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「それを完遂できるかどうかについては一切語ることはできないよ」
「語ることが占い師の責務であると思いますが」
「残念ながら、その未来は未定なんだ。つまり定まっていないものに関して占うことはできない」
「定まっていないものを占って頂きたいから、ここに来たのですが」
「ただでさえオーパーツを七つ集めるという仕事をするわけなのだから、不確定要素が入り込む余地が多すぎる。そもそも儀式的な意味合いの強いものは占いという人間の範疇を超えて神の領域だ。神に少し手伝ってもらう程度の占いでは、どうしても手が出せない」
これ以上、反論したところで無意味そうだ。占いについて詳しいわけではないので飲み込むほかない。
ただ、流石に言ったもの勝ちではないか、とは思った。
「そもそも占うことによって未来が変わることだってある。成功が待っていたはずなのに悲惨な結果が確定してしまうこともある」
小雀がため息をついた。
「じゃあ、どうすりゃいいんだよ」
「焦るな。努力しろ」
「それだけかよ」
「それしかない。占いは未来を見通すものだけど、その未来に実際に行くことができるのは占いそのものじゃなくて君自身だろう。そんな簡単なことも分からなくなるほど焦っているというわけじゃないだろうし」
「まぁ、そうだけどよ」
「肝心な時に頼るのは占いじゃなくて、自分自身にするべきだ」
結局の所、占いとは人生相談であると聞いたことがある。そう考えれば占いという要素は会話の掴みでしかないのだろう。
「正直なことを言わせてもらえれば、こうやって占って欲しいと言ってもらえたこと自体は凄く嬉しいよ。この花街区画において占いは、基本的には信じられていない。結局、皆が一生懸命に生き過ぎてしまっているから占いを挟む余地がないのさ。正しくてもいいし間違っていてもいい、という心の余裕がないと占い一つに怒りだしてしまうし、怒ってしまった自分に悲しむことにもなる」
「占いとの距離感は重要なのですね」
「まぁ、そういう意味では花街区画でたくましく生きているすべての人は聡明と言えるのかもね」
占い師は座りなおすと微笑んだ。
「さてと、世間話はここまでにしよう。僕は占い師だけではなく情報屋もやっているから、その視点から君たちに伝えられることは二つ。一つはカーネーションだ。君たちの冒険はカーネーションによって監視されているんだよ」
「カーネーションにカメラが仕掛けられているってことかよ」
「そうじゃない。カーネーションが君たちのことをずっと見ているということだ。カーネーションにはカーネーションなりの考えがあり、行動範囲があり、情報網がある」
「なんか、気持ち悪いな」
「見られている、と意識させることが本来の目的なのかもしれない。とにかく誰かに見られているという事実は頭の片隅に入れておいて欲しい。そうすれば問題はないはずだ。もう一つは、カーネーションとは別に君たちからオーパーツを奪おうとする存在がいることだ。細心の注意を払うべきだ、と忠告をさせてもらうよ」
「もっと詳しく教えろよ」
「占いなら教えられるけど、これは情報でしかない。知っていること以外は知らないよ」
占い師ならではの発言であると思った。いや、矜持と言えるのかもしれない。
小雀は興味を失ったようで、あくびをしながら耳をかいていた。
占い師が僕を見つめる。
「まぁ、そもそもデッドバーストふれあい祭りには死者を蘇らせる目的があるからね。君が抜擢された理由も何となく分かるよ」
死者を蘇らせる。
裏にそんな目的があることなど聞いたこともない。
僕は一瞬だけ不安になった。
「君は母親がいないんだろう。死んじゃったんだろう」
「何故、知っているのですか。それも情報ですか」
「違うよ」
「では占いですか」
「違うよ」
「では何ですか」
「勘さ」
「勘だけで当たるものですか」
「はは、当たるよ。占い師だからね」
もはや占い師ではなくて超能力者ではないか、と思った。しかし、どちらであったとしても大した問題ではないことはすぐに分かった。必ず当たる占いは超能力であるし、超能力があるなら必ず当たる占いは容易いだろう。
「もしも本当にデッドバーストふれあい祭りで母親を生き返らせることができるとしたら、どうする。君は真剣にやってみるかい」
「生き返らせることができるかどうかは別にして与えられた仕事はやり遂げます」
占い師が声を上げて笑った。
「少しずつ面白くなってきたこの旅が、ただの面白い旅として終わるんじゃなくて今後の人生に大きく影響を与えるものになる可能性がある。そう思ったら怖くなってきただろう。これ、マジだからね」
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