第1227話 鈴の創作活動
【
『え、えっ!?え???19歳!!??』
『で、でもカフェではお酒も・・・・』
【店では詐欺ってるからね~】
『で、でも実際お酒って、体とか大丈夫なんですか?』
【ううん。大丈夫じゃない。よく記憶は飛ぶ】
『ええっ!?』
【私は女性客限定だけど、たまに特別に男性客対応することもあって】
【そういう時は死ぬほど飲まされてだいたい死ぬ】
『そ、そんな・・・・・』
【次死んだら美空ちゃん、家まで連れて帰ってね】
『いいんでs――!い、いやいやいや、駄目ですよ!!』
【あはは~文面にしては随分と素直だね??】
鈴は高い金はたいて買ったゲーミングチェアにドサッと座り込んだ。
文面は愉快な女性だが、リアルな表情は微塵も笑っていない。
いや、誤解を解こう。表情は笑っていないが、何も面白くないわけではない。
単純に、表情筋が動かない。
上質な椅子故に座るとすぐに眠くなるのが難点。
それによる失敗談が後を絶たないことは経験上分かりきっているのですぐに立ち上がる。
(メイク落とさないと)
洗面台に立ち、クレンジングで肌を撫でていく。
普段は化粧なんてしないが、仕事の際は別だ。
かなり手は込んだメイクだが、それでも同僚にはうっすい化粧と言われるので何が正解かよく分からない。
「あ」
ふと、鏡に映る自身の髪に気がつく。
根元の辺りをめくってみると、少し黒くなってきている。
「これは美容院近々かー」
アニメの主人公じゃないんだ。
素で銀髪なんて女の子、そこらにいるわけがない。
地毛の色素が他より薄めなことが救いか、ダメージは最小限に抑えることで何とか保っている。
傍から見れば綺麗なものだろうが、オイルやらトリートメントやら、鈴にしては意外と気を使っていることは確かだ。
髪の反動で肌には適当がみえる。
メイクを大雑把に落とし、パックだけを貼り付けると椅子に戻る。
肉まんクッションを抱え、PCの作曲アプリを起動する。
別モニターではツイッターやYouTubeを数窓で起こし、トレンドのチェック。
昨日からの作りかけの画面が起き、いよいよ作業スタート。
気に入っているたっけぇヘッドホンを付け、マウスをカチカチ。
鈴の製作スタイルはいたって単純だ。
一旦全部作りきってからいちいち修正する。
曲然り、作詞然り、ラフ画然り。
序盤にやっていたことが見返した際に気にくわなくなり、結局数日の努力を水に流すことも少なくなければ、完成寸前まで持っていったのにお陀仏にすることもある。
それが創作活動ってものだろう。
曲に行き詰まると、先にラフ画を描くことが多い。
まさに今だ。
崇拝している0.2mmのシャーペンを手に取り、線を引いていく。
PCでゴリゴリ楽曲製作している割に、イラスト制作はアナログ人間なのだ。
五時間後。
鈴は机に頬杖で静止した。
寝てはない。
行き詰まりってやつ。
是非聞いて欲しい。
正確には行き詰まりでもない。
アイデアというものは、人間捻出しようとすれば永遠に出せるのだ。
しかし、流行るものや神作となるものは、そのアイデアが面白いかにかかっている。
当たり前の話だ。
つまり、人気作家や人気ボカロPなんて人たちは、神がかったアイデアやフレーズを、
“良いもの”・“おもろいもの”・“感動モノ”
に仕上げる技術、あるいは運に長けている。
鈴はこう見えても創作活動に慎重なタイプだ。
自らが行き詰まったと悟れば、すぐに自分の創作方針が正解なのか考え込む。
尊敬する創作家の全てを調べる。
創作への考え、リアルな作り方、生い立ちやインタビュー記事を調べる。
さすが、弱冠で天才的な才能を発揮してシンデレラストーリーを歩む創作家もいれば、何作もひねり出した末に大爆発に繋げる創作家も少なくない。
どちらが正解なんて勿論ないし、鈴だって早期爆発がしたいと望んでいるわけでもない。
しかし、間違ったことを続けるのは嫌だ。
きっと、その思いがずっと鈴の創作活動にちょっと重めの足かせを嵌めている。
勇気を出せばいいのか?思い切れ?そういうもの?
「誰か答えろー」
ウィキペディアでまた別の創作家の生い立ちを調べたところで鈴は天を仰いだ。
――――――
生い立ち知りたいのは主の欲求です。
どんな生活してどんな思いで創作活動続ければ、それだけの地位というか、才能というか、とにかく成功できるのだろうかと失礼すぎる思いを抱きながら日々ウィキのお世話になります。
ババになってからでもいいから、是非創作家さんにこれら疑問を聞いてみたいですよね。インタビューして記事書いてを行って下さる全国の記者様に大感謝。
推し作曲家がコンカフェ嬢だった 有衣見千華 @sen__16
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