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花街区画は中心に向かうほど栄えていく。途中、水田もそうだが、畑、大きな川に、非常に狭いが砂漠のような場所を通ることになった。砂漠では野良のラクダに遭遇した。初めて見るラクダは結構怖かった。
僕と小雀は砂漠を抜けて中心街へと入った。
大通りなど存在しない。すべてが路地裏。壁にはストリップ劇場のポスターが張られ、その四隅に白い液体が塗られている。石畳の道は非常に歩きづらく、隙間には必ずと言っていいほど黒く固まったガムが付いていた。
匂いは正直悪くない。むしろ、不思議と良い匂いなのである。
薔薇の香りというか、しかし、それも強くはない。清潔なのである。
「すげぇな、花街区画ってこんなに綺麗になったのか」
小雀があたりを見回しながら驚いている。
「私は、花街区画に来るのは初めてですが、一応、オーパーツの置いてある場所については理解しています。どこか面白い場所があったら寄ってみたいのですが」
「いやいや、このあたりに面白いところなんてねぇよ」
一番不思議なのは一切人に出会わないことである。扉も閉まっているし窓も開いていない。最初から誰も住んでいないのではないか、と思うほど静かなのだ。
「あの、何故にこんなにも静かなのですか」
「花街区画で風俗の営業は禁止だ。罰金が異常に高いんだよ」
「え、でも。花街区画と言ったら風俗なのでは」
「だから、みんな地下で営業してる。表に客引きは出てこないし、金をせびって来るガキも出てこない。みんな地下で生活して地下でやりたい放題だからな」
「地下でも法律は適用されますよね」
「そもそも花街区画は勝手に住み着いた人が地下街を作り、それが発展した結果として地上にも町ができたんだよ。だから行政とかはぜんぶ後付けだ」
「なるほど」
「豊島区と花街区画の行政側は、地上の治安については責任を持つけど地下に関しては行くこと自体を禁止にしてる。だから、そこで何が行われていても知らねぇってスタンスなんだ」
「滅茶苦茶ですね」
「そうでもしねぇと警察の仕事なんかえげつない程膨らむぜ。地下にはそもそも地図がねぇから、すべての道の把握なんてできねぇんだよ。一度迷ったらマジで出てこれねぇからな」
「気を付けます」
「まぁ、あたしがいれば大丈夫だとは思うけどよ。地下街で一番大きい通りを歩くくらいならできるし」
「覚えているんですか」
「まぁな」
「じゃあ行ってみたいです。地下街」
「オーパーツは関係あるのか、それ」
「オーパーツは教会にあると聞いていますが、どうですかね」
「まぁ、地下を通ったら遠回りになるのは間違いねぇけど。まぁ行くか。久しぶりだし」
「有難う御座います」
「粟生蜻蛉(くりうとんぼ)の塩抜きスープとか、福来鼠(ふくらいねずみ)の踊り揚げとか滅茶苦茶美味しいんだぜ。食べてみるか」
「昆虫食は大好きです」
「出店があるといいな」
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