第3話 卵のおかゆ

「おかゆを持ってきただけじゃ。女神であるわらわを怒鳴るな」

 ラキアスは眉をしかめて言う。恐ろしい第三の目は今はぴたりと閉じられていた。

 とてもお腹が空いていたし、喉だってまだまだ渇いていた。「おかゆ」というのは人間の食べ物なのは、人間の言葉や食べ物を描いた書物で見て知ってる。でも、受け取ってしまう。

「おいしい」

 素直に口にしていた。

 おかゆはおそらく卵が入っていた。卵をエルフは決して食べないけれど、今は「非常時」だ。自分は飢えている。

 そもそも、自分とラキアスは「人間の言葉」で話している。あの書物で書かれていた言葉だ。エルフの使う太古の言葉ではない。

 ラキアスが何か術をかけたのかもしれない。

「ねえ、ジンって誰?」

 言い慣れていない「人間の言葉」で、たどたどしくラキアスに尋ねる。

「わらわがお前の顔によく似合う名前をつけてやっただけじゃ。今日からお前はジンじゃ。感謝せい!」

 ラキアスはふんぞりかえる。

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