最終話:受け継がれる趣味と家族の絆

孫の翔太がプラモデルを完成させた日以来、浩一と翔太は頻繁にプラモデルを組み立てるようになった。浩一は、昔のように部品がうまく組み合わさらないと感じることはなく、翔太と一緒に作業することで、新たな楽しみを見つけていた。


ある日、浩一は昔のアルバムを整理していた。そこには、若い頃の自分や家族の写真がたくさん詰まっていた。その中に一枚、父親がプラモデルを組み立てている写真があった。浩一の父もまた、プラモデルが好きで、彼にその楽しみを教えてくれたのだ。父が亡くなってからは、浩一自身もその趣味を忘れがちだったが、翔太と共に過ごす時間が再びその楽しみを蘇らせてくれた。


「翔太、おじいちゃんが君くらいの時に、おじいちゃんのおじいちゃんもプラモデルを作ってたんだよ。」


翔太は目を輝かせながら、「本当?じゃあ、僕たち三代続けてプラモデルを作っているんだね!」と興奮気味に答えた。


次の週末、浩一と翔太はさらに大きなプロジェクトに挑戦することに決めた。それは、一台の戦艦モデルで、部品数も多く、組み立てるのに数週間はかかると予想されるものだった。二人は一緒に部品を選び、設計図を広げて計画を立てた。


作業が進むにつれて、翔太はますますプラモデルに夢中になり、細かなディテールにまでこだわるようになった。浩一もその情熱に引き込まれ、二人の間には言葉にできない特別な絆が生まれていった。


ある日、浩一は昔の友人たちと集まり、プラモデルの話をすると、その中の一人が驚きの提案をした。「近所の模型愛好家たちで、展示会を開いてみないか?みんなの作品を持ち寄って、交流を深めよう。」


その提案に賛成した浩一は、翔太と一緒に展示会の準備を始めた。翔太は自分が作った作品を自慢げに見せ、浩一も昔の完成したプラモデルを持ち出して一緒に展示することにした。


展示会の日、地元の人々が集まり、たくさんのプラモデルが並べられた。子供たちも大人たちも、作品を見ながら楽しそうに話し、交流を深めた。翔太は自分の作品について説明するたびに、自信を持ち、成長していることがわかった。


その日の夕方、展示会が無事に終了し、浩一と翔太は家に帰った。部屋に戻ると、二人は疲れながらも満足感に包まれていた。翔太は、「おじいちゃん、次は何を作ろうか?」と目を輝かせて言った。


浩一は微笑んで答えた。「次は、君が選んでいいよ。君の好きなものを一緒に作ろう。」


翔太は考え込みながら、「じゃあ、次はおじいちゃんの思い出のプラモデルを一緒に作ろうよ。おじいちゃんが一番好きだったやつ。」


浩一は心から嬉しくなり、「それはいいアイデアだね。おじいちゃんの思い出の中には、特別なプラモデルがたくさんあるから、君にその一つ一つを教えてあげたい。」と答えた。


こうして、浩一と翔太のプラモデル作りの旅は続いていった。時間を共有し、共に学び、成長することで、二人の絆はますます深まっていった。家族の歴史と共に受け継がれる趣味が、次の世代へと引き継がれていく中で、浩一は孫との特別な時間を大切にし、心から幸せを感じていた。


そして、いつか翔太が自分の子供たちに、このプラモデルの楽しさを伝える日が来ることを願いながら、浩一は新たな作品に取り組む日々を楽しみ続けたのだった。

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受け継がれるプラモデルの絆 O.K @kenken1111

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