第5話嫌なことは他人に押し付けよう
俺は東条屑。チンピラに絡まれていたレベッカを助けるべくチンピラと一対一の三本勝負をした。俺達は見事勝利し報酬としてチンピラのリーダーのダズから家を貰った。
空は綺麗なオレンジに染まり深紅の太陽は半分に欠けていた。俺達は大きな屋敷の前で立ち止まっている。
「へー大きいなぁ」
首を逸らし和は屋敷を見上げた。
確かにこの屋敷はかなり大きいリーダーの家が一番立派だろうと予測したのは間違っていなかったようだ。今日はタダで家が手に入って本当に得をした。
「でも本当に家を貰ってもよかったのでしょうか?」
両手の指を絡ませつつレベッカが言った。
この子は本当に良い子なんだな。返ってきたとはいえ一度自分の家の家宝のペンダントを奪われたというのに、奪ってきた相手のことを心配している。
被害者が俺だったのならばあのチンピラから人権を奪っていた。
「良いのよ。あの荒くれ者たちは色んな人たちから卑怯な手を使って取ってきたんだから天罰よ」
レベッカの背後に抱き着きレベッカの匂いを堪能している詩織が答えた。
何でこいつはずっと抱き着いているんだよ、さすがは前科ありの変態だ……。レベッカもレベッカで嫌がらないのが怖い!本当に何なんだろうか?
百合は嫌いじゃない、むしろ好きな俺だが詩織が関わっているせいで心にトキメキを感じない。
「そういうものなのですかね……。」
「そういうもの、不安なら僧侶の私が女神さまに聞いてあげる。」
詩織はレベッカから離れ両手を広げ、天を仰ぎ見る。
うわぁ、面倒くさそう……。早く屋敷に入りたいのに。
「女神さまが言うには良くないことらしい……」
なんでだよ!今は不安になっているレベッカを安心させる流れじゃないのかよ!本当にこいつは何を考えているんだ?
「やはり……」
と、レベッカはしょんぼりと俯いた。
「でも待って女神はこうも言ってる、レベッカちゃんが私と結婚すれば問題ないってね。どうする?」
手を差し伸べた詩織は全力の決め顔でレベッカに提案した。
「もういいです。行きましょう」
フンッ!と息を強く吐き詩織の提案を軽くあしらい前に進む。俺達も続いて前に進んだ。その間も詩織は必死にレベッカにプロポーズしたが全て無視された。
屋敷に入ってすぐ俺達は各自の部屋分けをした。その後すぐ俺達は居間に集まった。
「じゃあ部屋分けも済んだし家事の順番を決めるか」
そうこれが最も重要なのだ。俺は一日も家事をやりたくない誰かに押し付けたい。
「無難にじゃんけんでいいよな」
和の提案に全員賛成した。
「じゃんけんポン!」
じゃんけんにより俺→和→詩織→レベッカの順となった。
初日からとは運がない、最悪だ。
「じゃあ今日の夜飯は俺が作るか」
俺はエプロンを身に着け台所に向かった。手際よく野菜を洗い、肉を切った。他の奴らは居間で仲良く話している。
三十分後……。
「できたぞ」
俺は完成した料理をテーブルに料理を並べた。
「初めて見る料理です。この料理は何て言うのですか?」
目を輝かせて質問した。
「バードホークのから揚げ」
「おいしそうですね」
フハハハ!うまそうなのは見た目だけ、俺の作戦はバッチリのはずだ。
俺達は机を囲むように座った。
「頂きます!」
俺達は合掌し口をそろえて言った。レベッカは余程お腹が空いていたのか勢いよくから揚げを口に含んだ。レベッカは咀嚼の際バキバキと音を出し口に含んだから揚げを吐き出した。
「イタッ!殻が大量に入っていたのですがこういった料理なのでしょうか?」
辛そうな顔をして俺に尋ねて来た。
勿論こんな料理じゃない、こんな料理きっと存在しない。
「ああ、こういう料理だよ」
俺は真剣な顔で息を吐くように嘘をついた。
「殻揚げだから、殻に衣をつけて揚げるんだよ。」
「おかしいですよ。皆さんだって顔色悪いですし普通に体壊しますよ」
机に手を突き立ち上がったレベッカは和と詩織の二人の顔を見て必死に同調を求めた。
「屑、力がわいてくる素晴らしい料理だ」
「そうよ。レベッカちゃんも食べたほうがいいわ」
和と詩織はレベッカの期待には応えることなくレベッカとは相反する意見を述べた。
このまま流れでレベッカに賛成していてくれれば簡単に作戦成功だったのに……。
「え……?おかしかったのは私の味覚?」
レベッカは自分が味音痴なのかと不安になり、再び口に含んだ殻揚げを噛みしめるようにゆっくりと食べた。
食後各々は自室に戻った。俺も皿を洗い終えると眠ろうと自室に戻った。
コンコンと誰かがレベッカの部屋のドアをノックする音がした。
「どうぞ」
椅子に座っているレベッカはドアに向かって答えた。そしてドアが開き詩織の姿が見えた。
「レベッカちゃん寝る前にごめん……って、え?何してたの?」
一言謝って詩織はレベッカの部屋に入った。入ってすぐ目に入った机の上に並べられた数十種類の調味料に驚きが隠せず眉を細めた。
「え?あいや……これはその……。もしかしたら私って味音痴なのかな、と感じたので自分を試していただけです。」
レベッカは詩織と目を合わせられず他所を向いて答えた。詩織はそれを一人でするって悲しいわね、もしかしてボッチ?と心の中で呟いた。
「別にレベッカちゃんは味音痴じゃないよ、私と和もあれを美味しいなんて思ってないから」
「え?どういうことですか?」
「屑は今わざととんでもないもの作って自分は家事出来ないってことにして他の誰かに家事を押し付けようとしてるのよ」
レベッカは言っていることの意味が分からず目をかっぴらいて口をポカーンと開けている。そしてその感情を振り払うように首を振った。
「え?じゃあどうしたらいいのですか?」
「我慢比べよ。先に屑が諦めればまともなもの作るようになる、先にこっちが諦めれば屑の分も家事をすることになる。」
右手左手と順に掌を上にする。
「我慢比べですか…教えてくださりありがとうございます」
「気にしなくていいよ。それじゃあ寝ようか」
詩織はレベッカのベッドの上で横になった。
「あのそれ私のベッドなのですが……」
「そう……、これはレベッカちゃんのベッド、さあおいで一緒に寝ましょう」
と、詩織は自分の横をポンポンと叩きここに来いと言わんばかりにアピールしている。
「いいですけど」
人に頼まれると断れないレベッカは明かりを消して詩織のいるベッドに入った。
「良い匂い。お姉さん息を吐くこと忘れちゃいそう」
と、レベッカの髪の毛を鼻の穴に吸い込みレベッカの耳元に囁いた。
「な…何ですか気持ち悪い」
「気持ち悪い?なら気持ちよくしてあげる」
詩織はレベッカの体を弄るように触った。
「ひゃぁぁどこ触っているのですか?」
「女の子同士でしょ、気にしない気にしない」
「むっムリですぅ」
レベッカは詩織を部屋の外に追い出した。
「入れてよねえ、もうしないからお願いだから~」
詩織の体はこの世の終わりに直面するかのように脱力してドアに寄りかかった。
「無理です自分の部屋で寝てください」
「そんな冷たいよー」
そして屋敷の中に朝日が差し込み俺の顔を明るく照らした。
「ふわーぁ……、眠い……。」
俺はベッドから起き上がった。今日の予定も決まっていないのでとりあえず話声の聞こえる居間に向かった。
「昨日はごめんなさいもうあんなことしないから許して」
何やら詩織がレベッカに謝っている。
あのバカ一体何したんだ?
「もう知りません」
「えぇぇー」
詩織の体は崩れるように倒れた。
あの優しいレベッカが許さないとはあのバカ何したんだ?
「昨日何があったんだ?」
ソファに座ってから倒れている詩織に質問した。
「昨日……」
「ダメです言ったら一生許しませんよ」
口を開き始めた詩織の話を止めようと詩織の口を塞いだ。
「言わない、言わないから許して」
「今回だけですよ」
嘆息を吐いて言った。
「お前マジで何したの?」
軽蔑の眼差しを詩織に向けて引き気味に言った。
玄関が開く音がして和の姿が現れた。どうやら外出していたようだ。
「いやー朝ご飯用のお金カジノで使って無くなっちゃったから朝ご飯抜きね」
和は笑顔で頭を掻きながら言った。
は⁉こいつ……、こいつの場合は家事の押し付け合いなのか、そうじゃないのか分からない。こいつなら本当にただの奇行という可能性が有りうる。
「チッ」
「仕方ないわ。このギャンブルカスにお金を渡したのが間違いだったのよ」
そこから俺達は空腹を我慢して昼食を待った。ぐ~と音が次々と鳴り響いた。
ダイエットってこんな感じなんだろうな……、マジで腹減ったー。
そこから三時間が経過しお昼時となった。
「昼メシできたぞー」
詩織は作った料理をテーブルに並べた。
「やった……、やっとまともなものが食べられるおいしそうなスープですね」
噛みしめるようにガッツポーズを取ったレベッカは椅子に座った。
本当だ、俺でも飯抜きにしなかったぞ。
「レベッカちゃんのスープにはこれ入れてあげるわ」
詩織は謎の白い粉をレベッカのスープに入れた。その場にいた詩織を除く誰もがこれはやばいクスリだと直感した。
「何ですかそれ?」
「食べたら分かるよ」
怖っ!なんだ、惚れ薬か?
「危ないものじゃないですよね?」
「違う、ちゃんとしたものよ」
「なら一口食べてみてください」
レベッカの一言で詩織の顔が見る見る青ざめていき、頬には滝のような汗が流れだした。
こいつは何ていう分かりやすい奴なんだ。もっと上手に嘘をつけるようになってからやれよ。
「え?いやーレベッカちゃんのために作ったものだからレベッカちゃんに食べてほしいかな……」
「昨日のこともあって信用できないですよ。一口食べてください」
詩織は自分の両頬を叩き、覚悟を決めスープを一口飲んだ。その後すぐ詩織はバタンと倒れ寝た。
「こいつやばぁ……。」
俺は詩織を軽蔑して引き気味に呟いた。倒れて寝ている詩織を無視して俺達は机を囲むように食卓に着いた。
「自分より年下の女の子が好きなのは知ってたけどここまでするとは知らなかった……」
ゆっくりと首を振りながら和が言った。
「本当にこの人は……」
レベッカは詩織が食べる予定だったスープを取り食べた。
「うっ‼」
全員手で口を押さえ吐くのを我慢している。
「この女水の代わりに酒入れやがったな……。」
「レベッカって何歳だったっけ?」
レベッカの方を向き、緊迫した表情の和が質問した。
「十七歳ですけど……、え?和さんも詩織側ですか?」
詩織は自身の肩を抱き寄せ汚物を見るかのような目で和を見た。
十七歳⁉それはやばい、俺はこのバカのせいで捕まるなんて嫌だ!
「マジかよこのバカ女のせいで転生して一週間もせずに捕まるのかよ……。」
机に肘をつき下を向いて頭を抱えた。
「俺にとっては別に歳は関係ない美少女なら大歓迎だ!」
和は親指で自分自身を指差した。
うるせえ、黙れ!これから捕まるかもしれないというのに自分の性癖大公開してんじゃねえ。
「どうして捕まるのですか?」
和のことは無視し、首をかしげて俺に尋ねた。
「だってお酒って二十歳未満で飲んだら犯罪じゃん……。」
消えるように霞んだ声で言った。
「……?お酒はこの国では十六歳から飲めるので大丈夫ですよ」
「よかったこの馬鹿のせいで捕まるところだった」
レベッカの言葉のガバッと顔を上げた。本当に助かったと胸をホッと撫でおろした。
全員でスープを完食することなく片づけた。
「夜ごはん私が作るのでリクエストってありますか?」
「俺はラーメンが食べたいけど難しいなら簡単なものでいいよ」
「ラーメンですね分かりました。頑張ります」
そこから数時間が経ち青かった空は黒く染まり小さな光が散りばめられている。
「出来ました皆さん来てください」
キッチンから料理を運びテーブルに並べた。料理から湯気は立っているのが見えるが、匂いは感じない。
「なにこれ……?」
俺の口から言葉が漏れた、そして絶句した。俺の脳がこれは料理ではないと警鐘を鳴らしている。
「麺がなかったので変わりに髪の毛を入れました調味料がなかったので味なしです」
そういうことか……。俺が原因で始まった押し付け合いの復讐ということか。優しい子だと思っていた想定外だ。
「レベッカちゃんの髪の毛?早く食べたい」
笑顔で答え椅子に座った。
何故かこのキモい感想は想定内だ。
「食べるなよ……。」
詩織の体のことを考え一応止めた。
「みんな誰かに家事を押し付けようとしてやばいことしてるから解決案としてこれを持ってきた」
袋から何かを取り出した。
「過去未来すごろく?」
眉を細め俺は和の顔を見て尋ねた。
過去と……未来?どういうことだ?
「マスでその人の過去か未来が書かれている。これなら平等だろ?負けた人がこれからの家事を全部行うこれでどうだ?」
いつになく彼の目は輝いていた。
こいつは賭け事なら賭けるものが金じゃなくても嬉しいんだな。
「分かりました」
「俺も」
「ちょっと待て、冷める前に食べるから」
フォークを手に取った。
「やめてください、本当に気持ち悪いです」
「そんな……、愛しているだけなのに好きでいることは罪なの?」
フォークを置きしょぼくれた。
「分かりましたからすごろくやりましょう」
ゲームをより楽しもうとしょぼくれた詩織を元気づけた。
「順番を決めるじゃんけんするぞ」
俺の掛け声でじゃんけんした。じゃんけんの勝った順で詩織→俺→和→レベッカの順番に決まった。
「よしっ、それじゃいくぞー」
この家の家事担当、つまり下僕を決める勝負の賽は投げられた。
肝心の第一投目、先手必勝の言葉を胸に詩織は賽を振る。
出目は六だ。出目の数だけコマを進めた。
やはり流石は詩織だ……、こいつは勝負運が極めて強いのだ。
「やはり神は私の味方ね。なになに幼馴染に車で衝突事故して全員あの世行きでスタート地点に戻るってはぁー⁉」
頭を抱えて叫んだ。
そういうことか、過去未来その人の過去にしたこと、未来にすること、それらがマスになっているんだ。つまり日ごろの行いが大事ということだ……、最悪だ。四人中三人は地獄行きだった人間たちだ、実質俺、和、詩織の勝負だな。
「ドンマイwww俺らをあの世に送るからそうなるんだよwww」
和は今まで今一納得のいく復讐が出来ていなかった分過度に嘲笑った。
「うっさい!」
いつも以上に殺気を纏った目で睨み黙らせた。
「他にも六を出す人がいるかもしれませんよ」
「レベッカちゃん」
「さていきますか」
俺は賽を手に取り、数少ない善行をしたことが書かれているマスに止まることを祈り、賽を振った。
出目は四だ。出目の数だけコマを進めた。
「幼馴染の女の子の写真をクラスメイトに売ってお金を稼ぎ1マス進む……」
俺は隣から放たれている殺意を感じ取り、顔が青白くなった。
マジか……一番知られたくないことが書かれている……。
「おい、昔私の写真売ってたの?」
ドスの効いたその声、その言葉は重くなった俺の心臓を震わせた。
「確かにそうだが仕方なかったんだ、金欠だったか……。」
必死に思考を巡らせ、身振り手振りで誤魔化そうとした。
「知るかァ‼言い訳は地獄でしろ、ハーデニング!」
と、詩織は人差し指と中指で杖をなぞった。そして杖先が床に当たると高い金属音に似た音がした。
硬くなったってことか?やばい……死ぬ、死んでしまう。二度もこいつに殺されることになるなんて……。
剣道の要領で杖を構え、殺気のこもった一振りが俺お腹に命中した。俺は勢いよく飛んでいき背を向けていたかずの壁に背をぶつけた。
「ゴハッ!」
「次やったらあんたを一足先に地獄に送るから」
「グ……グフ、すいませんでした」
「やばい俺も怖くなってきたそれじゃあ行くぞ。頼む」
和は賽を手に取りを手に取り詩織関連のことだけは出ないように心の奥底からの願いを込め、賽を振った。
出目は六だ。出た目の数だけコマを進めた。
「よかったこれなら詩織と同じだ、殴られない」
命が繋ぎ止められたことに感謝し、ホッと胸を撫でおろした。
家事の押し付け合いがいつの間にかデスゲームに変わっているな。
「いやよく見てください。和さんの止まったマスは幼馴染の女の子と新しくパーティーに入った女の子の入浴を覗いて目の保養になり二マス進むです…て⁉ふぇぇぇl!」
レベッカは赤面した顔を手で覆い隠した。
これはもう和死んだな。
「一度で懲りず、二度もさらにレベッカちゃんの裸まで見やがってぇ!殺してやる!ハーデニング、プラスステータス」
詩織は杖を硬質化し、自身に全能力上昇のバフ魔法を掛けた。
「屑は見たの?見てないの?」
大きく見開いた眼は殺気を帯びてこちらを睨んだ。あまりの恐怖に俺は一瞬息を呑んだ。
「見てません」
強張った筋肉を必死に動かし答えた。
「そう……命拾いしたわね。和あんただけはぶっ殺してやる‼」
詩織は更に先ほどとは比べ物にならない殺気を身に纏った。
和は逃げようと椅子から立ち上がった、しかし腰を抜かしていたためその場に倒れた。
「待って死ぬ、死ぬさすがに死にますよ、姉貴」
逃げられないと悟りつつも後ろに後ずさりしながら命乞いをした。
こいつをパーティーに残したのは間違いだった、今日は和だがいずれは俺も殺されてしまう……。
「そうよ。あんたはここで死ぬのよ、この私の手によって!」
詩織は杖を強く握りしめ、目にも止まらぬ速さで和を滅多打ちにする。
「待ってください詩織さん和さん気を失っています。」
詩織の前に割って入り止めた。
「今回はこれぐらいにしてあげる。次やったら本当に殺すから。」
「つ……、次……わ……私行きますね」
レベッカは自分の目はどうなるのか、という恐怖で声が震えた。震える手はぎゅっと賽を握った。
「どうしたの?声が震えてるわよ。もしかしてレベッカちゃんも私に何か隠しごとしてる?」
「し……していません」
と、賽を振った。
出目は一だ。出目の数だけコマを進めた。
「えっと困っている老人を助けて三マス進む。やった」
と、さらにコマを三マス進めた。
「流石は私のレベッカちゃんあそこのカスどもとは違うわ。それじゃ私もこの波に乗るわよ。」
詩織は賽を手に取り振った。
出目は一だ。出目の数だけコマを進めた。
私のって言葉の節々に変態が詰まっていて気持ち悪いな。
「一か……、ついてないわ。えっとぉ魔王に出会う強制敗北……は?」
「は?」
「え?」
俺に続く形でレベッカも思わず口から音が漏れた。
「待って私魔王に会ってたの?それより強制敗北?ええ噓でしょー」
両手で頭を抱え、体を逸らし、天を仰ぎ見た。
「待ってくださいこのすごろくの名前は過去未来すごろく会っていたのかもしれないですし、これから会うのかもしれませんよ」
「そんなことより私負けちゃった一生家事しなきゃいけないなんて」
「いよっしゃー!勝った!」
俺は勢いよく立ち上がりガッツポーズをした。
フハハハ、ざまあみろ、バカ‼よくもこの俺をいたぶってくれたな!家事担当になったら徹底的に扱き使ってやる!
「待って、和は気を失ってるから和が負けたことにしない?」
詩織は水溜まりができるほどの汗をかき始め、目がグルグルと回り、強張った笑顔を浮かべた。
人は本当にやばい状況下になると笑うという話は本当だったのか……。
「ダメですよ。いくら何でも卑怯ですよ。これからは家事よろしくお願いしますね」
「レベッカちゃーん」
レベッカにしがみ付いて必死に交渉する詩織を横目に俺は眠ろうと自室に向かった。その日は詩織に与えられた痛みに魘されながら眠りについた。
その日が終わり、新たな一日の始まりを知らせる朝日で目を覚ました俺は、朝食を食べようと居間に向かった。
「出来たわよー」
結局レベッカを説得できなかったのだろう。詩織は早起きして作った料理を机に並べた。
「え?天ぷら?」
朝一発目から天ぷら?胃的にちょっと辛いだろ。
「やればできるんですね」
「当たり前じゃない私はお姉さんだからね、とっとと洗いたいから早く食べろ、カス二人」
詩織はレベッカに見直されて上機嫌になったかと思ったが、しかしそんなことは無かった。
「頂きます」
全員で息を合わせて合掌した。俺達四人は天ぷらを口にするとすぐ顔を見合わせた。
「不味い。何これ?グニグニしてる、薄力粉と強力粉間違えただろ」
最初に和が口に含んだものを吐き出した。
「それだけじゃないこの天ぷら甘い。塩と砂糖を間違えてる」
和に続き俺も吐き出した。
「人が真面目に作ったものに文句言ってんじゃないわよ」
「本気で作ってこれなのか?」
「そうよ、悪い?」
被害者はこっちなのに、何でこいつが怒ってるんだよ。こうなったら仕方ない奥の手を使うか。
「一応あいつ連れて来てて良かった」
「?……誰ですか?」
「ダズだ。この前街中で見つけたから家事を全部請け負うことを条件にここに住んでいいことにする交渉をしといたんだ、早速来てくれ」
俺は屋敷の玄関に向かって叫んだ。
「どうした?」
居間にダズの姿が現れた。
正直レベッカがいるからダズを本当に住ませてもいいのか悩んだが、こうなっては考えるまでもないな。
「さっそく料理を作ってくれ」
和がダズに頼んだ。
「ああ分かった」
ダズは急いでキッチンに立った。すぐに良い匂いがした。
「あれ?ダズさんってあんな人でしたっけ?」
と、レベッカは首をかしげた。
「心を入れ替えたんだ。人の考えは変わるものだからね。」
「そうだったんですね」
十分後
「出来たぞ」
ダズは完成した料理を机に並べた。空腹で合唱を待てなかった俺達四人は急いでダズの料理を口に運んだ。
「美味い!」
俺達四人は口をそろえて言った。
「屑、家事担当も決まったことだし今日は何するんだ?」
「今日は用意だ。」
「用意?何で?」
と、和は首を傾げた。
「明日はダンジョンに行くぞ」
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