第4話 ジンではない、けれど。

 自分はジンなんて名前じゃない。

 それはわかっていた。けれど、肝心の名前が思い出せないなら仕方ない。

 ジン、というのは人間の名前だろう。ありきたりで平凡な名前。

 その後もラキアスは、二日に一回ほどこの岩の洞窟の聖地に現れ、ジンに食べ物をくれた。

 米で作った「握り飯」というものや、ホットケーキという小麦粉と卵のお菓子。ホットケーキは表面がだいぶ焦げていたけれど、とてもおいしかった。

 ジンの手のひらや頭の傷が癒えると、ラキアスはこの聖地の「隣の空間」にジンを連れて行った。

「わあ。本。本ばかりだ!」

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