第11話 人間の村

 村長という人はどこか臆病そうなおじいさんだ。

 ジンは見下すように言う。

「使えるよ。だって僕は氷属性。この村、水不足だよね。それくらいわかるさ。僕にだって」

「助かります。井戸の水がかれてしまいまして」

 村長が手をすりすりさせて願うのが腹が立つ。

 ジンは「旧友」の聖霊を呼ぶことにした。

「ネーヴェ。雨を降らせよ!!!」

 少年の声とともに現れたガラスのような馬は高くいななき、その馬の走るところ、キラキラとした雨が降る。雨は地面の枯れかけた小麦を濡らす。小麦は若返って穂をぴんとさせている。

「なんと美しい。これがエルフの魔法か」

 居合わせた人々がおおっとどよめく。

 ジンはしばらく、村長の家でお世話になったけれど、「自分の意思で」村外れに家を用意してもらった。ラキアスはいつのまにかいなくなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る