おもちゃ対戦

ノン・タロー

お気の毒ですが、あなたは死にました!

「は……!は……!は……っ!」


俺「芳乃よしの 拓海たくみ」は人が混み合う週末の夜の街をとある場所へと向かって走っていた。

なぜ急いでいるのかと言うと、今日は彼女である「佐倉さくら 涼香りょうか」とのデートの約束をしていたのだが、こんな日に限ってクソ上司が仕事を山程出しやがる……っ!

こっちは予定があるっつうのに……っ!!


しかし、急いでいる時に限って信号が目の前で赤になったりするのだ。

勿論今回も例に漏れず、横断歩道の信号が赤へと変わってしまった!


(クソ……っ!なんてこった……っ!こっちは時間がねえっつうのに……っ!!)


俺は恨めしそうに目の前の信号を睨むが、それで信号が変わるはずもなく、足踏みをしながら信号が変わるのを待つ。


すると、俺が通ろうとしていた所とは別の横断歩道の信号が青へと変わる。

早く変われと思いながら青になっているその信号を見ていると、一人の高校生くらいの女の子がスマホを見ながら横断歩道を歩いていた。

それだけなら歩きスマホは危ないぞ、だけで済むのだが、そうはならなかった。


強引に信号無視をして直進して来たきた車が猛スピードでその女子高生へと迫っていた……っ!


「危ない……っ!!」


気がつくと俺は叫びながら女子高生の元へと走っていたっ!

全力で走った俺は彼女を突き飛ばしトラックから救うことに成功する!

だか……、俺はトラックに轢かれたのか、はねられた衝撃で意識を失った……。



「……あれ?俺はいったい。」


しばらくして気がついた俺はおかしなものを見ていた。

それは血に濡れたアスファルト、何かにぶつかったのか、前がヘコんだトラック、顔面蒼白となっている女子高生。

良かった、あの子は無事だったんだ。

だが、それとはもう一つ気になるものがある。

それは、人集りになっているところだ。

何かあったのだろうか……?

近付いてみると、そこには俺が血を流して倒れていたっ!


「うぇ……っ!?なんで俺が倒れてるの……っ!?」


しかも、手や脚が変な方向に曲がってるし、顔なんか見られたものじゃない。

何がなんだが分からなかった……!

だが、よく見れば俺の体は宙に浮いているし、どこか体も透けている……。

もしかして俺……、死んだ……?


「マジですかーーーー……っ!?」


え……?ちょ……っ!?俺これからデートなんですけど……っ!?


「何ということでしょう……、お気の毒ですが、あなたは死んでしまいました……。」


状況が掴めずにいると、どこからともなく若い女性の声が聞こえてきた。

一体どこからだ……っ!?

辺りを見渡すが、誰もいない。


「どこを見ているのですか?」


どうやら、声は上から聞こえているようだ、俺は上を見上げると、そこには女の子の太ももと白いパンツが見えた……。

……パンツ?


「ちょ……っ!あなたは何処を見ているのですかっ!!」


話しかけてきた人物はスカートを手で押さえながら顔を赤くした女の人が降りてきた。


その女の人は青い髪のロングヘアーで見た目にして20代くらいだろうか、綺麗な女性だった。

だが、気になる点がある、それは彼女もまた宙に浮いていると言うことだっ!


「あなたは誰ですか?白いパンツの方。」


「パンツって言わないでくださいっ!!私はレーニアという女神ですっ!!」


「女神様……、ですか?その自称女神様が俺に何の御用ですか?」


「自称ではありませんっ!そんな事を言うと生き返らせてあげませんよっ!?」


なんと……っ!俺を生きてられてくれるとな……っ!?


「女神レーニア様、御無礼をお許しください。」


「分かればいいのです!」


俺は掌を返すように深深と頭を下げると、レーニアはご満悦な表情をしながら頷いていた。


「それで、俺を生き返らせて貰えるんですよね……?」


「勿論です……!と言いたいところなのですが、それにはとあるゲームで貴方が勝たなければいけないのです。」


「ゲーム……?」


「そうです!毎年色んな神様達が集まって行う神様ゲームですっ!」


「へ〜……。」


「そして、今年行われるのは"おもちゃ対戦"っ!通称神ブンドドですっ!」


「ほ〜……。」


「……信じていませんね?」


「いや、信じていないって言うか、神様ってヤツも案外暇なんだなって……。」


「なんですかっ!?私の考えたゲームに文句があるんですかっ!?」


俺の言葉に対し、レーニアは血相を変えて食って掛かってきた!

て言うか、お前が考えたんかいっ!


「ところで、色んな神様が集まるって言ってたけど、レーニアは何の神様なんだ?」


「レーニア"様"ですっ!」


「……その、レーニア"様"は。」


「よくぞ聞いてくれましたっ!私はおもちゃの神様ですっ!」


レーニアは自慢げに胸を反らすと、その胸がプルンと揺れた。

見事な乳揺れだ。

それにしても、おもちゃの神様だからおもちゃ対戦なのか、なるほど。


「それで、そのゲームに勝てば生き返らせてもらいると言っていたけど、一回勝てばいいのか?」


「一回ではありませんよ?優勝すれば願いを叶えてあげることができるのですっ!」


「えぇ〜、優勝とかメンドイ〜……。」


「嫌ならこのまま死神に引き渡します。」


「頑張らせて頂きますっ!!」


「分かればいいのです!」


くそ……!文字通り命が掛かっているので迂闊には逆らえない……っ!


「それで、どう戦えばいいんだ?」


「はい、今の拓海さんは霊体なので、体がないと戦えません。ですからおもちゃの体を手に入れますよっ!と言う訳で拓海さんのお宅に行きましょうっ!」


「なんで俺の家なんですか?」


「何でって、他の人のおもちゃを使っては泥棒になりますからね。それに、拓海さんはどんなおもちゃでもいいんですか?いいのでしたら、ゴミ捨て場に落ちているおもちゃで……。」


「俺の家でお願いしますっ!!」


どんな物かも分からない身体で戦うなんて無茶にも程があるっ!

それならまだ俺の家にあるヤツのほうがまだいい!


「では、行きますよっ!」


「うわぁぁーー……っ!?」


レーニアは俺の手を掴むと、俺の家にある方向へと飛んでいったっ!



レーニアに掴まれて空を飛ぶこと数秒、文字通りあっという間に俺の家へとやって来た。

俺の家は会社の独身寮で、1DKとなっているが、今は誰もいないため明かりはついておらず、部屋の中は真っ暗だ。

ていうか、何でレーニアは俺の家の場所を知っているんだろう……?


「へぇ〜、拓海さんの部屋におもちゃがいっぱいあるんですね〜……。」


「これはおもちゃというより、プラモだな。」


レーニアの言う通り、俺の部屋の一室には趣味で作ったプラモが所狭しと並べられ、その種類は様々でロボットから戦艦、さらには美プラまで色んな物が沢山飾られている。


「それで、拓海さんはどれにするんですか?」


どれに……、か。

つまりはこれらのプラモから一つを俺の体として選んで、戦えってことだよな?

"対戦"と言っていたからそういう事だろう。


どれにする……?ロボットか、戦艦か、それとも美プラ……?


「……よしっ!決めたこれだっ!!レーニア俺はこれにするっ!!」


俺は悩んだ末、棚に飾られている一体の美プラを指差したっ!

それはアーマード・シスターズというシリーズの「楓」というキャラクターだ。


アーマード・シスターズは女の子の体にパーツを組み替えて装甲パーツを着せて武装させるという人気のガールズプラモで、楓はその中で人気のキャラクターだ。


特徴としては赤色のショートヘアー、さらに頭についた猫耳パーツが特徴的で、さらに脚、腕、肩、胸に装甲パーツが付けられ、腹や二の腕、太腿は装甲はなく、肌のパーツで、腰にはスカートを履いていた。

更に下から見れば縞パンが再現されているという素敵仕様っ!


武装はレーザーソード、レーザーライフル、プラズマナックル、手持ち式の大口径高エネルギーキャノンと豊富で、オプションで背中にスタビライザーとスラスターが付いたバックパックを付けれるという、攻撃と機動性に優れる"設定"となっている。


「はあ……、それですか。分かりました。では、行きますよっ!!」


レーニアは俺と楓へと触れると何か呪文のようなものを唱え始めた……。

すると、俺の体が光り始め、気がつくと俺の魂は楓へと乗り移ったのだったっ!!



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