
主人公は頭の中、理性の部分では、彼女は変わっているという認識だけれども、心の中、感情の部分ではこんな彼女のことが好きに思っている。
ひょっとすると、本人も、まだ自覚がないのかもしれない。
読後にタイトルを読みながら、きっと石黒さんには、主人公は変わった子だと見えているのかもしれないと思った。
周囲から変わっていると言われていることを、石黒さん自身は知っている。隣の席の主人公は、だから滅多に話しかけてこない。それなのに、「うん、石黒さんのそういう所が僕は好きだよ」といってくるから、「どうゆうこと?」と聞き返したくなっても仕方ない。
とにかく本作の良さは、非常にユニークで、石黒さんのキャラクターが鮮やかで魅力的なところ。とても面白かった。
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