第12話 「時忘れの術」

 やがて、ジンは二十五歳になった。

 周りの人たちは優しい。優しすぎるほどに。


 村には、炎属性のエルフの血を薄くひくおばあさんもいた。おばあさんは「それでも、『あの噴火』以来、わたしの力も薄れたよねえ。いつか、噴火がまた近づいてきたら、わたしたちの一族の力も強まるとね、それは聞いてるけれどね」と話している。

「おばあさん。あのね」

 ジンは慎重におばあさんに言う。

「僕はエルフを『やめる』よ」

 雪がしんしんと積もる日のこと。おばあさんとジン以外に、その部屋に人の姿はない。

「『時忘れの術』というのを、ある場所の本で読んだんだ。それをかける。村人たち全員に。おばあさんにもかけるよ。そうしたら、みんな、僕の年齢が一体いくつなのか、忘れてしまうんだ」

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