第6話ダンジョン攻略(1)面倒事は人任せで

 俺は東条屑。幼馴染の南詩織の居眠り運転によって死んだ俺達は、異世界に転生するか地獄に行くかを迫られ異世界に転生することにした。


 俺達はダンジョン攻略のために机を囲み作戦会議をしている。


「ダンジョン⁉そんなところに何しに行くんだ?」

 和はダンジョンという言葉に驚き眉を細めて俺に質問した。


「実は昨日大規模ダンジョン探索の張り紙を見たんだけど、参加するだけで報酬貰えるらしいんだよ。だからバトルを他の奴らに任せてお宝探せばお金がガッポガッポって訳だ」

 俺は親指と人差し指を合わせお金のサインをし、それを上下に揺らした。


「それはグッドアイデアよ、屑」

 詩織はグッドサインを送った。


 『流石にバトルを全部任せるのはどうなのでしょう』というレベッカの心の声を聴いた。


「レベッカ今流石ににバトルを全て任せるのはどうなのでしょうって思っただろ?」


「えぇぇー!なぜ分かったのですか?」

 レベッカは大きく開けた口に手を被せ驚いた。


 うん素晴らしい反応だ。最初にやったのがレベッカで良かった。詩織だと怒ってたかもしれないし。


「カジノでイカサマして荒稼ぎするためにスキルテレパシーを習得したんだ」

 と、渾身のどや顔を披露した。


 俺は魔王なんて討伐しないし魔王と何て戦う気はない。カジノでイカサマして楽して一生を過ごすのだ。


「残念ですがカジノ内は魔法やスキルは一切発動しない結界が張られているので無駄ですよ」


「マジか……、スキルポイント無駄じゃん」

 と、悲しみで肩をすくめガクッと首が折れた。


 最悪だ……、ポイント結構したのに無駄とは。


「はい本当です。ですが魔物や動物の心も読めるのでバトルでも使えるので完全に無駄って訳じゃないと思いますよ」

 悲しむ俺を励ましてくれた。


 優しいな、ボンボンそうだし今度心を読んで上手いこと金を貰おう。


「それよりなんであんたたちは攻撃魔法を習得しないのよ」


「攻撃魔法って工夫しようがないだろ」

 和がやれやれと首を振って答えた。


「そうなんですか?」

 レベッカは首を傾げ聞き返した。


 実際そうだがそうじゃない、俺達が攻撃魔法を覚えない理由は日常で使えないからだ。


「こんな言葉に耳を貸しちゃあだめよこいつは備え付け初期攻撃魔法以外のスキルは覗きをするためだけに覚えた透明化しかないカス野郎だから」


「な⁉そんな理由で覚えただけのスキルに俺の仲間は負けたのか……」

 ダズは途方もないやりきれない思いで膝から崩れ落ちた。


 そうだった、こいつは覗きようのスキルで負けて家を取られた可哀そうな奴だった……、ダズってバカじゃん。こんな話をしている場合じゃないな。


「無駄話はそこまでにしてダンジョンのための用意をしろよ。ダズ、ダンジョンで使えそうなものってどこにあるんだ?」


「それなら地下にある。そこの階段を下りると良い。」

 と、階段を指差した。


「サンキュー」

 俺は立ち上がり部屋を後にした。


 武器が欲しいな。覗きスキルでやられたダズの持ってるものなんて大したことないだろうな、期待しないでおこう。


「待てよ、屑。俺も行くから」

 と、立ち上がり俺の後に続いた。


 俺たちは階段を下りいろいろな道具を見て回った。クロスボウや弓矢など様々な道具があった。


「見てみろよ、屑ダイナマイトだぜ」

 和は少年の様に目を輝かせて、手に持っているダイナマイトを見せてきた。


「おぉ!すげぇーでもこれ導火線がないけどどうやって使うんだ?」


「ここは異世界で魔法がある世界なんだから魔力込めれば良いんじゃないか?よし、決めた俺はこれを持っていくぜ」


「やめろよ、そんなもん使ったらダンジョンが崩れちまうだろ」

 奇行に走り始めた幼馴染の行動に制止を掛けた。


「大丈夫だって一本だけだから」

 と、ダイナマイトを二本取った。


「ん~……、物騒なもんばかりだなこれじゃあ何持って行っても危ないな。俺はいいや」

 探すことをやめて階段を上がった。


 期待していなかったのに、想像以上に大したものが無かったな。


「なにか良いものあった?」

 階段を上がるとすぐ嫌がるレベッカに無理やり抱き着いている詩織が質問してきた。


「無かった。それより詩織レベッカを開放しろ、可哀そうだ」

 俺は何度言ってもレベッカに抱き着く詩織に呆れて言った。


「チッ!」

 詩織はレベッカから渋々離れた。


「屑さんありがとうございます」

 可哀そうに本当に不憫だな。おかしなアル中ロリコンと出会いさえしなければこんなことにはならなかったのに……。


「詩織達もダンジョンの用意をしろよ」

 和は詩織に指を指して、釘をさすように言った。


「それなら既に用意したわよ」

 何やら詩織は自信満々に答えた。


 不安だ……、このバカが自信満々に答えるって何かあるな。とりあえず聞くか。


「何用意したんだ?」


「そ……それは……」


「秘密よ」

 レベッカが口を開き説明しようとしたが、しかし詩織に発言を遮られた。


 本当に不安だ、念のため心を読んでおくか。


『危なかったわ、用意っていうのがレベッカちゃんにバニー服着せることだってばれたら止められるに決まってるわ』と詩織の心の声が聞こえた。

 このバカ!


「おい詩織、レベッカにバニー服着せることはダンジョンの用意じゃないぞ」


「へ⁉な……そんな訳ないじゃない」

 詩織は滝のように汗をかき、一度言葉に詰まったが必死に隠そうとして言った。


 何という分かりやすい奴なんだ、バカすぎるだろ。


「嘘つくな、心読んだから分かってんだよ」


「勝手に心読まないでよ!こっちのプライベート守ってよ」

 顔を真っ赤にして憤慨した。


 何でお前が怒るんだバカ。はぁー、これからは詩織のセクハラに気を付けないといけないのか……。


「レベッカもレベッカでちゃんと断らないと」

 和がレベッカの顔を見て注意した。


「うぅ……、お恥ずかしい」

 赤面した顔を両手で隠して照れた。


「もういいダンジョンに向けて今日は休もう」

 呆れて俺はその場を離れ、自室に戻った。


 こいつらと一緒で大丈夫なのだろうか?和はともかく、詩織は問題行動が多いし、レベッカはすぐに騙されている。俺のパーティーにはバカしかいないのか?


 次の日朝早くから俺たちはギルドに向かった。そこには俺達を含むたくさんの冒険者が集まっていた。


「皆様この度はダンジョン探索任務をにご参会いただきありがとうございます。皆様にはダンジョン最深部を目指していただきます。では外の馬車にご乗車ください」

 受付嬢が俺達冒険者を外に誘導した。外にはたくさんの馬車が並んでいた。俺達はいち早く高そうな馬車に乗りこみ占領していたのだが、そこに男性三人のパーティーが乗りこんできた。


「相乗りしてもいいですか?」

 一人の男が俺たちに質問した。


 まじかよ……。折角早く乗り込んで占領したのに、仕方ない旅は道ずれ、世は情け。心優しく対応しよう。


「ダメだ」

 力強く絶対に相乗りする気は無いことが伝わるように言った。


 情けのある人間なら道ずれに何てしない、つまりこいつらは情けの無い極悪非道の人間だ。


「ありがとうございます」

 と、三人組が無理やり馬車に乗り込んできた。


 話通じないのかよ!面倒くさい。


「俺はセノ十七歳だ」

「僕はイシダ十七歳」

「俺はこのヘルファイヤーオブダークネスのリーダーのクガだ。歳は千を越えてから数えていない。」

 クガは片手で片目を隠し中二病っぽいポーズを取った。 


 セノ?イシダ?クガ?どれも日本人の苗字と同じじゃないかもしかして……。


「その名前もしかして転生者?」

 僅かな可能性に胸を躍らせて身を乗り出して質問した。


「なんだそれ?」

 セノは首をかしげた。


「なんだ違うのか名前が日本人っぽいと思ったんだけどな」


「ククク俺は転生者だ」

 ニヤリと意味深な笑みを浮かべ、クガは答えた。


「なに⁉」

 俺、和、詩織は身を乗り出して驚いた。


 転生して初めて見る自分以外の転生者に安心感が沸いてきた。


「この俺は大悪魔の生まれ変わりだ」


「中二病かよ!」

 俺は思わず突っ込んでしまった。


 もしかしてと期待したが違った。ただのバカな中二病だった。


「ところでクガさん右手の包帯はどうしたんですか?」

 レベッカはなぜかクガの心配をした。


 どうせ力の封印だの中二病話されて面倒くさそうだな。


「これはさっき躓いたんだよ」


「中二病あるあるじゃないのかよ」

 またしても突っ込んでしまった。


「じゃあその首輪みたいなのは?」

 またしてもレベッカが質問した。


 何故こんなにもレベッカは質問するんだ?どうせ、今度こそ中二病のファッションで作り話聞かされるだけだぞ。


「これは幸運値上昇のマジックアイテムだ」


「また違うのかよ」

 クッ、またどうでもいいことに突っ込んでしまった。


「ではその眼帯はどうしたのですか?」

 またレベッカが質問した。


 どうせ今度も中二病関係ないんだろう。もういいよ、面倒くさい。


「クククこれは俺の邪眼に悪魔を封じているだけだ」


「それも普通の道具にしとけよ!」

 俺はまたしても突っ込んでしまった。


「そうだ魔王ってどこにいるんだ?」

 俺はクガに質問した。


 いくらバカでも冒険者なら何か知っているだろ。


「魔王ってwwwお前面白すぎるだろwww子供かよwww」


「中二病にガキ扱いされた⁉」

 俺は衝撃と怒りを覚えた。


 この野郎……、必ず、必ず俺を馬鹿にしたことを後悔させてやる。


「着きましたよ」

 馬車を運転していた御者がこちらを向き伝えてくれた。俺達は御者の言葉で全員馬車から降りた。既に他の冒険者たちはダンジョン入り口にて集まっていた。


「それでは皆さん好きなタイミングでダンジョンに入ってください」

 受付嬢の言葉と共に多くの冒険者たちが一斉にダンジョンに入って行った。しかし俺達だけはその場に留まった。


「あのー、行かなくていいのですか?」

 他の冒険者がダンジョンに入っていくのを横目にそわそわしているレベッカは俺に尋ねた。


「まだいいかな」


「何故ですか?」


「先に行った人達に魔物を倒してもらえば安全にダンジョンを攻略できるから」


「なるほど」


「とはいえお宝を全部取られたら意味ないわよ」


「だからタイミングが大事だ、そこで俺が覚えた新スキルマップ。このスキルは地形、人の位置、魔物含む動物の位置、宝箱の位置が分かるんだ」


「おぉ屑でかした」

 和が嬉々として俺の肩を叩いた。


「たまには役に立つじゃない」

 たまにはってなんだと偉そうだなダンジョンの中に置き去りにしようかな。


 そして一時間が経過した。


「そろそろ行くぞ、魔物はほとんどいなくなってる」


「お宝は残ってるわよね?」


「宝箱は殆ど減ってない。お宝は一か所に集まっているからそれを見つけたら大金持ちだ。よし行くぞ、お前ら」


 俺達はやる気十分でダンジョン内に足を進めた。

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