楓、起動っ!

光が収まり、辺りを見渡すと楓の横に飾られていた他の美プラが俺と同じ大きさで立っていた。

さらに色んな物がやけに大きく見える。

それは物だけでなく、レーニアすらも巨人に見えるほどだ。

これは一体どういう事だ……っ!?


「どうやら成功のようですね。自分の手を見てみてください。」


「手を……?」


言われて自分の手を見ると、それは俺の手ではなくアーマード・シスターズの楓の手だった!

ま……、マジか……っ!?


試しに手や足を動かしてみると普通に動くっ!

そして歩こうとすると後ろに転んでしまった。


「あだ……っ!くそ、バランスが取れねえ……っ!?」


「それはそうですよ、だって背中にそんな大きな物を背負っていたら転ぶに決まってるじゃないですか……。」


「大きな物……?」


不思議に思いながら後ろを見ると、スタビライザー付きのバックパックが付いていた。

これくらい、楓なら飛べばなんとかなるっ!

俺は起き上がると飛ぶ体勢へと入った。


「わあ……っ!?拓海さん待ってくださいっ!!言っておきますけど飛べませんよっ!?」


「そうなのか……?」


「だって、その体は"おもちゃの体"ですよ?おもちゃが飛べますか?」


「……無理だな。」


なるほど、楓が"飛べる"というのはと言う訳で、実際にプラモが単体で飛べる訳では無い。

このまま飛ぼうとしても棚から落ちて壊れるのがオチか……。

ん……?まてよ、と言うことは……。


「じゃあ、レーザーソードやレーザーライフルも使えないって事か……っ!?」


「そうなりますね、使えませんね。だって、おもちゃにそんな機能は付いてないですよね?」


た……、確かに……。

レーザーソードは青いクリアパーツの刃を付けることで再現している訳だし、レーザーライフルに至っては弾が出るわけではない。

じゃあ、プラズマナックルも使えないのか……っ!?


「武器は……、武器はどうしろと言うんだ……。」


俺は棚の上で頭を抱えていた……。

楓の武装が一切使えないとは……!


「何か実体剣みたいなのは無いんですか?」


「一応はある……。この楓の武器では無いが……。」


俺は隣に飾られていた別の美プラから片手剣と盾を抜き取ると、それを装備した。


「おお!拓海さん決まってますねっ!」


「そ、そうか……?ところで、バックパックや楓の武器はどうすればいい?置いていったほうがいいだろうか……?」


「その必要はありませんよ。ステータスオープンと言ってみてください。」


「分かった、ステータスオープン。」


俺がそう言うと、目の前に青い半透明のウインドウが現れた!

うお……っ!?本当にこういうの出るんだ……っ!?


「ステータス画面を開いたら左の方に鞄のマークがありませんか?」


「鞄のマーク……?ああ、これか。」


レーニアに言われ、左の方を見ていると鞄のマークが確かにあった。


「それを押すとアイテムボックスとなっています。その中に使わない武器やアイテムを仕舞っておけますよ。」


「これは便利だな!」


俺は早速アイテムボックスにレーザーソード、レーザーライフル、大口径高エネルギーキャノンをしまい込んだ。


さらにステータスをよく見ると、攻撃、防御、スピードという欄があり、その3つの所にLv1という文字麻とNEXT.100Ptと言う数字が書かれていた。

そして、別のところには大きく0Ptと書かれている。

なんだこれ……?


「アイテムを仕舞いましたか?それではウインドウの右上の☒ボタンを押してウインドウを閉じてください。いよいよおもちゃ対戦の会場に向かいますよっ!」


「え?あ、待ってくれっ!」


レーニアを制するとアーマード・シスターズのオプションパーツや他のアーマード・シスターズの体に付いている使えそうなパーツ、さらに他のロボットからも使えそうなパーツを取り外していく。


(皆のパーツを借りる……。すまないが俺に力を貸してくれ……っ!)


俺はそう思いながらアイテムボックスへと皆のパーツを仕舞っていく。


「よし……っ!準備出来たぞっ!」


最後にアイテムウインドウの☒ボタンを押し、ステータスを閉じるとレーニアに準備が整ったことを伝えた。


「では、行きましょうっ!!」


レーニアは俺の体を両手で包み込むと、俺達の体は眩い光に包まれ、何処かへと消えた。



ようやく光が消え、目を開けるとそこは見ず知らずの場所だった。


「どこだここは……?」


その場所は見た目にして何処かのドームのような大きな円状の広間で、そこには数え切れないくらいの沢山のおもちゃ達の姿があった。


そのおもちゃ達は、縫いぐるみから人形、さらにブロックや飛行機、さらには大きなトラックのおもちゃまでと見た目や形、さらにサイズまでもがバラバラのおもちゃ達だった。


『拓海さん、驚きましたか?ここは拓海さんが住んでいたところではなく、神界という異なる世界です。ここでおもちゃ対戦が行われます!』


周囲に戸惑っていると、突然どこからともなくレーニアの声が聞こえてきた!

俺がいた所とは異なる世界と言うことは、一応異世界と言うことになるのだろうか……?


「レーニア……?どこにいるんだ……っ!?」


『私はあなたの中にいますよ!』


「俺の中に……っ!?」


どういう事だ……っ!?

そう言えば、あの光に包まれてからというもの、レーニアの姿が見えない。


『最初に言いましたが、これは通称"神ブンドド"です。それぞれのおもちゃにそれぞれの神様たちが宿って戦うんです。ですが、この体には拓海さんの魂が宿っています。ですから私はサポートとして拓海さんを支援しますっ!』


なるほど、本来なら神様たちがおもちゃに乗り移って戦うということなのか……。


「それはいいが、まさかここで一斉に戦うのか……?」


『まさか、戦闘フィールドは別のところで一対一で戦います。』


なるほど、バトルロワイヤルではないのか……。

それを聞いて少しはホッとした。


「戦いに際して注意することは何かあるのか?」


『ルールは相手を倒せば勝ちです。ですが、それぞれの神様たちは"神スキル"という固有スキルを一つ発動させてきます。』


「神スキル……?」


『そうです!火の神様なら炎系、水の神様なら水系をといった感じで、それぞれの固有スキルを使ってきます!』


炎や水か……、強そうな神様にはそれ相応の神スキルがあると言うことか……。


「レーニアにも何か神スキルがあるのか?」


『勿論ありますよっ!私の神スキルは「リペア」ですっ!受けたダメージを全て回復出来ますよっ!あ、でも神スキルは一度の戦闘で一回しか使えませんから気を付けてくださいっ!』


レーニアのスキルはリペアか……。

攻撃系のスキルではないようだが、回復系は素直にありがたいかもしれないな。


「ところで、負けたらどうなるんだ?」


『負けたら勿論死神が拓海さんの魂を迎えに来ます!今は私のパートナーと言うことであの世に連れて行くのを待ってもらっているんです。』


負けたら即あの世行きなのか……。

これは何が何でも勝たなければいけないらしい。


ーあーあー!皆様方お待たせ致しましたっ!いよいよ今年も神様ゲームの季節がやって来ましたっ!今年はおもちゃの神様こと、女神レーニア様ご考案のおもちゃ対戦ですっ!優勝者には全知全能の神がどんな願いでも一つだけ叶えて下さいますっ!それではおもちゃ対戦、通称神ブンドドのスタートですっ!!ー


突然スピーカーのようなものが現れ、そこから何者かの声が聞こえてきたかと思ったら俺の体が光に包まれ始めた!


「な、何だこれは……っ!?」


『拓海さん!いよいよ神ブンドドの始まりですよっ!頑張って勝ちましょうっ!!』


そして、俺の体が眩いばかりの光りに包まれ、気がつくと先ほどとは違う違う所に立っていた!

そして、戸惑う俺の前には一つの凧が浮かんでいたのだった……っ!



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