第4話 質問コーナー

「次は何の質問にしますか?」

「ちょっと待ってください。えーっと。」


「お待たせしましたー!」


考えている間に店員さんが来てしまった。

テーブルに置かれた夕食はとっても美味しそうだ。


「残念。質問コーナーはここまでですね。」


ニッコリ笑う冨貴さん。


「食べましょうか。」

「…はい。」


それから二人で夕飯を食べた。

味はとっても美味しい。会社からもそんなに遠くない場所なので、これからたまにはここで夕飯も悪くないなんて考えながら、あっという間に平らげてしまった。


「桃子さん食べるの早いですね。」

「すみません。仕事がいつも忙しくて、ご飯早く食べちゃわないと間に合わないことも多々ありまして…はしたないですよね。」

「いえいえ、そんなことは。私割とのんびり食べてしまうので、すごいなーと思ってただけですよ。」


ニコニコしている冨貴さんのお皿はまだパスタが半分くらい残っている。

どれだけ早食いなんだ私。


「もう少し待ってくださいね。」

「あ、いえ、急がないでゆっくり食べてください。」


私はペコリと頭を下げた。

冨貴さんは苦笑しつつ、ある提案をした。


「じゃあ、私が食べ終わるまで桃子さんのお話を聞かせてください。」

「私の話!?」

「趣味とかお仕事とか、好きな食べ物とか。では、どうぞ!」


冨貴さんはパチパチと音を立てずに手で拍手をする動作をする。

これは答えるべきなのか?でも、相手がご飯食べてる間私も暇だし…。


「えっと、仕事はパタンナーです。デザイナーさんの用意した洋服のデザインを形にするお仕事です。結構納期が近いことが多いので、今日もこうやって休日出勤でバタバタしてました。」


「パタンナーさんなんですか?!つまりミシンとか得意なんですか?」

「毎日使っているのでそれなりには。」

「わー!すごい!色々知り合いはいますけど、パタンナーは初めてです。」

「そんなにすごいものではないですよ。」

「じゃあ、趣味はなんですか?」

「趣味は…洋裁とかですかね。」

「趣味と仕事が一緒のタイプですか?私と一緒ですね。」

「そうなんですか。」

「はい。私はジャグリングが趣味でもあり、お仕事でもありますから。桃子さんとは仲良くなれそうです。」


いつの間にかフォークを置いて拍手する冨貴さん。

なんだか照れ臭い。


「冨貴さん、手が止まってますよ。」

「おっといけない。桃子さんの話を聞きたいあまり、普段よりもさらにゆっくりご飯を食べてしまうところでした!」


慌ててフォークを持ち直す冨貴さん。


「すぐに食べますね。」


それから他愛のない話をしながら、食後の飲み物も飲んで、あっという間にどっぷりと夜になってしまっていた。



「すみません。いっぱいお話してたら楽しくて遅くなってしまいましたね。」

「いえいえ。私こそ冨貴さん電車の時間とか大丈夫ですか?」

「私この近くに住んでるので。桃子さんこそ電車の時間は大丈夫ですか?」

「はい、まだこの時間は電車がありますので。」

「では駅の改札まで送りますよ。」

「大丈夫ですよ。大通り沿いで明るいですし、冨貴さんの方が女性の一人歩きは危険ですよ!」


あははっと笑う冨貴さん。


「それは桃子さんも一緒ですよ。桃子さん可愛らしいから心配なんですよ。私はいざとなったらこの重い鞄が護身道具になりますから!ほら、中にボールも入ってるし、いざとなったら投げます!私ボールコントロールが良いですから百発百中ですよ!」


「わっ私だって鞄にソーイング道具入ってますから!いざとなったら針投げます!」


「いやー針は流石に吹き矢とかじゃないと相手まで飛ばないと思いますよ。」


お互いに譲らない。

最終的に私の方が根負けをして駅の改札まで送ってもらうことになってしまった。


「そうだ。桃子さん。これも何かの縁なので、連絡先を伺ってもいいですか?」

「はい。」


私は冨貴さんと連絡先を交換した。


「よし、桃子さん。これからも仲良くしてくださいね。またご飯行きましょう!」

「私こそよろしくお願いします。」

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